ひとりぼっちだった隠れマゾおねえさんがショタたちにどろどろに堕とされる話

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ニーナは慎ましやかに生きていた。

特別に裕福ではないが困窮に喘ぐこともない中流の階級で育ち、女学校を出て、
親の知り合いから縁談を持ち掛けられはしたがそれは断り、家から離れる許しを貰った。

修道院の手伝いをしながら資金を貯めて、そして、元々手先が器用だったことを生かして道具屋を始めた身だった。

ニーナの居住地ではある一神教の信者が一番多いが、
異なる信仰を持つことも許されている。

国として異教徒にも寛大な姿勢を持ち、人々もそれに準じて表立って迫害することはない。

ところが、一神教への信仰は個々人どころか歴史や文化、風習自体に深く根付いている。
表面的には尊重しながらも、「神」は唯一無二であると考え、
「神」ではないもの――「霊的な存在」と一纏めにされているものを神格化する行いや
過剰にそれらを望む人間を時に異端として扱うのが現実だった。

一方で既存の教義では救われないもの、信仰だけではままならない困難を抱えるもの、
単に好奇心や欲を満たしたいだけのもの……
彼らもまた独自のコミュニティを形成し続けていて、
「霊的な存在」に触れること、次いで「霊的な存在」との接触で製造する魔道具のことを求めている。

ニーナの店とは、そうした異教徒たちを相手にした商売だ。

魔道具は作り手が限られており、また製造数も流通経路も限られている。

ニーナ自身は別段「霊的な存在」を信心しているわけではなかったが、
元手が貧弱で即日の金がいる身だった。

供給が足りず、それでいて一定の需要がある商材を探すと、自然と魔道具屋になっていたのだ。

店を続けていれば、自分が町の人間から好く思われてはいないだろう、というのが肌感覚でわかった。
それでも、人前に現れるような真似を避ければ実害はなかった。
場所によっては異教徒への蔑視はより激しく
「我々に不幸が続くのはあの女のせいだ」「子どもを攫っている」など根も葉もない噂を立てられることもある。

それと比べればましだろう……そう思いながら、
ニーナは日陰でひっそりと生きることを選んだ。そして、その静かな生活を好んでもいた。

   ◇

(これでは本当に子ども攫いじゃない……)

膝の上で呑気に歌っている男の子を見ながら、ニーナは彼には聞こえないようため息を吐いた。

時刻は昼。店の看板は下ろしている。
店は夜遅くに開けることが多い。
従ってニーナは昼間には店の奥にある居住スペースにこもり、開店の用意をしている。
こもりきりにはなるが暇はそれほどない。いそいそと売り物を運び、帳簿の確認をして……
彼女の日常はそういうものだ。

それがこの男の子――リュシオルにより狂わされているのだった。

「あ、あの……リュシオルくん……そろそろ、脚、疲れちゃった……」
「えー! やだやだ、まだ膝枕してよぉ~!!!」

変声期も迎えていない高い声で強請り、リュシオルが暴れ出す。
暴れる、といっても子どもじみたものだ。恐れを感じるようなものではない。
拳を丸めて、腕をじたばた暴れさす様子はまさに大きな赤子だった。

ニーナは慌ててそれを窘める。
だが、リュシオルの発する小さい子に特有のキンキン声の奥底にはどこか甘えた調べがあり、
それを聞いているとあしらう気力を奪われてしまう。

「やーだ、やーだ!! おれここにいる!!」

制する手が徐々に躊躇いがちになるのとは対照的に、リュシオルは全力で駄々をこねる。

「わ、わかった……わかったから……。もうちょっとだけだからね……?」
「うん!」

結局、ニーナの方が折れる。リュシオルが満足げに彼女の膝の上を占有する。
今回だけがこうなのではない。彼が訪れてからは、何にしてもこの調子だった。

(うぅ……早く帰ってくれないかなぁ……)

ニーナは努めて穏やかに振る舞いながら内心では疲労していた。

リュシオルとの出会いはひどく唐突なものだった。
まだ店を開けていない時間帯、ニーナがカウンターを磨いている際に、彼が店を覗き込んでいた。

それが始まりだった。

ニーナの信条として魔道具を心得のない者に売ることはできない。
彼の存在に気付いて以降、リュシオルは何度も店の前にやってきた。
時にはドア越しに話しかけてきた。
ニーナは「ここはあなたの来る場所じゃない」と追い返した。

どうも甘やかされて育ったタイプなのかリュシオルは駄々をこねることに躊躇がなかった。
ニーナがそうしてあしらうとわんわん泣き始めて、しまいには地面でじたばた暴れ始める。

ただでさえ「魔道具屋の女」として周囲からは好く思われてはいないのだ、
あらぬ誤解を受けるわけにもいかず、
また単純に小さな子が泣いているところを見れば動揺するし心も痛むものだった。

結局ニーナは彼を店に招き入れた。
小さな子が見るものでも買えるものでもないのだから、一度店内を眺めれば気が済むだろう……
そういう目論見もあった。

気が付けばリュシオルは毎日のように入り浸るようになっていたのだった。
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