十六夜の月

むらさきおいも

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片羽の龍

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「ただいまぁ」


いつも通りそう呟いてリビングに向かうと、今日は遅くなると連絡したからか既にご飯が用意されていた。

基本的には最近は俺がご飯担当なのだが、過保護龍士りゅうじは俺の方が帰りが遅いとわかると作って待っていてくれるのだ。

本当にそういうとこ…好き…。


「おかえり~。どこ行ってたの?結構時間かかったじゃん」

「うん、ちょっとね」


服を着てれば見えることのないソレを背負って、俺は特に何も報告せずに用意されている夕飯を食べた。

そして夕飯を食べ終わった頃、ちょうど保護シートを剥がし洗ってもいい時間になったので風呂の準備をする。


「先、風呂いい?」

「うん、いいけど…あのさ、お前もしかして充彦みつひこんとこ行った?」

「え…何で?」

「匂い…」

「匂い?何か匂う…?」

「あいつんとこのお香の匂いがプンプンするんだけど?」

「あ…なるほど」


そう言われてみれば、作業部屋はずっといい香りがしてた。
これはもう誤魔化しようがないと、俺は服を脱いで龍士にそれをお披露目することにした。

どうせすぐバレるしね。


「どう?これ」

「…羽?龍じゃなかったの?」


俺は龍士のその反応が少し意外だった。
何かこうもっと、やった事に難色を示すかと思ってたから。


「俺にその龍士は似合わないって、みっくんに言われてさ」

「それで羽にしたの?お揃いが良かったんじゃないの?」


えっ?何!?
それって、龍士はお揃いを期待してたってこと?
龍士…可愛くない!?


「そうなんだけど…背中一面は時間かかるし、みっくんと相談してお揃いではなくなった」

「あぁ、そうなんだ…そっか。まぁそうだよな?これ結構時間かかったもん。その方が良い!さすが充彦だな。斗亜に似合ってるよ」


龍士?何でそんな悲しそうな顔してんの?
あんなに反対してたのに、そんなにお揃いが良かった?

でも、これはそんな単純なただの羽じゃないんだよ?


「とりあえずさ、この保護シート剥がして?片手じゃ上手くできない…」

「あ、うん…」


どっちにしろ剥がすのも難しかったから、龍士に言うしかなかったな…なんて思いながら俺は龍士に話を振った。


「ねえ、龍士の龍さ…羽一つないじゃん。どうして?」

「えっ?羽…あぁ、あれは何かタイミングが合わなくて中々出来なくてさ、もうこれでいいやってなっただけ。それに…不完全の方が俺っぽいだろ?」

「またそうやって自分下げする…」

「斗亜の羽は、斗亜みたいに綺麗だな…これで完成か?」

「ううん。こうしたら完成」


俺は龍士の服を掴むとそれをゆっくり剥ぎ取り、保護シートを剥がした腕を龍士の背中に重ねた。

そう、俺は龍士の背中の龍が忘れた羽を付けるべく、肩から腕にかけて羽を入れたんだ。

そのまま龍士をお風呂に連れて行って鏡越しにそれを見せると、龍士は目をまん丸くさせて驚いていた。


「えっ…これ…」

「これで完成。どう?俺もみっくん天才じゃない?」

「完成…してる…」

「二人で一つ、だなっ!」

「何それ…カッコ良すぎなんだけど…っ」


龍士にしがみつかれた俺は、鏡越しに自分達を見てふと気が付いたことがあった。

出会った頃の身長は俺のが小さくて細かったのに、いつの間にか俺の方が身長も体格もデカくなってたんだ。

確かに、高校卒業する頃には龍士の身長を越してた。
けど、その頃はまだ筋肉なんかなくて細くて力もなかった。

俺はそれが嫌でみっくんが通ってるボクシングジムに俺も通うようになってから、ガッツリ筋肉もついたんだ。

もう守られなくても大丈夫。
自分のことは自分で守るし、俺が龍士を守るから…


「龍士…今日、俺が抱いてもいい?」

「へ…っ?」

「ははっ、うそうそ…冗談。とりあえずこれ、洗わないと…」

「あぁ…そうだな」

「龍士も、一緒に入る?」

「…うん。そうしよっかな…」


そして俺らは、久々に一緒にお風呂に入った。
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