銃持ち傭兵、異世界を行く

こなしぐ

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本編

仲間達

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「出たぞー」
 
「……出ました。」
 
湯気を漂わせながら、脱衣所を出る。
隣の女の子にはとりあえず俺のシャツを着せてある。
 
「修ー、牛乳取ってくれ」
 
「ほらよ。」
 
修は冷蔵庫冷やしてあった小さなビン牛乳を俺に投げつける。
 
「ったく割れたらどうすんだ。」
 
「舐め取れ」
 
「死ね」
 
ビンを一本女の子に渡すと、もう一本の栓を開け一気飲み。
 
それを見た女の子も、俺の真似なのか小さな両手でビンを持ち、一気飲みした。
 
「?!けほっけほっ……」
 
「おいおい大丈夫か?自分のペースでゆっくり飲め。」
 
女の子の口をハンカチで拭いてやると、
それを見ていた修と三島がニヤニヤと見ていた。
 
「……なんだよニヤニヤ気持ちわりい。」
 
「いや、なんか昔から一緒の兄妹みたいでな。」
 
「……そうかい。」

俺は少し照れ臭くなって顔を背ける。
 
女の子は不思議そうに首を傾げた。
 
 --
 
自分の部屋に女の子を寝かした俺は、修に呼ばれて拠点に戻った。
 
「シルフィードちゃんは?」
 
「寝かした。とりあえず俺のベッドで。」
 
「可哀想に……臭い汗の染みこんだベッドで……」
 
「どっかの誰かのせいでここ2週間はベッドで寝れてねえよ死ね」
 
「だれのせいだろうなー」
 
てめえだよボケ」
 
俺は深くため息をつく。
 
「……もういいよ。用事はなんだ?」 
 
「勿論、あの子の事だ。お前、明日ちゃんと説明しろ。」
 
「……なんの説明?」
 
「俺達が何者か。なんで君がここに居るか。家族がどうなったか。君がこれからどうなるか。」
 
「嫌な役回りだな。」
 
修も三島も、申し訳なさそうな顔だ。
 
「ま、保護したの俺だし。責任はとるしどうせ面倒も見るんだ。明日あの子が起きたら説明するさ。」
 
「……すまんな。」
 
修は頭を下げる。
 
「気にすんなリーダー。らしくねえぞ。」
 
「……おう。」
 
……それは良いとして
なんだか気まずい。
俺も、三島も、修も、暗い空気は苦手なのだ。
 
誰か、この空気をどうにかしてくれ!
 
……その願いが神様に伝わったかは知らない。
しかし、どうにかなってくれた。
 
「はっはっはwwwただいまwwww」
 
「「「「ただいまーwww」」」」
 
騒がしい奴らが帰ってきた。
支援兵と突撃兵の連中だ。
 
「よう末宏。随分速かったな。」
 
「おう!聞いてくれよ修にカゲ!俺らが楽しく飯食って飲んでたらよ?後から来た奴らがケンカし出しやがったんだ!」
 
「ほー。」
 
「すげえ迷惑だったぜ。大男がテーブルに飛んできて俺のグラタンつぶしやがった!思わずチャカ拳銃出そうとしちまった。」
 
「なんだ?お前の事だからケンカに割り込むかと思ったぜ。」
 
「俺は殴る蹴るは苦手なの。けど撃ったら殺しちまうだろうが。」
 
「ちげえねえ。」
 
「でも末宏!お前その後顔チーズまみれになった時に抜いたろ!」
 
「マジかよ!」
 
「うるせえ!流石にイラっと来たんだよ!」
 
「「「はははははwwww」」」
 
元気な奴らだ。
とてもさっきまで静かに命を奪ってた奴らとは思えない。
 
……まあ、そうでもしないとやって行けないのかもしれないが。
実際、この賑やかさに救われてる部分は結構ある。
 
「よっしゃ!二次会しようぜ!ここなら邪魔は入らん!」
 
「いいぜ!じゃあ男気ジャンケンだ!蒔けたら一人で飲みもん運べ!」
 
「やったろうじゃねーか!」
 
「いくぞ!おっとこっぎジャンケン」
 
「「「じゃんけんぽん!!!!!」」」
 
-傭兵ギルド、Out-of-place。
街外れの彼らの拠点は、珍しく遅くまで騒がしかった。
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