十六夜の月

むらさきおいも

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関西弁の変なやつ

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「何や、まぁた大輝は先生の世話妬いてるん?先生は敦史あつしさんのやろ?手ぇ出したら怒られんで?」


手ぇ出すって…?どういう…

そういや龍士の所に行くことが決まった時も、あっくんが龍士に俺に手ぇ出すなって…

でも普通に考えれば手を出すなと言うのは、男女のそれに値する言葉であって、男同士である俺らではどうもしっくり来ない。


「あ、もしかして君がりゅうくんとこにおる子?」

「あ…はい」


俺を知ってる事にはもう慣れた。

にしても、上から下までじっくりと観察され、今回はあまり歓迎されているようには思えなくて、視線が凄く痛い。

しかも龍くんて…


「へぇ…思ってたより普通やん。君、龍くんの事好きなん?」

「えっ?好き…って…」


や、急に好きって…何?

いきなりそんな事聞かれても、まだ一緒に住み始めたばっかだし。
でもまぁ正直、人として兄貴のような存在としては好きだけど。

その独占欲に満ちた敵意むき出しの表情に、恐らくそういう意味では無いのかも…と咄嗟に悟る。

にしてもこの人達…
一体、何なんだ!?

ここの人達みんな、そっち系の人達なの!?


「ははぁん。免疫無しかいな。ほんなら龍くんの事、色々知ったらドン引きするやろなぁ?この際、全部教えてやろか?」

かなで、やめとけ」

「そうだよ、良くないよ?そういうの…」


優しそうだった工藤くどうさんの表情が険しくなり、真壁まかべさんも心配そうに応戦する。


「なんや2人して、俺を悪者扱いしよって。まぁ、せいぜい掘られんように気いつけやぁ」

「奏っ!!」


ふんと鼻で笑いながら俺を睨みつけ、その人は直ぐに出て行ってしまった。

ほ、掘られるとは…
いくらなんでも、俺だってわからなく無い。

彼が言う掘られるは、刺青とか何かのそういう彫られるではきっとない。


「斗亜くん、奏の言ってる事は気にしなくていいからな」

「うんうん、気にしなくていいからねっ…」


気にするな、と言われても無理な話…

だけど一先ずこの事は置いといたとして、あの人は一体何者なんだろう。

ここの人にしちゃ痩せっぽっちだし、柄は悪いけど決して強そうには見えなかった。

 
「あの…あの人は…?」

「あぁ、本条奏ほんじょうかなで…みんなは奏って呼んでる」

「この組の…?」

「いや、アイツはAV男優」

「えぇっ!?じゃあ女とヤリ放題…っ!?」


俺と工藤さんとのやり取りを黙って見ていた真壁さんが、急にクスッと笑いだした。


「ふふっ、違う違う。彼は男専門の男優さんだよ」


男…っ!?じゃあやっぱり掘られるっとそういう事か!
妙に納得してしまった俺は、早くもここの空気に染ってきてしまったらしい。

それに真壁のそんな爽やかに普通の事だよ?みたいな言い方…

俺、真壁さんは普通の人だと思ってたけど、やっぱりこの人もちょっとヤバい人なんだなって改めて思った。

てことは…じゃあ…
やっぱり龍士もそうって事!?

 
「真壁先生。斗亜くん混乱してるよ?」

「あぁ、ごめんっ…」

「あ、あの…っ、掘られるって…」

「冗談だよっ冗談!ほら、気にしないで?ゴホッ…斗亜はもう終わったから、俺の風邪移ったら困るし早く帰りな?」


追い出されるように部屋を出ると、さっきまでの話に頭を抱える。

だけどそんな事より何よりそもそも俺、龍士の事…全然知らない。

そりゃ出会って数日なんだから当たり前なんだけど、それが何だか悔しくて、どんな事でもいいから龍士の事もっとちゃんと知りたい…そう思った。
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