十六夜の月

むらさきおいも

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斗亜の秘密

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「…平気?」

「うん」


言葉少なめに処理を済ませ、もう1回シャワーでも浴びようとベットから降りようとすると、斗亜とあに腕を掴まれベットに戻された。


龍士りゅうじ…っ、聞いて欲しい話がある」

「ん?何?」

「前の家の…話…」


前の家の話。
そう言えばどんな感じだったのか何となくしか聞いてないし、そもそもなんで家でなんかしたのかハッキリとした事情を本人からは聞いていなかった。

なんで今になってそんな話?とは思ったが、俺は斗亜を引き寄せて黙って話を聞いた。


「いいよ。話して?」

「俺ね、義理の弟を階段から突き飛ばしたんだ」

「えっ?」

「わざとじゃないっ、でもあいつと一緒に暮らしてからずっと殴られたり蹴らりたりしてて、ついに首まで絞められて苦しくて…っ、力づくで振りほどこうとしたらアイツ落ちて…それで血塗れになったアイツを見てさ、ざまぁって思ったの。だけどすぐに母親が来て事の重大さに気が付いて怖くなって…俺、逃げた。それから誰も俺に近づかなくなって、俺が悪者になって家族から疎外されて…だから俺ね、良い子なんかじゃないんだ…っ。俺は…っ」

「辛かったな」

「わざとじゃなかったのに…っ、誰も信じてくれなかった…」

「俺は信じるよ」

「でも心の中では、あんなやつ…居なくなればいいのにって思ってた。だから…もしアイツが死んでたら、俺も…」


俺もそうだった。
わざとじゃないと言えばそうなのかもしれないけど、でも俺は明らかにあんな奴居なくなればいいのにと思ってたから。
それが殺意だと言われたら否定は出来ない。

けど、斗亜は俺とは違う。
怪我はさせたかもしれないけど、犯罪者ではないから。


「うん。けど、斗亜は俺とは違うよ」

「違くないっ、俺だって…」

「気持ちはわかるよ。俺も一緒だった…けど俺とは違う。それに、同じじゃなくていいんだよ?」

「でも、わかって欲しかった…俺の中の黒い感情。俺は別に良い子なんかじゃないって…そんなんじゃないから…っ」

「うん。わかった。良い子だ良い子だって言ってごめんな…誰だって黒い感情の一つや二つあるよな」


斗亜は俺の腕の中で静かに泣いた。
きっとずっと言いたくても言えなかったんだろう。

知られたくないけど知ってもらいたくて、認めてもらって初めて自分を受け入れてもらったような気持ちになる。

それは俺も同じだったから。

綺麗な部分だけじゃない、斗亜の全てを受け入れたい。
改めてそう思ったんだ。


「俺ら違うけどさ、似たもの同士だな?」

「うんっ…龍士だけじゃないから。俺もだからっ…」


そうか…斗亜は優しいから、きっと闇を抱えてるのは俺だけじゃないんだって事を伝えたくて話してくれたんだな。

やっぱりお前は良い子だよ…
そう思ったけどその言葉は心の中に閉まっておいて、俺は斗亜をまたギュッと抱きしめた。
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