こじらせ男子は一生恋煩い

むらさきおいも

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第一章 出会いと再会

すれ違い

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最近いつにも増して仕事が忙しそうなりつ。

なかなか休みが取れないし、休めても俺もバイトをめいいっぱい入れてる為、一緒に住んでいるにも関わらず顔を会わさない日があることも少なくない。

それにしてもりつは本当に仕事なんだろうか…

そんな不安まで募ってきて、いい加減ちょっと寂しいなと思い始めてきた頃、上の人が連休をくれたとりつから報告を受けた。

ならば連休くらい絶対りつと一緒にいたいと思い、店長にお願いして俺も2日間の連休を貰ったのだ。

俺はこの連休が楽しみで仕方なかった。

なのにりつと言ったらゲームばっかりで、なかなか俺の相手をしてくれない。

まぁずっと忙しかったから仕方ないと色んなことを諦めたけれど、今日こそはと思ってりつの隣にちょこんと座り、ゲームの行方を眺める。

暫く経ってもゲームに夢中なりつは、このままほっといたら何時間経ってもこのままなんじゃないかと思うくらい、俺の事が見えてないみたいで、俺は痺れを切らしりつの袖を掴みつんつんと引っ張った。


「りつ…っ」

「ん?」

「ねぇ…」

「ん、ちょっと待ってて。今いいとこ…」


久々の休みなんだから仕方ないかと一旦は諦め、また暫くゲームを眺める。

だけど俺は大してゲームに興味無いし、せっかく二人でゆっくり出来る最後の日なのに、りつが俺を見てくれない事にいい加減イライラしてきて、俺はまたりつの袖を掴む。


「ねぇ、りつ…っ」

「ん?」

「ゲームいつ終わんの?」

「えっ、あーもうちょい…てかだったら将吾もやろうよ!」

「やんないっ…」

「ん~、じゃあちょっと待っててぇ」

「さっきからずっと待ってるじゃん…っ」

「んな怒んなよぉ…俺もちょっとは遊びたいのぉ!」


ちょっとって言ってもう結構時間経ってるし、このままじゃ俺の休みが終わっちゃうよっ。

俺よりゲームの方がそんなに大事!?

俺ばっかり、りつに触れたくてりつが欲しいの?

もしかして、りつはもうそんなに俺のこと好きじゃないとか…!?

そう言えばりつと最後にシたのって、いつだっけ…?

仕事が忙しくなってからというもの、りつは俺を誘うことが無くなった。

まぁ、そもそもお互いの時間が合う事の方が少なかったからそれは仕方ないと思うけど、昨日は一緒にベットに入ったのにも関わらず眠いからって先に寝ちゃったからら触れ合うことすらしていない。

念入りに準備だってしたのに、眠りについてしまったりつを起こすのは悪いと思って起こさずにいたけど、さすがに休みだって永遠にある訳じゃない。

いつもだったらまぁいっかで済む事も、もういい加減我慢の限界で、りつからリモコンを取り上げた。


「俺明日からバイトだよ!?もう、今日しか休みないのにっ!」

「んーもう、わかったら…っ、俺にもたまには息抜きさせて?」


息抜き…?
息抜きってなんだよ!

