十六夜の月

むらさきおいも

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大罪(真壁)

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頼まれてた資料を持って敦史あつしさんの部屋を訪れると、中から話し声が聞こえてきて、その内容に俺は耳を疑った…


「医療…ミス...」


そのワードを聞いた途端震えが止まらなくなって、持っていた資料を床にばらまいたままその場に立ちつくした。

敦史さんが扉を開けるまで、本の数秒の出来事だったのかもしれない。

だけど俺にはすごく長い間に感じて、走馬灯のようにあの日の出来事が頭の中を巡っていた。

あの時、あの女の人に付いていた人が大輝たいきだったなんて…

あの時の事は鮮明に覚えてる。

だけど周りなんか全然見れなかったから、失礼にも程があるけど患者さん以外の事は殆ど記憶になかったんだ。

大輝があの時の真相を知りたいと言うのなら、辛くても苦しくても話さなきゃいけないと思った。

言い訳をしたい訳じゃない。
だけど本当の事を知って欲しい。

俺は覚悟を決めて、出ていこうとする大輝の手を掴んで引き止め、敦史さんに促され部屋の中へと入り、あの日あった事を話し始めた。

あの日、多重事故が起きて沢山の患者さんが運び込まれてきて院内はパニックだった。

研修医の俺は何をどうしていいかもわからず、先輩医師の指示の通り動いていたが、軽傷と分類されたある女の人の様子がおかしことに気がついた。

その事を他の医師に伝えたが手が回らないと言われ放置され、自分ができる限りの事は尽くしたが、それ以上俺はなすすべもなく彼女が弱っていくのをただ見てるしか出来なかったんだ。

何度も他のベテラン医師に掛け合ったが取り合って貰えず、結局彼女は亡くなってしまった。


「ごめんなさい…っ、助けて…あげられなかった…っ」

「真壁先生は悪くないっ…精一杯頑張ってくれたんだよね?」

「でもっ…俺がもっと…っ、俺が…っ、助けてあげられたはずだったのに…っ」


助かった人もいた中で失われた命もあった。

そう、俺がもっと早くに処置していれば…
俺にもっと技術と経験があれば…

少なくとも俺にもっと信用と信頼、きちんと状況を伝える能力があったなら…っ

何度も何度も後悔して、悔やんでも悔やみきれなかった。

そして後に、彼女の死の要因は研修医の判断ミスとして片付けられてしまったのだ。

俺は何度も彼女を優先して欲しいと訴えたのに…

だけどそれは俺の力不足が起こした結果。
俺のミスと言われても仕方ないと、全てを飲み込んだんだ。

それにもう俺に人を救う資格なんてないし、怖くて患者さんを診る事なんて出来なくて、一緒に働く人の事も信用できなくなって俺は自暴自棄になりそのまま病院を辞めた。

もうどうでも良かったんだ…

今更良い人になんかなるつもりなんか無い。
大輝がこの話を聞いて俺を恨んだとしても俺はそれで構わない。

敦史さんのおかげで人として生かして貰ってはいるけど、何度も終わらせようと思った人生だ…
いつ終わったとしても惜しくはない。

許してもらおうなんて思ってないから、いっその事殺してくれてもいいんだよ?

大輝―――
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