ザ・聖女~戦場を焼き尽くすは、神敵滅殺の聖女ビームッ!~

右薙光介

文字の大きさ
14 / 45

第13話

しおりを挟む
「ここは……?」
「いい場所だろ?」

 町から少し歩いた、小高い丘の上。
 すっかり傾いた赤いお日様が、アタシとエルムスを照らす。

「もう、戻ってこれないかもしれないからね。墓参りさ」

 墓標とも言い難い、目印の石の周りに買った白い花を並べ置く。
 妹はこの淡い香りの花が大好きだった。

「アタシには妹がいてさ。物心ついたときには、スラムでお互いに身を寄せ合ってた。もしかしたら本当の妹じゃないかもしれないけど、アタシは妹だと思ってたし、あの子もアタシの事を姉ちゃんと呼んでた」

 自分と似てたかな、なんて思いだそうとするがいまいち判然としない。
 記憶ってのは、残酷だ。

「いい子だったんだよ。でも、死んじまった。肺病でにかかって、あっけないもんだったよ」
「……」

 黙って聞くエルムスから花を受け取って、石の周りの花畑のように飾っていく。
 日々の食べ物に困るスラム暮らしのアタシにしたら、なかなか粋な無駄遣いだ。
 死んだ人間にしてやれることなんて、ありやしない。
 これだって、ただの自己満足だと理解しちゃいる。

「教会にさ、行ったけど……門前払いされた。だからアタシはあんた達が大嫌いなのさ」
「それは、申し訳ないことを……」

 エルムスが目を伏せる。
 お前のせいじゃないだろうに、バカな奴。

「ああ、でも。通りがかりの司祭が一人、助けてくれたんだ。これがまた擦れた司祭でさ……神様だってタダじゃ働かない、なんて言ってて……。ああ、そういうことなんだって。ただ、与えられるのを待ってるだけじゃダメなんだって、気付かされたよ」
「その方は?」
「知らねぇ。でも、アタシが差しだしたなけなしの金で、妹の痛みを取ってくれて……葬送の祈りもしてくれた。ここも、そいつと一緒に作った墓なんだ。スラムのガキなんて、死んだら路地裏で野良犬の餌になるのが相場だからな」

 花をすっかり飾り終えて、すっかり天国みたいな場所になった丘の上で沈む太陽を見る。

「さ、アタシの用事はこれで終わりさ」
「死ぬのが怖くないんですか、セイラ」
「怖いさ。怖くないやつがいたとして、そいつはまともじゃないね」

 軽く笑って見せると、エルムスが少し怯んだ表情になる。
 笑顔を張り付けた気味の悪い野郎だと思っていたが、人らしい顔もできるじゃないか。

「でもさ、スッキリはした。毎朝毎朝、メシの前に『死を想えメメントモリ』だなんて話しをされたからかもしれないけどさ、これでアタシは、死んだって悔いなく逝ける。未練がないわけじゃないけど、やるこたぁやった」

 あたしの言葉に、エルムスが眉尻を下げる。
 そんな顔する必要ないだろう?

 なぁ、エルムス。
しおりを挟む
感想 39

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

論破!~召喚聖女は王子様が気に食わない

中崎実
ファンタジー
いきなり異世界に召喚されて、なんかイケメンに「世界を救ってもらいたい事情」を説明される、よくあるWEBファンタジーあるあるパターンが発生した。 だけどねえ、あなたの言い草が気に食わないのよね?からの、聖女が帰宅するまでのおはなし。 王子「自分達より強い敵をどうにかしてくれる相手を呼ぼう。女なら押し倒してしまえば、思うがままにできる!」 聖女1「有能な人を呼びました、としゃあしゃあと抜かすツラだけ良い男、なぁんか気に入らないのよねえ……」 聖女2「はよ帰ろ~」 聖女3「……」 論破というより爆破してませんか、あなた達?

聖女解任ですか?畏まりました(はい、喜んでっ!)

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私はマリア、職業は大聖女。ダグラス王国の聖女のトップだ。そんな私にある日災難(婚約者)が災難(難癖を付け)を呼び、聖女を解任された。やった〜っ!悩み事が全て無くなったから、2度と聖女の職には戻らないわよっ!? 元聖女がやっと手に入れた自由を満喫するお話しです。

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!

さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ 祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き! も……もう嫌だぁ! 半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける! 時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ! 大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。 色んなキャラ出しまくりぃ! カクヨムでも掲載チュッ ⚠︎この物語は全てフィクションです。 ⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!

処理中です...