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本編
帰還
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「ただいま。」
俺達の拠点である、酒場を改装した建物。
入口のドアを押して開け、中に入るとギルドのリーダー修と、狙撃手の三島がカウンターに座っていた。
「お疲れ。カゲ。」
「おう。」
俺はカウンターに、背負っていたM4A1を置く。
「動作不良だ。おかげで撃たずに済んだがな。」
「了解。あとで秋山にバラしてもらう。……その子か?」
「ああ。瓦礫に埋もれて気絶してた。身元を調べてくれねえか?」
俺は女の子を古いソファに寝かせると、カウンターに座る。
「もう解ってる。確定じゃないが。その子は恐らくあのクズ領主、マルエスタの養子、シルフィード。」
「シルフィード……戦闘機か?」
「四大妖精の内の一体だ。お前の想像してるのは妖精だけど戦闘妖精。」
「ほーう」
「まあ確かに妖精みたいに可愛らしいな。」
俺がそういうと三島が笑う。
「お前、ロリコンか?」
「ざけんな。流石に小さいのは対象外だ。」
修はジト目で俺を見ている。
……だから違うって。
「……で?それ以外に情報は?」
「えーと、幼いころに両親が殺され、その後孤児院へ。んで、魔力がでかいからマルエスタに拾われたと。」
「可哀想なこった。それで最後は傭兵ギルドに保護ってか。……なあ、修。この子どうする?」
「どうするっつったってよ……このまま俺達で保護すんのはまずいだろ。彼女の人生的に。俺ら相手はクズ共とは言え人を殺して家を焼く傭兵だぜ?」
「……ま、やっぱ引き取り手探すか孤児院だよな。」
修がそう言うと、三島が待ったをかけた。
「一つ問題がある。」
三島は真剣な表情で続ける。
「彼女、恐らく依頼主の殺害対象に入ってる。リストには入って無いけどな、今回の依頼は「私兵、及び家族全員の殺害」だった。」
「リストに入って無いんじゃ違うんじゃねーの?」
「入れたら俺達が依頼を断ると思ったんだろ。」
たしかに、この子を殺せと言われたら俺達は躊躇してしまう。恐らく断っただろう。
「屋敷の完全破壊と焼却が依頼に入ってたのは、リスト外のこの子を殺させる為……だと思う。」
「ふーん。……で、それで何処が問題なんだ?」
「わかんねえのか馬鹿。この子を依頼主の勢力が見つけたら殺すかもしれねえぞ?しかも俺達が保護したと知ってみろ。多分怒鳴り込んできて「契約と違う!」とか言い出すに決まってる。」
「リストに入れねえあいつが悪い」
「貴族様がそんなので納得するワケねーだろ。」
俺達は悩みこむ。
「選択肢はとりあえず5個。
1.この子をここで殺す
2.保護する
3.孤児院や引き取り手を探す
4.放り出す
5.依頼主のとこに連れてって任せる。」
「1と4は論外だ。5も。んなこと出来るか。」
「3もしばらくは辞めといた方が良いだろ。もしも見つかったらヤバい。」
「……つまり必然的に俺達が保護か。」
「ずっとはこの子に悪い。長くて数ヵ月。そのくらいたったら別の街の孤児院にでも任せよう。」
「「了解。」」
「……そういや皆は?」
「リーコン連中はまだ屋敷付近の監視。他は寝てるか飯食いに行った。……あとお前少し臭いぞ。風呂行ってこい。」
「へいへい。その子頼むわ。」
俺は防弾チョッキを脱ぎ、ヘッドセットを外すと椅子に置き、風呂場へ向かった。
--
「あーーー。気持ちいい……」
体と頭を入念に洗って、浴槽に浸かる。二日分の疲れが流れ出てきた感じだ。
「風呂は命の洗濯ってな………。」
俺は絞ったタオルをアイマスクのようにかぶせ、肩まで浸かる。
やはり風呂は良い。
徹夜した上、監視、爆薬設置、警戒、戦闘と、ぶっ通しで戦っていたのだ。
激務のあとの風呂は、また格別だ。
『カゲー、入るぞー。』
「おー。」
三島の声がして、脱衣所のドアが空いた音がする。
「お前タオル忘れてんぞ。籠に入れとくぜ」
「あー、悪い。すまんね。」
「礼はいいさ。代わりにこの子頼む。」
「?」
ガラッと浴室のドアが空き、保護した女の子が入ってきた。
「……マジかよ。」
「保護したのてめえだろうが。世話はてめえがしろ。」
「へいへい……こっち来な。」
「……ん。」
俺は湯船から上がると、女の子を椅子に座らせ、お湯をかけ、シャンプーで頭を優しく洗ってやる。
「変なことすんなよー」
「しねえよ!」
俺が洗うのが上手かったのか、気持ちよさそうだった。
俺達の拠点である、酒場を改装した建物。
入口のドアを押して開け、中に入るとギルドのリーダー修と、狙撃手の三島がカウンターに座っていた。
「お疲れ。カゲ。」
