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出生の秘密(斗亜)
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一連の騒ぎも落ち着き平和な日々が戻って来た頃、俺は父さんから本部に来るようにと言われていた。
体調の話なのか、はたまた卒業後にどうするのかとかそういう話をするのかと思って俺は何の疑問も持たずに父さんの所へと向かった。
「いらっしゃい、斗亜。夏休みの宿題は終わった?」
「え?俺、高校生だよ?宿題なんかないよ?」
「あ、そうだっけ?高校生って宿題なかったっけ…」
何か良くわからないことを言いながら出迎えてくれたのは、父さんではなく真壁さんだった。
いそいそとお茶を用意したりする真壁さんはいつもと変わらず、仕事熱心な感じだ。
そして部屋の扉がノックされて開くと、何故かそこにはあっくんが立っていた。
「お待たせ。ノブさんが俺もって言うから着いてきたけど…深刻な話?」
入ってくるなりあっくんは俺に問いかける。
いや、聞きたいのはこっちの方なんだけど…
そう思いながら、後からのんびり入ってきた父さんに目を向ける。
「あぁ、実はだな。18になったら話すってお前の母さんに言われてた事があったんだが、もう母さんとは暮らさいないだろうし、今後自立していくの為にも今話しておこうと思ってな」
ソファーに深く腰掛けた父さんは深呼吸をした後、少し間を置いて話し始めた。
「お前の父親は俺じゃないんだ」
「え?」
思いもよらない言葉に俺は固まった。
父さんが、本当の父親じゃない?
生まれた時からいたはずのに!?
「えっと…それじゃ、斗亜は連れ子だったって事ですか?」
あっくんが普通の会話のように父さんに問いかける。
「いや、正確にはあいつの腹ん中にいた頃に、俺と一緒になったから…」
「ノブさんは…それを知ってて結婚したの?」
続いて真壁さんも俺を差し置き、父さんに質問を投げかけた。
俺はまだ空いた口が塞がらない…が、聞かなきゃ。
こうなったら、俺にも聞きたいことが山ほどある。
「あぁ、相手が誰かも何となくわかってたけど、下ろすにはもう無理な時期だったし、俺はお前とお前の母さんを守ろうと思ってたから迷いはなかったよ」
「俺の…父親って誰なの…?」
「それが…あいつもハッキリした事言わなかったから俺もよくわかんねぇんだが、恐らく昔ここに出入りしてた山崎って男だと思ってる」
「山崎…」
「あいつが言うには望んだ妊娠じゃなかったけど子供には罪は無いから生みたいと…ならばと俺は一緒になったんだ。だけど数年前、その山崎ってやつがシャバに出てくるって話があってあいつはお前を連れてここから逃げて行った。相当ヤバい奴だったって話だから、斗亜を守りたかったんだと思う」
ヤバいやつなら何で!?
無理やり…とかだったのか!?
でもそれでも母さんは俺を産んで、俺を連れて逃げてくれた…
その時は俺を守ってくれたんだよね…?
「その、山崎って男は今はどこに!?斗亜はここにいて平気なんですか!?」
俺が母親の思いに浸ってる間に、真壁さんがすかさず話に加わる。
確かに、俺ここにいて大丈夫なのか?
いや、けどそんな奴がいたら、あっくんが野放しになんてしておかないと思うんだけど…
「それが俺にも分からねぇんだ。ただ、最近じゃ聞かなくなったしこの辺にはもういないか、また刑務所に戻ったかしたんじゃねぇかな。敦史、ちょっと調べてみてくれないか?」
「分かりました」
至って普通で冷静なあっくん。
もしかして、俺と父さんの事知ってたんじゃ…
「斗亜、そういう事だから。俺はお前の本当の父親じゃあねぇ。だけどお前の事はずっと息子だと思ってる。あいつがあんなに大事にしていたお前を手放したのは信じられないけど、もうお前も大人になるんだ。自分の人生を歩め」
「なんだよ…それ…いきなりそんな…っ」
「話はそれで終わりだ。後よろしくな、敦史」
「はい」
「待ってよっ、父さ…っ」
俺は思わず言葉を詰まらせた。
今まで普通に父さんと呼んでいた人は父さんじゃない…
これからなんて呼べばいいの!?
何なんだよ、もう!
「父さんでいいよ。血は繋がってないけど俺はお前の父さんだ」
いきなりそんなこと言われて、はいそうですか。とはならない。
父さんは本当の父親じゃなくて、母さんはヤバいやつの子供を産んで育てたけど、いらなくなったから捨てた?
