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リュシオルはニーナの上体をとん、と軽く押すと、
彼女の頭の後ろに手を敷き、それをそっと床へ下ろす。
仰向けに横たわった彼女にエリオは添い寝をする。
そして、リラックスさせるよう、ぽん、ぽんと腹の上に手を置いては離すのを繰り返す。
「おねえさん、おれとぎゅってハグするとむずむずってした顔するんだぞ」
リュシオルも逆側に横たわり、三人並んだ体勢に落ち着いたあと、
リュシオルはにゅ、とエリオの方に顔を覗かせて言った。
彼はすぐさま所定の位置に戻り、ニーナの腰に手を回すと、ぐい、と自分の方へ引き寄せる。
ニーナはびくり、と一度身体を跳ねさせ、それから全く動かなくなってしまった。
開いた目が落ち着きなく泳ぎ、頬は燃えるように赤く染まっている。
「ほんとだ、すっげぇエロい……」
エリオはニヤニヤと眺めて唇を舌でなぞる。
「ち、ちが……」
「えーちがわないよっ」
腕の力が少し緩んだ拍子、ニーナは慌てて首を横に振った。
「ほら!」
リュシオルがもう一度手に力を込めて、今度はエリオからニーナを奪い取る勢いで抱き寄せる。
そして、自分のものだと見せつけるように、彼女に頬を擦り付ける。
「あっ……♥」
そうされればもうニーナの理性は決壊する。
耳の先まで赤く染まり、意味を持たない声が自然と漏れる。
エリオは負けじとニーナを自分の方にぐい、と寄せて耳元で囁く。
「教えてあげるけど、リュシオルくんって結構独占欲強いんだよぉ」
リュシオルの独占欲が強い、
それは数え切れないほど重ねてきた行為の中でも強く感じることだった。
……感じた、というよりも、一方的に理解させられたという方が正確だ。
「う、うん……そうだね……」
ニーナは努めて平静を装って答える。
彼女の膝はしきりに擦り合わされており、吐息は抑えてもなお弾んでいる。
エリオは深みのあるブラウンの瞳を細めて言う。
「……おねえさんさぁ、
もしかして、リュシオルくんにそういう風に求められるの、嬉しい?
俺のもの! ってされると、すっげぇ顔するじゃん……♥
真っ赤になってとろんってしちゃってさぁ」
「……っ!? ち、ちがう……そんなこと……」
それまでのツンとしているが、一応は大人として慮っているような態度とは違う、
いじわるをする子どものような声色だった。
ニーナは反射的に否定の言葉を口にしたが、その言葉に力はなかった。
瞳を羞恥に潤ませ、それでもなお否定する悪い意味での生真面目さはむしろエリオの加虐心を煽るばかりだ。
「ふぅん。何が違うの? ちっちゃいこに興奮すること?
それとも、リュシオルくんのこと好きじゃないのー?」
エリオは牙のような歯を見せ笑い、ニーナを更に揶揄う。
彼の言葉を預かるように、リュシオルが大きな声で叫ぶ。
「えぇっ!? おねえさん、そうなのか……?」
「違うの!」
ニーナはもう頭が真っ白になり、素っ頓狂な調子で返していたが、やはりその言葉に力などない。
「リュシオルくんかわいそーもてあそばれたんだー」
「えーん……おねえさん、おれ、かなしいなぁ……えーん、えーん」
エリオが眉尻を下げ、リュシオルが便乗するようすんすん泣いて目を擦る真似をする。
「そ、そんなこと……」
見え透いた泣き真似であることなどわかっているのに、ニーナは動揺してしまい、
二人は隙に付け込むよう追撃する。
「じゃあさあ、好きって言ってあげなよ」
「へ……っ? う、うん……す、好き……? 好き、だよ……」
「もっと!」
「……っ、すき、すき、すきです……リュシオルくんのこと、すき……」
自分よりもずっと大きくきちんとしている大人の女性が、
こんな手に翻弄され従順に言うことを聞いている……
エリオはそれがひどく可笑しいらしく上機嫌になり、
ニーナの耳朶に唇が触れんばかりに近づく。
