こじらせ男子は一生恋煩い

むらさきおいも

文字の大きさ
77 / 106
第三章 新生活始めました

りつの弱さ

しおりを挟む
心さ、全然冗談に聞こえねぇんだわ。

タクシーから心が降りてきた時、咄嗟に疑ったんだ。
将吾の相手、心なんじゃないかって…

冷静に考えれば心があんな痣付けたり、そもそも日本に居るはずもないのに、あの時の俺にそんな余裕はなくて心の言う通り、道端で会うことなく何も知らないまま部屋でかち合ってたら、間違いなく修羅場と化してたと思う。

タクシーから降りてきた心は、何も知らないふりをしながら挨拶を済ますと、先ずさっき日本に着いたと軽く説明して、正月に実家に帰るまでは健太の家にいるから近いうち将吾も誘って一緒に久々に4人で飲みましょう、なんて他愛もない話で警戒を解いてから本題に入ったんだ。

それも回りくどい言い方は一切せず急に、真剣な顔をして

【りつさん、将吾店長からセクハラされてます】

と…

何でそんなこと心が知ってんだ?
いつ、どこで…って言う疑問ももちろんあったけど、そんな事よりセクハラという言葉でさっきまでわからなかった色んな辻褄が合致して、将吾の抱えてた事、言えなかった事も全部腑に落ちたんだ。

それから俺は心に細かく事情を聞いた。

将吾の弱みを握って脅されてた事、もちろん合意なんてしてないし無理矢理だって事、その話をさっき電話で聞いたって事。

あまりにも苦しそうだったから、今から行こうと俺の家に向かってた事…

俺はそんなこと何一つ知らずに、一人浮かれて勝手にショックを受けて疑って、二人の大事な夜に部屋を飛び出して独りきりで泣かせてたなんて、悔しくて情けなくて仕方かった。

将吾を一瞬でも疑って出ていった俺が悪い。
将吾は何も悪くない…っ。

なのに、俺っ…


「ん…っ」

「あ、気付いた?俺部屋出ますね」

「え?なんで?」

「またパニック起こしたら困るんで」

「お、おぅ…」


心はどこまでいっても賢くて良い奴でかっこよくて、俺はこいつを目の前にするとどんどん自信が無くなっていく。

俺は将吾の為に何ができただろう。
もっとちゃんと将吾の事見てたら、冷静に話を聞けてたら…


「…りつぅ」

「将吾…ごめんな。そのっ、無理やり…」

「りつに…見られたくなかった…あんなっ…気持ち悪いっ…」

「…っ、本当、ごめん…っ!」


将吾の目からまたポロポロと涙がこぼれる…
あんな事しないでちゃんと話だけ聞いてやれてれば、ここまで傷つけずに済んだかもしれないのに。

「俺っ…嫌だって言ったけどっ…脅されて…っ、黙っててやるからさせろってっ…バレたら働けなくなるかもしれないしっ…りつにも迷惑かけたくなかったからっ…ごめ…なさい…っ」 

「分かったからっ…もう喋んなっ…」


喋るななんて、本当はもう聞いてられなかっただけ。
将吾が知らない奴に何されたとか考えるだけでもゾッとするし、そんなことも知らずに毎日何となく過ごしてた自分にも腹が立つし、それに…その店長とか言うやつ…なんなんだよ。

マジでそいつ、吊るし上げてボッコボコにしてやりてぇ…
覚えとけよクソ野郎。


「俺の事っ…嫌いになった…?」

「んなわけねぇだろっ…」

「ほんと?」

「当たり前だろっ」

「…俺…っ、捨てられると思って…っ」

「ばか…っ」

「あっ…」


何かを思い出したようにキョロキョロと辺りを見回した後、携帯を確認して申し訳なさそうに上目遣いで俺を見る将吾。

何となく察しがついて、聞きたくても聞けないであろう話をあえて俺からふった。


「さっきな、ここに来る途中に心に会ったの。そんで心から話聞いて、一緒に帰ってきたんだけどさ…」

「あぁ、そうだったんだ…で、心はっ…あ、いや…」


多分俺に気を使ってるんだろう…
心のことが気になってるわけじゃないとでも言いたげに、言葉を濁し目を泳がせる将吾に少し心がかき乱される。

会ってしまったらまた好きになっちゃったりしないだろうか…
ついさっきまで将吾が俺に話せなかった話を全部聞いて受け止めて、仲介までしてくれた優しいやつ。

俺だったらまた好きになっちゃうかもしんない…
でも今回のことに関しては何もかも心のお陰だし、ずっと放置しとく訳にもいかず重たい腰を上げた。


「ちょっと待ってろ…呼んでくるから」

「えっ、あ…っ」


不安そうな顔で起き上がり俺の服の裾を掴んで離そうとしないから、頭をポンポンと撫でから将吾の手を掴めばそっと服を離してくれて、俺は心を呼びに行った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる

水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。 「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」 過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。 ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。 孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

優しい檻に囚われて ―俺のことを好きすぎる彼らから逃げられません―

無玄々
BL
「俺たちから、逃げられると思う?」 卑屈な少年・織理は、三人の男から同時に告白されてしまう。 一人は必死で熱く重い男、一人は常に包んでくれる優しい先輩、一人は「嫌い」と言いながら離れない奇妙な奴。 選べない織理に押し付けられる彼らの恋情――それは優しくも逃げられない檻のようで。 本作は織理と三人の関係性を描いた短編集です。 愛か、束縛か――その境界線の上で揺れる、執着ハーレムBL。 ※この作品は『記憶を失うほどに【https://www.alphapolis.co.jp/novel/364672311/155993505】』のハーレムパロディです。本編未読でも雰囲気は伝わりますが、キャラクターの背景は本編を読むとさらに楽しめます。 ※本作は織理受けのハーレム形式です。 ※一部描写にてそれ以外のカプとも取れるような関係性・心理描写がありますが、明確なカップリング意図はありません。が、ご注意ください

仕方なく配信してただけなのに恋人にお仕置される話

カイン
BL
ドSなお仕置をされる配信者のお話

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

処理中です...