十六夜の月

むらさきおいも

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意地悪(奏)

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「ねぇ、大丈夫なの?斗亜とあくん…」


大輝たいきが心配そうに斗亜くんの後ろ姿を見送る。


「別に大丈夫やろ。本部戻るんやろ?乗ってく?」


そんな大輝の態度に少し苛立ちながらも、助手席をポンポンと叩き車に入るように促すと、大輝は素直に車に乗り込んできた。

まぁ、斗亜くんじゃ本人に聞けんやろな。
このまま離れてくれたらそれでええわ…

万が一本人に聞いたとして余計な事言うなって俺が責められたとしても、その時は俺がりゅうくんの怒りを全部受け入れるわ。
好きなようにしたらええ…

龍くんに殺されるなら本望やわ。
もうええねん、俺なんか…

もう何か全てがどうでも良くて、自ずと運転も荒くなる。
まぁどうでもいいなんて、今に始まった事でもないけどな。


かなで…何か最近変だぞ?」

「ふはっ、買い被りすぎやで?大輝。俺が変なのは最近やない、ずっとや。わかってるやろ?俺はな…っ」

「ダメだよ…奏。自分をそんな風に諦めんなよ」


大輝には分からんよな…

人に騙され傷付けられて、いいように使われるだけ使われて飽きたら捨てられてまた拾われて、飽きるまでまた使われるの繰り返しや。

俺の人生に、救いなんてないねん。


「そんなん要らんねん。俺みたいなんは綺麗事だけじゃ生きていかれへんのや」

「そんな事ないよ、奏だって…」

「ほんなら大輝?俺の事、抱けるか?」


あぁ、言ってしもうた。
無理だってわかってたし、この後の関係にだって影響してくるかもわからんのに…

案の定大輝は、戸惑って何も答えられずにいる。
これ以上追い詰めたら可哀想やし、俺も答えが欲しい訳やない。


「な?無理やろ?大体、大輝は人が良過ぎるんよ。大輝みたいに、綺麗な人間はここにはおらんで?」

「…っ、そんな事ない!俺だって…俺だって人に褒められるようなことは何も…それにここにいるみんないい人達ばかりだろ?もっと心開いてもいいんじゃないか?」

「ずるいわ…大輝も龍くんも。俺は誰の一番にもなれへんのに…それに大輝はなぁんも知らんからそんなこと言えるんよ」

「何も…って…?」


大輝はなんでここに来たんやったかな。

龍くんと同じところで働いてるとはいえ、大輝はただの従業員。
やっぱ、ここに居る他の連中や俺とは全く生きる世界が違うんや。

何も知らんと仲良しごっこしてる大輝に、少しはこの世界の恐ろしさを分からせてやろうと、俺は大輝に少しばかり意地悪をした。


「あんな、敦史あつしさんはただの親切なお兄さんやないんやで?龍くんは人殺しやし…先生だって…」

「えっ、どういうこと?龍士りゅうじさんが…真壁まかべ先生も…!?」

「ほんまなんも知らんのな。知らんのやったら教えたるわ。あの人な、昔医療ミスで人殺してんねんで?」

「医療…ミス…まさか…っ」

「あの大きい病院や。知ってるやろ?当時騒がれたもんな?」
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