十六夜の月

むらさきおいも

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相談事

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父さんの話を聞いた帰り道、俺はやっぱりそこそこ不幸だと悟った。

唯一の肉親だと思っていた父親が赤の他人であり、本当に唯一の肉親である母親に捨てられたのだから、俺は事実上一人なのだと。

真琴と家族の話をした時に、せいせいしたという言葉に共感を覚えたが、もし今同じ事を言われたら俺は共感出来るだろうか。

今俺が一番最初に脳裏に浮かぶのは、多分…寂しい…だと思う。

いくら母親が憎くても、さっぱりした気持ちになんてなれないよ。

モヤモヤした気持ちはなかなか晴れないけれど、でも、家に帰れば龍二りゅうじが待ってる。

俺には龍士がいる。
龍士さえいれば―――

龍士は俺にとってもう、親より何より本当になくてはならない存在になっていたんだ。


「ただいま」

「おう、おかえり斗亜とあ。ノブさん何だって?」

「うん。俺の父親じゃないって」

「へ?」

「俺は父さんの子供じゃないんだって」


あまりの出来事に玄関先で動かなくなってしまった龍士をリビングに連れて行き、ソファーに座らせると俺は今日あった出来事を全て龍士に話した。


「じゃあ…斗亜の本当の父親は…?」

「分かんない。どこにいるのか何をしてるのかもわかんないらしい…」

「そっか…」

「でも別に会いたいとも思わないし。孕ませたのに責任も取らずどっか行くようなヤツだよ?ろくな奴じゃないよ」

「ノブさん、良く受け入れたよな」

「母さんの事、好きだったんじゃねぇの?」

「あぁ、なるほど。にしてもカッコイイな…血の繋がりなくても父親だって。いい父さんじゃん、ノブさん」

「うん。どっちみち俺も来年からは自立しないとだし」

「おぉ、頼もしいな!」

「母さんの事は未だに許せないけど、そんな奴の子供なのに産んでくれて育ててくれたまでは感謝する事にした」

「お前本当にいい子だな」

「良い子なんかじゃないっ!」


龍士はニコニコ笑いながら俺の頭を撫でた。


「けどさ、組に出入りしてた奴なんだろ?敦史あつしとか親父さんは知らないのか?」

「18年も前だよ?あっくんは知らないんじゃない?調べてくれるとは言ってたけど…俺はどっちでもいいや」

「そっか」


うん、そうだよ。
俺は龍士さえ居てくれればそんな事どうでもいいんだ。
今更本当の父親がどこで何をしてようが、俺には関係ないし関わって欲しくもない。


「あ、けど何か山崎?ってヤツじゃないかって父さんは言ってた。まぁどうでもいいけどね」


ソファーから立ち上がり冷蔵庫にある飲み物を取り出し、いるかどうかの確認を龍士にしようと振り返ると、龍士は俯いたまま固まっている。


「龍士?飲み物いる?」


俺の問いかけに全く反応がない。
そのうちに龍士の呼吸がおかしくなって、苦しそうにソファーの下に蹲った。


「えっ、龍士!?どうしたの!?ねぇ!龍士っ!!」


龍士の身体を支えて声をかけても龍士からの返事はなく、ただただ呼吸が荒く苦しそうで俺は急いで真壁まかべさんに連絡した。


「真壁さんっ!龍士が苦しそうで、息しずらそうにしててっ、どうしたらいい?!」

「何があったの!?」

「何も…話してたら急に…っ」

「わかった!すぐ行くけど、電話切らないで!」


そう言われて電話を切らずに繋げたまま龍士の様子を伺うけど、苦しそうなのは変わらなくて、俺は何も出来ずにただただ龍士を抱きしめて背中をさすった。


「龍士…っ、大丈夫だよ…真壁さんがすぐ助けてくれるから…」

「斗亜…っ、ごめんな…」


龍士は、苦しそうに息を吐きながらそう言ってから意識を失った。
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