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1週間のお暇

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どうも櫻井です。
なんやかんやあって俺の能力が使えなくなりました。
「つまりマリアの『神に祈る力』で遊園地へ移動するときに能力が邪魔だったから一時的に無効化され たってこと!?」
「多分…?」
「マリア!能力が戻るか確認はできる?」
「わかった。聞いてみる。」
マリアは両手を結び目を閉じる。
「…また女神様が出てくるかと思ったけど…そうじゃ無い感じ?」
「女神は能力を使用するときしか出てこないわ。今回みたいに意思疎通をするときはでてこないの。」
はえー便利。
確かにあんなすごいもん気軽に出されても困るしな。
「…一週間は戻らなそう。ごめんねお兄さん。」
「ん?あぁ、いいのいいの。元はといえばそこを計算に入れてなかったお前のお姉ちゃんのせいだから。」
「な!?ま、まぁ否定はできないが…。」
「どうせ俺らは隠れて生きていくつもりなんだし、それこそ進藤に居場所がバレてすぐさま逃げないといけなくなったらまずいけどさ。」
そう、俺が能力を使えない状態で見つかったらそれこそアウトだ。
「マリア。神の力で能力を即復活することはできないの?」
「うん…別の何かの影響で使えなくなっているならまだしもこれは神様の力で使えなくしたものだから…。」
「…分かったわ。それじゃあこの屋敷周辺に人払いはできそうかしら?本来なら彼の能力が邪魔してしまうだろうけれど今ならいけないかしら。」
「わかった!やってみるね!」



「できた!」
できたんだ、流石神様ですな。
「まぁ元から指名手配で好きには動けないと予想していたけれど、りひとは能力復活まで絶対に屋敷から出ちゃだめよ!わかった?」
「任せろ!ひきこもるのは得意なんだ!」
「基本的に屋敷の外に出れるのはともえとひなみだけね。念のため外に出るときは変装とか忘れないように!」
「了解しました。」
「おっけー。」
…こうして今後の俺たちの生活についての話は終わった。
「あ!そうだった。りひと。」
「ん?どうかしたか?」
「多分ここでの生活は暇になることも多いから。これ、返しとくわ。」
手渡してきたのはいつだか持ち去られていたゲーム機。
…そういやお前らに盗まれたままだったわ。
てかここWI‐FIあるのかな?



俺は今、金堂にあてがわれた部屋でグダグダしている。
やることがない、というよりやれることがない。
ゲーム機返してもらったけど充電器ないから今やってるパズルゲームで充電消費したらもうお終いなんだよなぁ。
お、10連鎖。
金堂姉妹は久々の再会で積もる話もあるだろうから会話に入りづらいしな。
「…櫻井さん。少し話があるんだけど…。」
宮本さんが部屋に入ってきた。
…あぁそうだ。聞きたいことかあったんだ。
「…ヤクザ事務所にいた強面オカマについての話?」
「っ!」
宮本さんは驚愕したように目を大きく見開いた。
「…なんでわかったの?」
「いやだって明らかに怯えてるんだもん。他のヤクザには一切怯えるような仕草はしてなかったのに急にあんな風になって…気にならないはずないよな。」
他の奴らはボコスカ殴り飛ばしておいて、あのオカマだけは顔を見ただけで萎縮した。
前に俺に能力が効かなかった時も同じ感じだったから、能力がないと男が怖いとかそんな感じになるのかもしれんとは思っていたが。
「今回はオカマに敵わなくて萎縮したんじゃなく見ただけであんな様だったから、多分知り合いなのかなって。」
「よく見てるのね。そうよ。私はアイツを知っている。」
やはり知っていたか。
…だが気になるのはオカマ側は特にこれといったリアクションはしていなかった。
宮本さんが一方的に知っているということか?
「…あの男は…。」
身体がガタガタと震え始める。
「…無理に話す必要はないよ?」
首を横に振った。
…ここにきた時点で話そうと覚悟しているのだ。
この心配は野暮だったのだろう。
「あの男は…前世で私を殺した男よ。」
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