「んふふ、俺ならいいよ? 背もでけぇしいちばんおとなだもん。
でもさぁ、ちっちゃくてかわいい~リュシオルくんに興奮してんの、マジで最悪じゃん!」
気の強い子ども特有の明け透けで嘲りを含んだ物言いは、
ただでさえ気が弱く、そのうえ混乱している彼女にいたく刺さり、
「ひっ」と小さく声を漏らしたかと思うとニーナは黙り込んでしまった。
エリオが覗き込むと、真っ赤に染まった顔はホロホロ涙を零し、
弱々しく開いた唇はもはや仮初の否定すら出来ずわなないている。
「へ~んたい♥ へんたい♥
おとなしそうな顔してんのにやらしー!」
あまりの羞恥に泣き出してしまい、みっともなく鼻をすするその姿。
大の大人の女のそんな姿を映しながらエリオは高揚に目を開き、頬を上気させている。
「すきすきってされるのはきもちいいねぇ。
おれはかわいくてかっこよくて、これ上手だから! おにいさんよりいいでしょー!」
リュシオルはリュシオルでマイペースにニーナに抱き着き、懐に潜り込んでくる。
ふんふんと機嫌よく鼻を鳴らす彼にニーナが喜色と紅潮を見せると、
すりすりと甘えるようそれが擦りつけられる。
エリオはニヤニヤと眺め、ニーナに手を伸ばそうとする。
だが、ニーナは反射的な怯えを示していた。
「えっ!? あっ、ご、ごめん……流石に、言い過ぎた……?」
その怯えを敏感に感じ取り、咄嗟に指を止める彼の姿に先程までの加虐的な様子は見えない。
エリオはニーナの表情が緩んだのを確認すると、頬をなぞり、涙を指先で拭った。
「……ごめんね。揶揄いすぎちゃった」
穏やかに囁き、カラカラとやさしく微笑む彼は、小さくとも兄のようでもあった。
ニーナが微笑み返そうとした刹那――
「……おねえさん、すげぇかわいい……」
顎の方をゆるゆると撫でていた指にクイ、と力が込められる。
バチ、と視線が交わった。瞬間、ニーナの燻っていた炎が一気に燃ゆる。
エリオの目は獣のようにギラついている。
「……いい?」
彼女の頭の後ろに手を敷き、それをそっと床へ下ろす。
仰向けに横たわった彼女にエリオは添い寝をする。
そして、リラックスさせるよう、ぽん、ぽんと腹の上に手を置いては離すのを繰り返す。
「おねえさん、おれとぎゅってハグするとむずむずってした顔するんだぞ」
リュシオルも逆側に横たわり、三人並んだ体勢に落ち着いたあと、
リュシオルはにゅ、とエリオの方に顔を覗かせて言った。
彼はすぐさま所定の位置に戻り、ニーナの腰に手を回すと、ぐい、と自分の方へ引き寄せる。
ニーナはびくり、と一度身体を跳ねさせ、それから全く動かなくなってしまった。
開いた目が落ち着きなく泳ぎ、頬は燃えるように赤く染まっている。
「ほんとだ、すっげぇエロい……」
エリオはニヤニヤと眺めて唇を舌でなぞる。
「ち、ちが……」
「えーちがわないよっ」
腕の力が少し緩んだ拍子、ニーナは慌てて首を横に振った。
「ほら!」
リュシオルがもう一度手に力を込めて、今度はエリオからニーナを奪い取る勢いで抱き寄せる。
そして、自分のものだと見せつけるように、彼女に頬を擦り付ける。
「あっ……♥」
そうされればもうニーナの理性は決壊する。
耳の先まで赤く染まり、意味を持たない声が自然と漏れる。
エリオは負けじとニーナを自分の方にぐい、と寄せて耳元で囁く。
「教えてあげるけど、リュシオルくんって結構独占欲強いんだよぉ」
リュシオルの独占欲が強い、
それは数え切れないほど重ねてきた行為の中でも強く感じることだった。
……感じた、というよりも、一方的に理解させられたという方が正確だ。
「う、うん……そうだね……」
ニーナは努めて平静を装って答える。
彼女の膝はしきりに擦り合わされており、吐息は抑えてもなお弾んでいる。
エリオは深みのあるブラウンの瞳を細めて言う。
「……おねえさんさぁ、
もしかして、リュシオルくんにそういう風に求められるの、嬉しい?