「おう。」
俺はカウンターに、背負っていたM4A1を置く。
「動作不良だ。おかげで撃たずに済んだがな。」
「了解。あとで秋山にバラしてもらう。……その子か?」
「ああ。瓦礫に埋もれて気絶してた。身元を調べてくれねえか?」
俺は女の子を古いソファに寝かせると、カウンターに座る。
「もう解ってる。確定じゃないが。その子は恐らくあのクズ領主、マルエスタの養子、シルフィード。」
「シルフィード……戦闘機か?」
「四大妖精の内の一体だ。お前の想像してるのは妖精だけど戦闘妖精。」
「ほーう」
「まあ確かに妖精みたいに可愛らしいな。」
俺がそういうと三島が笑う。
「お前、ロリコンか?」
「ざけんな。流石に小さいのは対象外だ。」
修はジト目で俺を見ている。
……だから違うって。
「……で?それ以外に情報は?」
「えーと、幼いころに両親が殺され、その後孤児院へ。んで、魔力がでかいからマルエスタに拾われたと。」
「可哀想なこった。それで最後は傭兵ギルドに保護ってか。……なあ、修。この子どうする?」
「どうするっつったってよ……このまま俺達で保護すんのはまずいだろ。彼女の人生的に。俺ら相手はクズ共とは言え人を殺して家を焼く傭兵だぜ?」
「……ま、やっぱ引き取り手探すか孤児院だよな。」
修がそう言うと、三島が待ったをかけた。
「一つ問題がある。」
三島は真剣な表情で続ける。
「彼女、恐らく依頼主の殺害対象に入ってる。リストには入って無いけどな、今回の依頼は「私兵、及び家族全員の殺害」だった。」
「リストに入って無いんじゃ違うんじゃねーの?」
「入れたら俺達が依頼を断ると思ったんだろ。」
たしかに、この子を殺せと言われたら俺達は躊躇してしまう。恐らく断っただろう。
「屋敷の完全破壊と焼却が依頼に入ってたのは、リスト外のこの子を殺させる為……だと思う。」
「ふーん。……で、それで何処が問題なんだ?」
「わかんねえのか馬鹿。この子を依頼主の勢力が見つけたら殺すかもしれねえぞ?しかも俺達が保護したと知ってみろ。多分怒鳴り込んできて「契約と違う!」とか言い出すに決まってる。」
「リストに入れねえあいつが悪い」
「貴族様がそんなので納得するワケねーだろ。」
俺達は悩みこむ。
「選択肢はとりあえず5個。
1.この子をここで殺す
2.保護する
3.孤児院や引き取り手を探す
4.放り出す
5.依頼主のとこに連れてって任せる。」
「1と4は論外だ。5も。んなこと出来るか。」
「3もしばらくは辞めといた方が良いだろ。もしも見つかったらヤバい。」
「……つまり必然的に俺達が保護か。」
「ずっとはこの子に悪い。長くて数ヵ月。そのくらいたったら別の街の孤児院にでも任せよう。」
「「了解。」」
「……そういや皆は?」
「リーコン連中はまだ屋敷付近の監視。他は寝てるか飯食いに行った。……あとお前少し臭いぞ。風呂行ってこい。」
「へいへい。その子頼むわ。」
俺は防弾チョッキを脱ぎ、ヘッドセットを外すと椅子に置き、風呂場へ向かった。
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「あーーー。気持ちいい……」
体と頭を入念に洗って、浴槽に浸かる。二日分の疲れが流れ出てきた感じだ。
「風呂は命の洗濯ってな………。」
俺は絞ったタオルをアイマスクのようにかぶせ、肩まで浸かる。
やはり風呂は良い。
徹夜した上、監視、爆薬設置、警戒、戦闘と、ぶっ通しで戦っていたのだ。
激務のあとの風呂は、また格別だ。
『カゲー、入るぞー。』
「おー。」
三島の声がして、脱衣所のドアが空いた音がする。
「お前タオル忘れてんぞ。籠に入れとくぜ」
「あー、悪い。すまんね。」
「礼はいいさ。代わりにこの子頼む。」
「?」
ガラッと浴室のドアが空き、保護した女の子が入ってきた。
「……マジかよ。」
「保護したのてめえだろうが。世話はてめえがしろ。」
「へいへい……こっち来な。」
「……ん。」
俺は湯船から上がると、女の子を椅子に座らせ、お湯をかけ、シャンプーで頭を優しく洗ってやる。
「変なことすんなよー」
「しねえよ!」
俺が洗うのが上手かったのか、気持ちよさそうだった。
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【作者より、感謝を込めて】
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そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
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