俺と居たら息抜きにならないってこと?
だったらわざわざバイト休まなきゃ良かったじゃんっ…

俺はなんのためにここにいるのか分からなくなってきて、りつに黙って外に出た。

二人でいるのに独りぼっちな空間より、本当に独りでいる方がまだマシで、俺は行く宛てもなくブラブラと街まで歩き出した。

今日は寒いけど天気もいいし、絶好のデート日和だったと思う。

りつが疲れてる事も、休みだからって活発に動くタイプじゃない事もわかってる。

俺がもう少しりつに寄り添って、興味がなくたってゲームくらい一緒にやってやれば良かったのかもしれないけど、ゲームの誘惑に負けたんだって思うといたたまれなかった。

はぁ…っと深いため息を吐けば、白くなった吐息が立ち上って空気に溶けて消えていった。


街はいつの間にかイルミネーションに彩られ、世間はクリスマスムードで溢れていた。

毎日仕事に追われて、忙しくてもうすぐクリスマスだなんてことすら頭になかった…

黙って出てきちゃったし、このまま手ぶらで帰るのもなんだから、いつもしてもらってばかりのりつに何かお返しが出来ればと、デパートに入りプレゼントを物色する。

誰かに何かをプレゼントするなんてしたことないし、何を買っていいのやらどんなものが喜ぶのかも分からなくて、フロアをウロウロしていると俺の名前を呼ぶ声に振り返った。


「将吾!?」

「心…?」

「買い物?」

「あ、えっと…」


俺を呼び止めた心の隣には、見たことの無い可愛い女の子がいて、その子は心の腕にピッタリと寄り添っている。

クリスマスも近いし、心だってれっきとした男の子だ、イケメンだしすぐに彼女が出来たっておかしくない。

心の気持ちに答えられなかったのは自分の方なのに、こんな風にモヤモヤする自分が浅ましくて仕方ない。

俺のそんな態度に気がついたのか、心が彼女の方に視線を向けると、その彼女が心と少し距離をとって軽くお辞儀をした。


「始めまして、妹のあいです…」

「あっ…えっと、夏川です…夏川将吾です」

「あっ、将吾くんっていつもおにぃが言ってるイケメンくん?」

「愛…っ////」


妹か…

なんてホッとしてる自分もどうなのかと思うが、それにしても妹にまで俺の話してるのか?

しかもイケメンって、妹にどういう話してんだ?


「…っ、てか将吾一人?」

「うん…」

「ほら愛、もう用事終わったんだし帰れよ」

「えぇ~?今日は一日暇だったんじゃないの?」

「用事が出来た、だからもうおしまい!」

「もぉ…じゃあ将吾くんおにぃをよろしくね!」

「えっ!?あ、はい…」


愛ちゃんは元気に手を振って、俺らを二人デパートに残し帰って行った。

とは言え、今から買うもの買ってさっさと帰らないといけないのに、いきなり二人っきりにさせられて、俺はどうしたらいいか分からなくて心から目をそらす。


「何してたの?一人で。連休なんて珍しいからりつさんと一緒だと思ってたのに」


その言葉に思わず表情を歪ませた俺を心は見逃さなかったようで、返事を返すことの無い俺の顔を覗き込み心配そうに眉をひそめる。


「りつさんと何かあった…?」

「…いや、別に」

「そっか、買い物なら付き合うよ?」

「いいよ…っ、買ったらさっさと帰らないとだし」

「ふぅん。じゃあ買うまで、駄目?」

「ダメじゃないけど…」


駄目じゃないけどりつへのプレゼントなのに、心と一緒に見に行くのは何か気が引ける。


「もしかして、りつさんへのクリスマスプレゼント?」

「えっ?」

「や、さっき愛に彼氏のプレゼント買いたいからって言われて付き合ってたからさ?もしかしたら将吾もそうなのかな?って…」


そうなのかと言われればそうだけど…
そうだよって言うのも何か違う気がして押し黙る。


「あぁ、気ぃ使わないでいいから。でも迷惑だったら俺ももう帰るし…何か、引き止めてごめんね…」


そうやって心は俺のこころの先の先まで読んで揺さぶってくる。

それがわざとなのか天然なのか分からないけど、心といると全部見透かされてるみたいでたまに怖くなる。

そして心の思惑通りなのかは分からないが、俺は心を引き止めた。


「迷惑じゃないっ…」

「ふふっ、じゃあ付き合うよ」


このままブラブラしてても何を買ったらいいのか分からなかったし、ここは心に相談して決めてもいいかもなんて自分の都合のいいように捉える。

プレゼントを選びながらも上手い具合に話を引き出され、俺はさっきまでの事を心に話した。

そして、デパートの中を一回りしてちゃっかり心から勧められたプレゼントを買って、二人でお店を出た。
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