十六夜の月

むらさきおいも

文字の大きさ
78 / 136

失意の中の癒し

しおりを挟む
路駐した車の中で拳で足を殴り付けながら、必死に気持ちを落ち着けた。

すると携帯が鳴り、ディスプレイには颯太そうたの文字…


「もしもし…」

(あっ、みっくん?斗亜とあ知らない?全然電話出てくれなくてさ…)

「…あぁ、あいつ今体調悪いみたいだからさ。そっとしといてやって?」

(えっ、そうなの?そっか…わかった!ありがとう!じゃ…)

「あっ、待って…」

(ん?なぁに?)

「今から…会えないか…?」

(え…今から?)

「あ、いや…もう遅いし…無理だよなっ…ごめん」

(どうしたの?元気ないの?)

「いや…大丈夫…」

(みっくん!?…行くっ!行くよっ!今どこにいるの!?)

「あ…ここ、お前ん家の…近く…」


俺は知らず知らずのうちに、自分家を通り越して颯太の住む家の近くに車を走らせていたらしい。

会いたい…
今すぐ会って抱きしめて…この気持ちを鎮めたい。


「迎えに行く…」

(わかった…)


そして颯太の家の下に車を止めると、部屋着のままくしゃくしゃの頭の颯太が出てきた。

俺は思わず車から降りて颯太を力いっぱい抱きしめた。


「わっ…/////どっ、どうしたの?…みっくん!?」

「ごめんっ…もう少し…このままで居させて…」

「…うん///わかったよ…」


お風呂上がりなのかふんわり甘い香りがする…
戸惑ってどうしたらいいか分からない手を上げたり下げたりしながら、遠慮がちに俺の服を掴む颯太。

そんな仕草もいつの間にか、愛おしく思えていた。

最初は高校生のガキなんて煩いだけで面倒だと思ってたのに、俺にとって颯太は良い話し相手であり友達であり癒しであり、最早なくてはならない存在になってた。

俺の負の部分を浄化してくれて、純粋で綺麗な瞳で見つめられたら悪い事なんて出来ない。

静かに体を離すと、その大きな黒目が俺を真っ直ぐに捉える。


「ありがとな…もう大丈夫…」

「本当に大丈夫なの?まだ辛そうだよ?」

「うん…辛いよ…けど大丈夫。颯太から元気もらった」

「んふっ、良かった♡」

「じゃあ…もう遅いから…」

「えっ…もう行っちゃうの!?」

「親御さん心配するだろ?」


決して高校生が出歩いていい時間じゃないし、増して相手が俺みたいなやつだと分かれば、もう合わせて貰えなくなってしまうかもしれない。

なのに俺のこんな心配を他所に、颯太は俺の服の裾を引っ張って上目遣いで俺を煽ってくる。


「…ねぇ、じゃあ今度は俺のお願い聞いてくれない?」

「え…っ?あぁ…うん、いいよ」

「キス…して?」


今まで見た事も無いその妖艶な表情に心臓がドクンと脈打ち、湧き上がる衝動が抑えられそうにない。

風にたなびくふわふわの茶髪と、ほんのりピンクのほっぺにお風呂上がりのいい匂い…

このままキスなんてしたら、俺―――
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

【創作BL】溺愛攻め短編集

めめもっち
BL
基本名無し。多くがクール受け。各章独立した世界観です。単発投稿まとめ。

Take On Me 2

マン太
BL
 大和と岳。二人の新たな生活が始まった三月末。新たな出会いもあり、色々ありながらも、賑やかな日々が過ぎていく。  そんな岳の元に、一本の電話が。それは、昔世話になったヤクザの古山からの呼び出しの電話だった。  岳は仕方なく会うことにするが…。 ※絡みの表現は控え目です。 ※「エブリスタ」、「小説家になろう」にも投稿しています。

エリート上司に完全に落とされるまで

琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。 彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。 そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。 社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

うちの鬼上司が僕だけに甘い理由(わけ)

藤吉めぐみ
BL
匠が勤める建築デザイン事務所には、洗練された見た目と完璧な仕事で社員誰もが憧れる一流デザイナーの克彦がいる。しかしとにかく仕事に厳しい姿に、陰で『鬼上司』と呼ばれていた。 そんな克彦が家に帰ると甘く変わることを知っているのは、同棲している恋人の匠だけだった。 けれどこの関係の始まりはお互いに惹かれ合って始めたものではない。 始めは甘やかされることが嬉しかったが、次第に自分の気持ちも克彦の気持ちも分からなくなり、この関係に不安を感じるようになる匠だが――

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

運命の番ってそんなに溺愛するもんなのぉーーー

白井由紀
BL
【BL作品】(20時30分毎日投稿) 金持ち‪社長・溺愛&執着 α‬ × 貧乏・平凡&不細工だと思い込んでいる、美形Ω 幼い頃から運命の番に憧れてきたΩのゆき。自覚はしていないが小柄で美形。 ある日、ゆきは夜の街を歩いていたら、ヤンキーに絡まれてしまう。だが、偶然通りかかった運命の番、怜央が助ける。 発情期中の怜央の優しさと溺愛で恋に落ちてしまうが、自己肯定感の低いゆきには、例え、運命の番でも身分差が大きすぎると離れてしまう 離れたあと、ゆきも怜央もお互いを思う気持ちは止められない……。 すれ違っていく2人は結ばれることができるのか…… 思い込みが激しいΩとΩを自分に依存させたいα‬の溺愛、身分差ストーリー ★ハッピーエンド作品です ※この作品は、BL作品です。苦手な方はそっと回れ右してください🙏 ※これは創作物です、都合がいいように解釈させていただくことがありますのでご了承くださいm(_ _)m ※フィクション作品です ※誤字脱字は見つけ次第訂正しますが、脳内変換、受け流してくれると幸いです

処理中です...