十六夜の月

むらさきおいも

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大輝の過去(大輝)

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俺が帰ってくると、何故か斗亜とあくんが泣いてそんな斗亜くんをかなでが慰めていた。

あまり見ることの無い奏のお兄さん振りに、少しほっこりした事はとりあえず置いておいて、何があったのか?と聞くと、二人は俯いて黙ってしまった。

その内に斗亜くんがポロポロと少しずつ話してくれて、奏からも話が聞けた。

それにしてもこれが事実だとしたら…
龍士りゅうじさんは何を思って斗亜くんから離れていったんだろうか。

俺では答えは出なそうだ。

その内に斗亜くんはウトウトとし始め、俺のベットて眠ってしまった。


「なぁ、どう思う?ほんまに兄弟なんやろか…」

「苗字と特徴が一緒で血液型もとなれば可能性は高いよね…」

「このままじゃ斗亜くん可哀想やろ?俺、龍くんに話聞いてこようかな?」

「辛いのは龍士さんも一緒かもよ?」

「う~ん。せやかてこのままじゃ…」

敦史あつしさん達も動いてるんだろ?今は斗亜くんのフォローだけであまり大事にしない方がいいのかもよ?」

「…せやな」


なんて言ったものの、俺だって何をどうしてあげるのがいいのか分からないってだけ。


「にしても大輝たいきは何でこの組におるん?」

「俺は別に…店が敦史さんの組の傘下なだけで…」

「そうか…特に金に困ってないなら、ホストなんかやめて真面目に働いた方がええで?」

「うん。そうかもね…」

「そんなクソ真面目なのに女騙せてんのか不思議やわ」

「…そう?俺そんな真面目に見える?」

「うん。どっからどう見ても良い人やん…俺らみたいな暗い過去なんてないやろ?」

「人並みにはあるよ。償えないくらい悪いこともした」


そもそも、俺は本気で人を好きになるとかよく分からない。
思いを寄せる事はあっても実らないならそれまででいい。
好きになってくれたから好きになる方が楽だから。

だから、騙してるなんて自覚は無いし、俺は俺の仕事をしてるだけで女の子をたぶらかしてるとも思ってない。
仕事としてやってるだけだ。

だけどやっぱりそろそろ潮時かな…
もし俺のせいで傷つく人がいるのなら、また同じ事を繰り返さないように。


「ふぅん。どんな悪いことしたん?聞かせてよ…」

「前の彼女と付き合ってた時さ、遠距離だったんだよ。だから会えないし、ホストやってたから可愛い子も沢山周りに居たから悪気もなく浮気してた」

「へぇ、やるやん。けどそんな浮気の一つや二つ、誰でもあるやろ。ホストやし」

「うん、別に普通だと思ってた。けど彼女はそんな俺でも依存してたのか、何でも言う事聞いてくれてさ?あの日も浮気の事問い詰められて面倒くさくなって別れ話になったんだけど、別れたくないって言われてこっちに来るって言うから勝手にすれば?と思って連絡とか無視してたんだけど…あの事故が起きたんだ」

「例の…あれか…」

「うん。さすがに事故に巻き込まれたって知った時は動揺した。けど同時に開放された…って思ったんだ。最低だろ?」

「でも、じゃあ何で医療ミスの事気にしてたん?」

「後悔したんだ。あの事故以来、何故か適当に付き合ってた女の子はみんな俺から離れていって、売上も下がって俺には何も無くなったよ。その時初めてやっぱり大事にするべきだったって思って…だからそんな事があったならせめて隠蔽を明らかにして、なんて必死になってたけど、ただ単に俺のせいじゃないって思いたかっただけかもな。」

「全部事故やん。大輝は悪ない…」

「ううん、彼女は俺のせいで死んだんだ。一生かかっても償えないよ…」

「大輝も辛かったんやな…勝手に決めつけてごめんな」

「それは別にいいけど…俺こんなヤツだよ?幻滅した?」

「ううん、全然」

「そ、なら良かった」


そうは言っても奏は、今までと変わらず俺と接してくれるだろうかって、ちょっと不安になる。

ここまで自分の事を人に話したのは初めてだし、勝手な話だがまた自分の周りから人がいなくなるのは正直辛い。

あの頃、店でも孤立した俺を支えてくれたのは龍士さんだった。

何があったかなんて話は特別しなかったけど、それでも龍士さんは俺が店でやっていけるように支えてくれた。

もし今、龍士さんも辛い状況にあるのなら、今度は俺が支えてあげたい。
だけど一体、こんな俺に何ができるだろう…
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