俺のもの! ってされると、すっげぇ顔するじゃん……♥
真っ赤になってとろんってしちゃってさぁ」
「……っ!? ち、ちがう……そんなこと……」
それまでのツンとしているが、一応は大人として慮っているような態度とは違う、
いじわるをする子どものような声色だった。
ニーナは反射的に否定の言葉を口にしたが、その言葉に力はなかった。
瞳を羞恥に潤ませ、それでもなお否定する悪い意味での生真面目さはむしろエリオの加虐心を煽るばかりだ。
「ふぅん。何が違うの? ちっちゃいこに興奮すること?
それとも、リュシオルくんのこと好きじゃないのー?」
エリオは牙のような歯を見せ笑い、ニーナを更に揶揄う。
彼の言葉を預かるように、リュシオルが大きな声で叫ぶ。
「えぇっ!? おねえさん、そうなのか……?」
「違うの!」
ニーナはもう頭が真っ白になり、素っ頓狂な調子で返していたが、やはりその言葉に力などない。
「リュシオルくんかわいそーもてあそばれたんだー」
「えーん……おねえさん、おれ、かなしいなぁ……えーん、えーん」
エリオが眉尻を下げ、リュシオルが便乗するようすんすん泣いて目を擦る真似をする。
「そ、そんなこと……」
見え透いた泣き真似であることなどわかっているのに、ニーナは動揺してしまい、
二人は隙に付け込むよう追撃する。
「じゃあさあ、好きって言ってあげなよ」
「へ……っ? う、うん……す、好き……? 好き、だよ……」
「もっと!」
「……っ、すき、すき、すきです……リュシオルくんのこと、すき……」
自分よりもずっと大きくきちんとしている大人の女性が、
こんな手に翻弄され従順に言うことを聞いている……
エリオはそれがひどく可笑しいらしく上機嫌になり、
ニーナの耳朶に唇が触れんばかりに近づく。
「んふふ、俺ならいいよ? 背もでけぇしいちばんおとなだもん。
でもさぁ、ちっちゃくてかわいい~リュシオルくんに興奮してんの、マジで最悪じゃん!」
気の強い子ども特有の明け透けで嘲りを含んだ物言いは、
ただでさえ気が弱く、そのうえ混乱している彼女にいたく刺さり、
「ひっ」と小さく声を漏らしたかと思うとニーナは黙り込んでしまった。
エリオが覗き込むと、真っ赤に染まった顔はホロホロ涙を零し、
弱々しく開いた唇はもはや仮初の否定すら出来ずわなないている。
「へ~んたい♥ へんたい♥
おとなしそうな顔してんのにやらしー!」
あまりの羞恥に泣き出してしまい、みっともなく鼻をすするその姿。
大の大人の女のそんな姿を映しながらエリオは高揚に目を開き、頬を上気させている。
「すきすきってされるのはきもちいいねぇ。
おれはかわいくてかっこよくて、これ上手だから! おにいさんよりいいでしょー!」
リュシオルはリュシオルでマイペースにニーナに抱き着き、懐に潜り込んでくる。
ふんふんと機嫌よく鼻を鳴らす彼にニーナが喜色と紅潮を見せると、
すりすりと甘えるようそれが擦りつけられる。
エリオはニヤニヤと眺め、ニーナに手を伸ばそうとする。
だが、ニーナは反射的な怯えを示していた。
「えっ!? あっ、ご、ごめん……流石に、言い過ぎた……?」
その怯えを敏感に感じ取り、咄嗟に指を止める彼の姿に先程までの加虐的な様子は見えない。
エリオはニーナの表情が緩んだのを確認すると、頬をなぞり、涙を指先で拭った。
「……ごめんね。揶揄いすぎちゃった」
穏やかに囁き、カラカラとやさしく微笑む彼は、小さくとも兄のようでもあった。
ニーナが微笑み返そうとした刹那――
「……おねえさん、すげぇかわいい……」
顎の方をゆるゆると撫でていた指にクイ、と力が込められる。
バチ、と視線が交わった。瞬間、ニーナの燻っていた炎が一気に燃ゆる。
エリオの目は獣のようにギラついている。
「……いい?」
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