Black Rose

むらさきおいも

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不思議な客

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「そろそろ…良いかな?」


さっきの客が帰り、片付けもままならないうちに次の客が入ってきた。

そんな事は日常的で、プライバシーも準備も何もあったもんじゃない。

相手だって綺麗なモノを求めているわけじゃない。
ただすぐにでも欲求を満たしたいだけの獣ばかりだ。

だけど―――


「あの、大丈夫…?」

「…っ、また来たの?大丈夫なんかじゃねぇよ。見てわかんだろ?それに俺はもう死にたいの。手伝ってくんない?」

「ダメだよ、そんな!君は絶対ここから出れるから。そんな事言わないでよ…っ」


この人は俺がここにぶち込まれてからというもの、度々ここにやってくるが、所謂ここの客とは全く違う人種だ。

と言うのも毎回、触りもしなければ本当に何もしないで帰っていく。
この人は何で何もしないのに金払ってまでここに来るのか…

彼の考えは全く分からないけど、毎度乱暴に扱われる間のほんの少しの合間だけ、安らぎを与えてくれる貴重なお客さんである事には違いない。

最近では世間話までするようになって俺の事を気にかけてくれてはいるが、正直そんな事してもらっても俺の気持ちが晴れることは無い。


「だとしても…もういいの。あいつが居ない世界なんて…生きててもしょうがない…」

「あいつ…?恋人でもいたの?」

「恋人?…あぁ、俺にとってあいつは友達でも恋人でもない。俺の半身…みたいなもん…」

「へぇ…」

「なぁ、タバコ吸ってもいい?」

「あ、うん。どうぞ」


ベットのサイドボードからライターを取り出すと、唯一与えられているタバコを口に咥え、火をつけた。

すると、彼は俺が取り出したライターをじっと見つめながらボソッと呟いた。


「あ…ねぇ、このライター」

「ん?この店、知ってるの?」

「あぁ、うん。ちょっとね…」

「へぇ…」


真面目そうなこの男にしてみたら、だいぶ似つかわしくないあの地下のBARのライター。

まぁ、この店に来るくらいだから何かしらのツテがあるのだろうか…

よく分からない不思議な男だし、敵か味方か分からないけれど…
一か八か、俺はこの男に掛けてみることにした。


「なぁ、お願いがあるんだけど…」

「ん?なに?」

「探して欲しい人がいる」


どうにか…
どうにかして光に繋がる情報が欲しい。

頼むから…生きていて欲しい―――
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