3 / 8
本編
汚れた仕事
しおりを挟む
-鼻につく煙の匂い。
-熱を持った銃身。
-地面を揺らす爆薬の爆発音。
目の前では、屋敷が燃えさかり、血と薬莢が撒き散らされている。
……全部、俺がやったのだ。
いや、正確には俺達が。依頼を受けて。
「カゲ、目標は果たした。撤収しよう。こいつらは自業自得だ。お前が、俺達が気負ってたらこれからやってけねーぞ。」
「ああ。解ってるさ。……先に行っててくれ。」
銃の安全装置をかけ、背負うと、目標の死体に敬礼する。
この屋敷の主は、いわゆる悪徳貴族だった。
民に重い税を突きつけ、自分だけ良い思いをしてきた。
……それでも今まで生きていた者への敬意はある。
これを忘れたら、俺は堕ちて、人間に戻れなくなる。そんな気がした。
見よう見まねの敬礼を終えた俺は、踵を返し歩き出す。
この屋敷を電撃的に潰す為、俺達は異常な用意をした。そのせいで二日間寝ていなければ風呂にも入っていないのだ。
ついでにこのところ仕事が続いて二週間ほどまともにベッドで寝れていない。
煤で覆われた地面をコンバットブーツで踏みしめる。
ひしゃげ、倒れた屋敷の門を踏んで、帰路に付こうとした時だった。
なにかのうめき声を聞いた気がした。
「……まさかな。」
俺は手投げ動体ソナーを適当に投げ、レーダーを見る。
-微かな、反応。
俺は小銃の安全装置に指をかけ、無線機を操作する。
「ゴースト3よりリーダー。生存者の反応を発見。処理する。」
『了解、お前に任せる。オーバー。』
マイクを離した俺は、反応を頼りに歩き、レーダーが示す場所へとたどり着いた。
「……ここか。」
反応の場所は瓦礫で埋まっている。俺は瓦礫をどかしてゆく。
「……居た。」
紫っぽい髪の毛が見え、大きな壁の瓦礫をなんとかどかすと、その髪の毛の主。ちんまりとした、可愛らしい少女が出てきた。
「……最悪だ。瓦礫ごとC4で吹っ飛ばしときゃ良かった!クソッ!こんな子殺したくねえよ!」
自分の判断を呪いながら小銃を向ける。数多の人間を屠ってきた傑作銃。M4A1の銃口は、少女に向けられ、震えていた。
「……悪いなロリっ娘。……恨むならあのクズを恨んでくれ。」
……俺は目を閉じ、ゆっくりと、震える指で。
引き金を、引いた。
……が。
乾いた発砲音は……しない。
肩へ来る反動も無い。
恐る恐る目を開けると、銃口からは煙の一つも出ていないし、薬莢も落ちていない。
「動作不良、か。」
……正直、安心した。
俺は銃を背負うと、しばらく悩んで女の子を抱き上げる。
「こちらゴースト3。報告訂正。死者34人。生存……いや、保護1人。」
『了解。お前の行動を尊重する。帰還せよ。オーバー。』
俺は今度こそ、帰路についた。
-熱を持った銃身。
-地面を揺らす爆薬の爆発音。
目の前では、屋敷が燃えさかり、血と薬莢が撒き散らされている。
……全部、俺がやったのだ。
いや、正確には俺達が。依頼を受けて。
「カゲ、目標は果たした。撤収しよう。こいつらは自業自得だ。お前が、俺達が気負ってたらこれからやってけねーぞ。」
「ああ。解ってるさ。……先に行っててくれ。」
銃の安全装置をかけ、背負うと、目標の死体に敬礼する。
この屋敷の主は、いわゆる悪徳貴族だった。
民に重い税を突きつけ、自分だけ良い思いをしてきた。
……それでも今まで生きていた者への敬意はある。
これを忘れたら、俺は堕ちて、人間に戻れなくなる。そんな気がした。
見よう見まねの敬礼を終えた俺は、踵を返し歩き出す。
この屋敷を電撃的に潰す為、俺達は異常な用意をした。そのせいで二日間寝ていなければ風呂にも入っていないのだ。
ついでにこのところ仕事が続いて二週間ほどまともにベッドで寝れていない。
煤で覆われた地面をコンバットブーツで踏みしめる。
ひしゃげ、倒れた屋敷の門を踏んで、帰路に付こうとした時だった。
なにかのうめき声を聞いた気がした。
「……まさかな。」
俺は手投げ動体ソナーを適当に投げ、レーダーを見る。
-微かな、反応。
俺は小銃の安全装置に指をかけ、無線機を操作する。
「ゴースト3よりリーダー。生存者の反応を発見。処理する。」
『了解、お前に任せる。オーバー。』
マイクを離した俺は、反応を頼りに歩き、レーダーが示す場所へとたどり着いた。
「……ここか。」
反応の場所は瓦礫で埋まっている。俺は瓦礫をどかしてゆく。
「……居た。」
紫っぽい髪の毛が見え、大きな壁の瓦礫をなんとかどかすと、その髪の毛の主。ちんまりとした、可愛らしい少女が出てきた。
「……最悪だ。瓦礫ごとC4で吹っ飛ばしときゃ良かった!クソッ!こんな子殺したくねえよ!」
自分の判断を呪いながら小銃を向ける。数多の人間を屠ってきた傑作銃。M4A1の銃口は、少女に向けられ、震えていた。
「……悪いなロリっ娘。……恨むならあのクズを恨んでくれ。」
……俺は目を閉じ、ゆっくりと、震える指で。
引き金を、引いた。
……が。
乾いた発砲音は……しない。
肩へ来る反動も無い。
恐る恐る目を開けると、銃口からは煙の一つも出ていないし、薬莢も落ちていない。
「動作不良、か。」
……正直、安心した。
俺は銃を背負うと、しばらく悩んで女の子を抱き上げる。
「こちらゴースト3。報告訂正。死者34人。生存……いや、保護1人。」
『了解。お前の行動を尊重する。帰還せよ。オーバー。』
俺は今度こそ、帰路についた。
0
あなたにおすすめの小説
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる