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第37話

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「ヤローども! 下がんな!」

 声を張り上げて、前に出る。

「セイラじゃねぇか!」

 バルボ・フットが目をまるくしてアタシを見る。
 前線にこいつがいるのは助かった。

「丁度いい、兵を退かせな。ここからは聖女様の戦場だよッ!」
「んだ、そりゃ? だが、まあテメェのことだ、策があんだろ」
「んなもんないよ。正面から叩き潰す。消し炭になりたくなきゃ、アタシの後ろにいな!」

 アタシの言葉に頷いて、バルボ・フットが青色の発煙筒を投げる。
 後退の合図だ。
 傭兵と騎士たちが下がっていくのを確認して、例の声を呼び出す。

『──神罰執行器官、展開。聖女リアクター出力安定。神罰粒子加速開始』

 アタシの背後に、でかい光の輪が形成される。
 天使の頭についてるのと一緒の奴か? でかいけど。
 それが高速で回転して……アタシの中の何かを加速させ、螺旋させていく。

「気合入れていくよォッ!」

 溢れる力を視線に乗せて、こちらに攻め来る魔王軍の先頭を横薙ぎにする。
 着弾、爆発、炎上。
 人間様をご機嫌に攻め立ててくれた魔王軍の先鋒が尽く焼け落ち、消滅する。

 その光景は、勢いづいた魔王軍の足を止めるには十分だったようだ。

「セイラ、大丈夫ですか?」
「大丈夫さ。さぁ、次いくよ!」

 二度目の閃光ビームを発射して、まごついてる魔王軍の中央を撃ち抜く。

聖女リアクター、稼働効率減衰。天輪破損』

 背後の輪っかが割れ落ちて、膝の力ががくんと抜ける。
 たった二発っきりで救えるものか!
 もっとよこしな!

『要請受諾。天輪再構築開始。リソースシステムの効率化をはかります』
「早くしな!」

 謎の音声に文句をつけていると、二つに割れた魔王軍の中央から何かがすごいスピードで迫ってきていた。
 蒼い肌に三つの目、二つの口を上下に持つ異形の魔人だ。

「好機とみたりィ……! 我は魔王軍四天王が一人……」
「──徒花と散れ」

 あわやというところで聞こえたのは、チンっという鍔なりの音。

「僕の聖女に触れないでください。それは、僕のものです」

 名も知らぬ四天王とやらには、もう聞こえてはいないだろう。
 何せ、とっくに首が落ちてる。

「エルムス、アンタ強かったんだね……。ていうか、司祭様が剣を振っていいのかい?」
「もう、聖職者ではないので」

 にこりと笑ったエルムスが、再び身構える。
 一振りごとに剣を仕舞うなんて、変な剣術だ。

『再構築完了。聖女リアクター負荷上昇。出力60%増強』
「よくわかんないけど撃てるんだろ? さぁ、押し返すよ!」

 アタシは再び天輪を回して、『神敵』を視界に捉えた。
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