十六夜の月

むらさきおいも

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お仕置(敦史)

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龍士りゅうじが帰って来てないと斗亜とあからの連絡を受けて、俺も若干の違和感を覚えた。

と言うのも、龍士がどっかほっつき歩くにしても訳あって行動範囲はそう広くはないだろうし、仕事終わりに真っ先に会いたいのは斗亜なんじゃないかと思っていたから…

そんな斗亜を放っておいて、何用で何も言わずに帰らないのか…
この前の件もあって少し心配ではあるが…まずはこっちが先か。


「まぁ座れよ」

「…はい」


今にも泣きそうな顔で俺の前に正座しているのは本条奏ほんじょうかなで

今回、龍士の昔の事やら圭吾けいごの病院の件で、わりと目に余る行動が見受けられた為、俺は奏を一人ここに呼び寄せた。


「何で呼び出されたかわかる?」

「わからん…っ」

「じゃあ俺から聞くね。斗亜に何であんなこと言ったの?龍士が妹の彼氏殺したとかさ、そんな噂話…」

「噂やないっ!ほんまやもんっ…敦史あつしさんが知らんだけや…っ」

「俺が龍士の事、何にも知らないとでも思ってるの?」

「お、思ってない…けど…っ、でもほんまやもん…」

「じゃあ本当だったとして、本当だからってそんな話、誰にでも話していいわけじゃないだろ?まして斗亜はまだ子供だぞ?聞かされた身にもなれよ」


ちょっと言葉キツイかな…と思いつつも、アフターケアはちゃんと用意してあるし、俺は俺の役割を果たさなければと威厳を保つ。


「せやかて…っ、悔しかったんやもん…っ、俺のやったのに…っ、俺の龍くんやったのに…っ」


奏と龍士がずっと依存し合ってたのは何となく知っている。

奏にとって龍士は同士みたいなもの。
似たものを感じる龍士だけには心を開いていたからこそ、龍士の興味が自分ではなく斗亜に向いてく事に嫉妬したんだろう。

そうなると圭吾の件は、大輝たいきへの嫉妬か…


「圭…真壁の事は?どっから聞いたのか知らないけど、わざわざ大輝に話さなくても良かったんじゃない?」

「…だって、ずるいやん…っ、みんないい人のフリして…っ。何も知らんと可愛がられて…っ、そんなんやないって、そんないい人ちゃうって、暴いたろうと思っただけやっ...」


本気でそんな事思ってるやつだったら、そんな風にボロボロ泣かないだろう?

奏…お前は何をそんなに抱えてるんだ?

ここに来る前の事を少しは聞いているけど、やっぱり奏にも心に大きな傷があるんだろう…

俺は奏の目の前にしゃがみこみ、奏の頭をポンポンと撫でて目を合わせた。


「本当にそう思ったの?」

「おぅっ…そうや…っ?もう俺の事、信じられへんやろ?こっから追い出すなり、殺すなり何でもしたらええ…っ」

「殺す!?ははっ、そんな物騒な事しないよ?」

「なっ、なんで笑うんっ!?」


確かに、笑うのは良くなかったかな?

けど殺すなんて、そんなことするわけないだろ。

よくよく見れば、泣きがら奏の手は小刻みに震えてて、もしかしたら俺に呼び出された時から殺される覚悟だったのかもしれないな。

俺は怯えながら震える奏の手を取っ、てギュッと握りしめた。


「殺されると思ってたの?」

「…っ、もし…そうなっても…別にええって思っとった。俺なんかおらんくなっても…誰も悲しまんやろ…っ」

「そんな事ない。大輝は奏を守りたいって言ってたぞ?」

「へっ!?...んなわけっ」

「あるかないかは自分で確かめな?」

「せやかて俺っ、大輝の事も…きっと傷つけた…っ」

「謝ったらいいじゃん」

「謝って済む問題やないっ…」

「そこまで分かってた、ならなんでそんな事した?」

「…っ、だって…だって寂しかったんやもん…っ。寂しくて寂しくて死んでしまいそうやった…誰も俺の隣におらんから…構って欲しかってん…っ」

「そっか、寂しかったか…」

「うん…っ」


この感じだと、龍士は奏のところには行ってないな…
じゃあ龍士は今どこにいる…!?

頭の中で別の事を考えながらも、奏の寂しさを少しでも軽減出来たらとギュッと抱きしめてやれば、子供みたいにわんわん泣き出す奏。

どうやらウチには、手のかかる子が多いみたいだ。

暫く泣いた後、奏は鼻をすすり目を擦りながら俺の服を掴みつんつんと引っ張った。


「なぁ…敦史さんは許してくれるん…?」

「うーん。そうだなぁ…」


初めから許さないなんて思っちゃいないけど、捨てられた子犬のようなうるうるの目に見つめられたらこれ以上怒ることなんてできなくて、俺は自分の甘さにため息が出る。

だから、神原かんばら組の若頭は甘いって言われるんだろうなぁ。


「ちゃんとみんなに謝って。そしたら許す」

「ここにいてもええの…?」

「あぁ、いいよ」

「ほんま…?う…っ、ぐ…敦史さぁん…っ」


ここから出たって奏の行く場所なんてない。
そんなやつを簡単に見捨てたりできないだろ?
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