当然だよな…
そんなヤバい奴の息子なんて…いらないよね。
でも、今更そんな事言われても受け止めきれない―――
「あっくんは…っ、知ってたの?俺が父さんの子じゃないって…」
「いや、今日初めて聞いた。しかし、山崎ってどっかで聞いたことあるような…まぁ、親父にでも聞いてみるよ」
何事も無かったかのように部屋を出ていこうとするあっくんに、俺は置いていかれるような感覚を覚えて思わず手を伸ばした。
「ねぇ、待ってよ!俺はどうしたらいいの!?」
「どうもこうも、いつも通りでいいだろ?斗亜は斗亜だろ?」
「そう…だけどっ…」
「ここに来てノブさんお前の父親らしいことなんもしてないしな?一緒に住んでる訳でもないし、何か変わるか?」
「…そう、だけど」
あっくんの言う通りだ。
そもそも父さんと別れてから殆ど会うこともなかったし、ここに来てからと言っても父さんに父親らしいことは何もしてもらってない。
俺も、甘えた事ばっかり言ってちゃダメなんだ。
「今まで通りだよ。ただ、その山崎って男が今どうしてるのかは気になるところだから、調べてみるよ」
「うん…わかった…」
「じゃあ圭吾、斗亜の事よろしくな」
「うん」
そして俺は真壁さんと二人きり、部屋に取り残された。
こんな話になるなんて思っていなかっただろう真壁さんは、ずっと複雑な表情を見せている。
真壁さんだったら…こんな親子の事、どう思うんだろう…
「真壁さん…」
「あ、はい!何!?」
「母さんは俺の事、産みたいって言って産んでくれて、守るために出ていったのに、なんで捨てたんだろうね…」
「う~ん…でもさ、ノブさんは斗亜のこと本当の息子だって思ってくれてるよ?血の繋がりなんて関係ないんだよ!」
やっぱり分かんないよね…
俺にも分からないよ。
人の心ってそんなに変わるものなんだろうか。
それとも俺が世界一、運が悪いだけなのかな?
「ねぇ…俺って結構不幸じゃない?」
「そんな事ないよ!斗亜の周りには斗亜のこと好きって言ってくれる人が沢山いるじゃない!俺もいるし…頼りないかもだけど…」
「うん、そうだよね…きっと俺なんてまだまだ幸せな方だよね…」
だけど、父さんのことはともかく、母さんの事はやっぱり納得出来ない。
俺を連れて出て行ったのに、結局元の巣に戻すなんて…
それだけ俺の事が嫌いになったって事か。
山崎って男がいなければ俺も生まれてこなかったし、母さんはもっと苦しまずに済んだのかな。
諸悪の根源は今、どこにいるんだろう…
体調の話なのか、はたまた卒業後にどうするのかとかそういう話をするのかと思って俺は何の疑問も持たずに父さんの所へと向かった。
「いらっしゃい、斗亜。夏休みの宿題は終わった?」
「え?俺、高校生だよ?宿題なんかないよ?」
「あ、そうだっけ?高校生って宿題なかったっけ…」
何か良くわからないことを言いながら出迎えてくれたのは、父さんではなく真壁さんだった。
いそいそとお茶を用意したりする真壁さんはいつもと変わらず、仕事熱心な感じだ。
そして部屋の扉がノックされて開くと、何故かそこにはあっくんが立っていた。
「お待たせ。ノブさんが俺もって言うから着いてきたけど…深刻な話?」
入ってくるなりあっくんは俺に問いかける。
いや、聞きたいのはこっちの方なんだけど…
そう思いながら、後からのんびり入ってきた父さんに目を向ける。
「あぁ、実はだな。18になったら話すってお前の母さんに言われてた事があったんだが、もう母さんとは暮らさいないだろうし、今後自立していくの為にも今話しておこうと思ってな」
ソファーに深く腰掛けた父さんは深呼吸をした後、少し間を置いて話し始めた。
「お前の父親は俺じゃないんだ」
「え?」
思いもよらない言葉に俺は固まった。
父さんが、本当の父親じゃない?
生まれた時からいたはずのに!?
「えっと…それじゃ、斗亜は連れ子だったって事ですか?」
あっくんが普通の会話のように父さんに問いかける。
「いや、正確にはあいつの腹ん中にいた頃に、俺と一緒になったから…」
「ノブさんは…それを知ってて結婚したの?」
続いて真壁さんも俺を差し置き、父さんに質問を投げかけた。
俺はまだ空いた口が塞がらない…が、聞かなきゃ。
こうなったら、俺にも聞きたいことが山ほどある。
「あぁ、相手が誰かも何となくわかってたけど、下ろすにはもう無理な時期だったし、俺はお前とお前の母さんを守ろうと思ってたから迷いはなかったよ」
「俺の…父親って誰なの…?」
「それが…あいつもハッキリした事言わなかったから俺もよくわかんねぇんだが、恐らく昔ここに出入りしてた山崎って男だと思ってる」
「山崎…」
「あいつが言うには望んだ妊娠じゃなかったけど子供には罪は無いから生みたいと…ならばと俺は一緒になったんだ。だけど数年前、その山崎ってやつがシャバに出てくるって話があってあいつはお前を連れてここから逃げて行った。相当ヤバい奴だったって話だから、斗亜を守りたかったんだと思う」
ヤバいやつなら何で!?
