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「あらぁ?その子が魔法王様が拾ってきた子?かわいー!」
女性らしい高い声が食堂に響く。
声のする方を見ると箒を手に持ちオレンジ色の巻き毛と長いスカートを揺らしてこちらへ近づいてくる、服装からしておそらくゼラと同じ魔法王の使用人だろう 。
「拾ってきたとは言い方がよろしくないですよ、ナスタ」
「もーゼラはすぐあたしにそう文句ばっかり言って」
「私は正しい言葉づかいを「ディル君でしょう?あたしナスタ。よろしくね」
ゼラが言い終わるのを待たずに声を被せ、ディルに握手を求めた。
「あ、うん、よろしく」
差し出された手に応じて握り返す。年は自分より少し上くらいかと感じる幼さを残した顔立ちだ。
横目でこっそりとゼラの様子を伺うと苦虫を噛み潰したような顔をしている。慌ててこの場を取り繕うように口を開いた。
「大丈夫だよっ!俺拾ってきたとか言われても気にしないし!ほんとに拾われたようなもんだし!…まさかほんとに拾われて弟子にしてくれるとは思わなかったけど……」
「ねー、魔法王様が誰かを弟子にするなんて初めての事よ? 」
「確かにディル殿を連れて戻られた時は本当に驚きました。魔法王様が人に興味を持たれるなど」
魔法王に使える二人ですら初めての経験にそれぞれ首をかしげる。
「今までいなかったの?」
「そうですね、元来人前にもあまり出られない御方ですし」
「わかったー!ディル君かわいいから魔法王様も弟子にしたいなぁって思ったのよー!」
「魔法王様に限ってナスタが考えうるようなくだらない理由とは思えませんが」
「なんですってー!ばかゼラー!!」
「ばかと言った方がばかだと知っていますか?」
最初は二人はさぞ険悪なのだろうと思ったがどうやら違うようだ、やり取りを聞いていると案外仲がよいのかもしれない。
自分より大人な筈の二人がまるで子供のような言い争い方をしている、その光景にディルは笑った。
幾日か開け分かった事がある。
まずはこの広い屋敷に使用人はゼラとナスタの二人だけ。なにかと大変じゃないかと聞いたが時間はたくさんあるから問題はないらしい。
魔法王は1日のほとんどをディルと話をした書斎か薬品庫にいるらしく、こちらから伺わない限り姿を見かけなかった。ゼラとナスタとはそれぞれ役割に追われていても食事の時には顔を合わせるが魔法王は食べないと聞いていた為、当然食事を共にする事もない。
ゼラ曰く少し出掛けると言って10日程空ける時もたまにあるという。
修行をつけてくれるにはまだ体力が足りないらしく、言葉を交わすのは朝と眠る前にディルが書斎まで行ってする挨拶くらいだった。
それとずっと気になっている事がひとつ。
「師匠ってさ、男?女?」
髪が長いせいか、背が高いせいか、どちらにも見える。
「えー?どっちでもいいじゃないそんな事ー」
綺麗に洗った衣類を干しながら答えたナスタは興味がないようだ 。
「ナスタもわかんないの?」
「あたし考えた事なかったなぁ魔法王様がどっちかなんて。どっちでも魔法王様は素敵な御方よー」
…普通考えた事がないなんてあるだろうか?
「え?魔法王様の性別ですか?…魔法王様には必要ないのでは?」
ゼラなら答えてくれるかと期待していたのに彼もまた似たような事を口にする。
「えぇ~?必要ないってありなの?」
「魔法王様ですから」
いつもの微笑んだ顔で言われても答えになっていない。こうなると最早ひとつしか手段はない。
「…………知ってどうする」
女性らしい高い声が食堂に響く。
声のする方を見ると箒を手に持ちオレンジ色の巻き毛と長いスカートを揺らしてこちらへ近づいてくる、服装からしておそらくゼラと同じ魔法王の使用人だろう 。
「拾ってきたとは言い方がよろしくないですよ、ナスタ」
「もーゼラはすぐあたしにそう文句ばっかり言って」
「私は正しい言葉づかいを「ディル君でしょう?あたしナスタ。よろしくね」
ゼラが言い終わるのを待たずに声を被せ、ディルに握手を求めた。
「あ、うん、よろしく」
差し出された手に応じて握り返す。年は自分より少し上くらいかと感じる幼さを残した顔立ちだ。
横目でこっそりとゼラの様子を伺うと苦虫を噛み潰したような顔をしている。慌ててこの場を取り繕うように口を開いた。
「大丈夫だよっ!俺拾ってきたとか言われても気にしないし!ほんとに拾われたようなもんだし!…まさかほんとに拾われて弟子にしてくれるとは思わなかったけど……」
「ねー、魔法王様が誰かを弟子にするなんて初めての事よ? 」
「確かにディル殿を連れて戻られた時は本当に驚きました。魔法王様が人に興味を持たれるなど」
魔法王に使える二人ですら初めての経験にそれぞれ首をかしげる。
「今までいなかったの?」
「そうですね、元来人前にもあまり出られない御方ですし」
「わかったー!ディル君かわいいから魔法王様も弟子にしたいなぁって思ったのよー!」
「魔法王様に限ってナスタが考えうるようなくだらない理由とは思えませんが」
「なんですってー!ばかゼラー!!」
「ばかと言った方がばかだと知っていますか?」
最初は二人はさぞ険悪なのだろうと思ったがどうやら違うようだ、やり取りを聞いていると案外仲がよいのかもしれない。
自分より大人な筈の二人がまるで子供のような言い争い方をしている、その光景にディルは笑った。
幾日か開け分かった事がある。
まずはこの広い屋敷に使用人はゼラとナスタの二人だけ。なにかと大変じゃないかと聞いたが時間はたくさんあるから問題はないらしい。
魔法王は1日のほとんどをディルと話をした書斎か薬品庫にいるらしく、こちらから伺わない限り姿を見かけなかった。ゼラとナスタとはそれぞれ役割に追われていても食事の時には顔を合わせるが魔法王は食べないと聞いていた為、当然食事を共にする事もない。
ゼラ曰く少し出掛けると言って10日程空ける時もたまにあるという。
修行をつけてくれるにはまだ体力が足りないらしく、言葉を交わすのは朝と眠る前にディルが書斎まで行ってする挨拶くらいだった。
それとずっと気になっている事がひとつ。
「師匠ってさ、男?女?」
髪が長いせいか、背が高いせいか、どちらにも見える。
「えー?どっちでもいいじゃないそんな事ー」
綺麗に洗った衣類を干しながら答えたナスタは興味がないようだ 。
「ナスタもわかんないの?」
「あたし考えた事なかったなぁ魔法王様がどっちかなんて。どっちでも魔法王様は素敵な御方よー」
…普通考えた事がないなんてあるだろうか?
「え?魔法王様の性別ですか?…魔法王様には必要ないのでは?」
ゼラなら答えてくれるかと期待していたのに彼もまた似たような事を口にする。
「えぇ~?必要ないってありなの?」
「魔法王様ですから」
いつもの微笑んだ顔で言われても答えになっていない。こうなると最早ひとつしか手段はない。
「…………知ってどうする」
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