十六夜の月

むらさきおいも

文字の大きさ
91 / 136

続き

しおりを挟む
「真壁さんっ!」

「どうした…っ」

「敦史さんが…」

「敦史…?敦史がどうしたの!?」

「今、親父さんが連れて帰ってきたんだけど…っ、ノブさんだけじゃどうにもなんないから、早くっ!」


何で敦史が?敦史がどうしたって言うの?
親父さんがって?敦史は大輝と一緒じゃなかったの!?

俺はてっきり帰ってきて龍士の所にいるんだと、そう思ってたのに…
敦史に何があったんだよっ…

そんな理由を聞く暇もなくとにかく処置室に急いで行けば、黙々と龍士の治療を続けるノブさんの隣に、敦史が白いシャツを真っ赤に染めて酸素マスクを付けて寝かされてて、奏が傷口を必死に抑えてる…


「はぁ…っ、え…っ、あつ…し…?」

「ぼぉっとしてねぇでさっさとやれ圭吾!!」


ノブさんが普段出さないような大きな声で俺を怒鳴りつける。

分かってる、分かってるよ!!
だけど体が動かないんだ。

なんでこんなことに…っ―――


「せんせ…っ、早くっ…敦史さん助けてっ…」


あぁ、そうだ。
俺がやらなかったら、誰も敦史を助けられない。

それどころか俺がこんなんじゃ、龍士だって助からないかもしれない…

もう嫌なんだ、俺のせいで誰かが苦しむのは。


奏に変わり敦史の傷口を確認すると、幸いそこまで深くはなさそうだし急所も逸れてて出血もある程度止まっている。

大丈夫、俺が敦史を助けるから!


「奏、ありがとう。出血も大したことないから大丈夫」

「先生…っ、絶対助けてな…っ」

「もちろん…」


俺の隣で慌ただしくノブさんが動く。
敦史の治療はさほど時間はかからないだろう…

とは言え、問題は恐らく龍士だ。 
ここに医者は俺とノブさんしかいないから、出来る範囲でみんなにも手伝って貰わないと流石に手が足りない。

そんな中、俺より先にノブさんの指示が飛ぶ。


「充彦っ、お前も手伝え。龍士の血がたんねぇ…」

「…っ、龍士、確かABのRhマイナスだって…聞いたことある」

「は…嘘だろ…?」

「いや、マジ…」

「…だったらっ、斗亜連れてこい」

「は?」

「そんな珍しい血ここにはねぇから、早く斗亜連れてこいっ!」


そう、斗亜は珍しい血液型だからそれもあって、再三注意を払うように言ってあったんだ。

でもだったら…ノブさんも同じってことは無いのか!?


「ノブさんも…そうなんですか?」

「…俺は違う」

「じゃあ母親…」

「…とにかく今はこっちに集中しろ、いいな?」

「はい…っ」


そうだ、今はそんなこと気にしてる場合じゃない。

頭を切り変えて、念の為に調べておいた龍二の血液から斗亜と同じ血液型AB型のRhマイナスという結果が出て、正直こんな珍しいことが本当にあるんだと驚いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

【創作BL】溺愛攻め短編集

めめもっち
BL
基本名無し。多くがクール受け。各章独立した世界観です。単発投稿まとめ。

Take On Me 2

マン太
BL
 大和と岳。二人の新たな生活が始まった三月末。新たな出会いもあり、色々ありながらも、賑やかな日々が過ぎていく。  そんな岳の元に、一本の電話が。それは、昔世話になったヤクザの古山からの呼び出しの電話だった。  岳は仕方なく会うことにするが…。 ※絡みの表現は控え目です。 ※「エブリスタ」、「小説家になろう」にも投稿しています。

エリート上司に完全に落とされるまで

琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。 彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。 そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。 社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

うちの鬼上司が僕だけに甘い理由(わけ)

藤吉めぐみ
BL
匠が勤める建築デザイン事務所には、洗練された見た目と完璧な仕事で社員誰もが憧れる一流デザイナーの克彦がいる。しかしとにかく仕事に厳しい姿に、陰で『鬼上司』と呼ばれていた。 そんな克彦が家に帰ると甘く変わることを知っているのは、同棲している恋人の匠だけだった。 けれどこの関係の始まりはお互いに惹かれ合って始めたものではない。 始めは甘やかされることが嬉しかったが、次第に自分の気持ちも克彦の気持ちも分からなくなり、この関係に不安を感じるようになる匠だが――

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

運命の番ってそんなに溺愛するもんなのぉーーー

白井由紀
BL
【BL作品】(20時30分毎日投稿) 金持ち‪社長・溺愛&執着 α‬ × 貧乏・平凡&不細工だと思い込んでいる、美形Ω 幼い頃から運命の番に憧れてきたΩのゆき。自覚はしていないが小柄で美形。 ある日、ゆきは夜の街を歩いていたら、ヤンキーに絡まれてしまう。だが、偶然通りかかった運命の番、怜央が助ける。 発情期中の怜央の優しさと溺愛で恋に落ちてしまうが、自己肯定感の低いゆきには、例え、運命の番でも身分差が大きすぎると離れてしまう 離れたあと、ゆきも怜央もお互いを思う気持ちは止められない……。 すれ違っていく2人は結ばれることができるのか…… 思い込みが激しいΩとΩを自分に依存させたいα‬の溺愛、身分差ストーリー ★ハッピーエンド作品です ※この作品は、BL作品です。苦手な方はそっと回れ右してください🙏 ※これは創作物です、都合がいいように解釈させていただくことがありますのでご了承くださいm(_ _)m ※フィクション作品です ※誤字脱字は見つけ次第訂正しますが、脳内変換、受け流してくれると幸いです

処理中です...