無理やり…とかだったのか!?
でもそれでも母さんは俺を産んで、俺を連れて逃げてくれた…
その時は俺を守ってくれたんだよね…?
「その、山崎って男は今はどこに!?斗亜はここにいて平気なんですか!?」
俺が母親の思いに浸ってる間に、真壁さんがすかさず話に加わる。
確かに、俺ここにいて大丈夫なのか?
いや、けどそんな奴がいたら、あっくんが野放しになんてしておかないと思うんだけど…
「それが俺にも分からねぇんだ。ただ、最近じゃ聞かなくなったしこの辺にはもういないか、また刑務所に戻ったかしたんじゃねぇかな。敦史、ちょっと調べてみてくれないか?」
「分かりました」
至って普通で冷静なあっくん。
もしかして、俺と父さんの事知ってたんじゃ…
「斗亜、そういう事だから。俺はお前の本当の父親じゃあねぇ。だけどお前の事はずっと息子だと思ってる。あいつがあんなに大事にしていたお前を手放したのは信じられないけど、もうお前も大人になるんだ。自分の人生を歩め」
「なんだよ…それ…いきなりそんな…っ」
「話はそれで終わりだ。後よろしくな、敦史」
「はい」
「待ってよっ、父さ…っ」
俺は思わず言葉を詰まらせた。
今まで普通に父さんと呼んでいた人は父さんじゃない…
これからなんて呼べばいいの!?
何なんだよ、もう!
「父さんでいいよ。血は繋がってないけど俺はお前の父さんだ」
いきなりそんなこと言われて、はいそうですか。とはならない。
父さんは本当の父親じゃなくて、母さんはヤバいやつの子供を産んで育てたけど、いらなくなったから捨てた?
当然だよな…
そんなヤバい奴の息子なんて…いらないよね。
でも、今更そんな事言われても受け止めきれない―――
「あっくんは…っ、知ってたの?俺が父さんの子じゃないって…」
「いや、今日初めて聞いた。しかし、山崎ってどっかで聞いたことあるような…まぁ、親父にでも聞いてみるよ」
何事も無かったかのように部屋を出ていこうとするあっくんに、俺は置いていかれるような感覚を覚えて思わず手を伸ばした。
「ねぇ、待ってよ!俺はどうしたらいいの!?」
「どうもこうも、いつも通りでいいだろ?斗亜は斗亜だろ?」
「そう…だけどっ…」
「ここに来てノブさんお前の父親らしいことなんもしてないしな?一緒に住んでる訳でもないし、何か変わるか?」
「…そう、だけど」
あっくんの言う通りだ。
そもそも父さんと別れてから殆ど会うこともなかったし、ここに来てからと言っても父さんに父親らしいことは何もしてもらってない。
俺も、甘えた事ばっかり言ってちゃダメなんだ。
「今まで通りだよ。ただ、その山崎って男が今どうしてるのかは気になるところだから、調べてみるよ」
「うん…わかった…」
「じゃあ圭吾、斗亜の事よろしくな」
「うん」
そして俺は真壁さんと二人きり、部屋に取り残された。
こんな話になるなんて思っていなかっただろう真壁さんは、ずっと複雑な表情を見せている。
真壁さんだったら…こんな親子の事、どう思うんだろう…
「真壁さん…」
「あ、はい!何!?」
「母さんは俺の事、産みたいって言って産んでくれて、守るために出ていったのに、なんで捨てたんだろうね…」
「う~ん…でもさ、ノブさんは斗亜のこと本当の息子だって思ってくれてるよ?血の繋がりなんて関係ないんだよ!」
やっぱり分かんないよね…
俺にも分からないよ。
人の心ってそんなに変わるものなんだろうか。
それとも俺が世界一、運が悪いだけなのかな?
「ねぇ…俺って結構不幸じゃない?」
「そんな事ないよ!斗亜の周りには斗亜のこと好きって言ってくれる人が沢山いるじゃない!俺もいるし…頼りないかもだけど…」
「うん、そうだよね…きっと俺なんてまだまだ幸せな方だよね…」
だけど、父さんのことはともかく、母さんの事はやっぱり納得出来ない。
俺を連れて出て行ったのに、結局元の巣に戻すなんて…
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