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第四章:犠牲の国・ポルタ
第108話
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カーミラを乗せる次元竜が動き出した。自らが作り出した次元の狭間へと向かう。カーミラが今度はその場の全員に、そして大聖堂の外にいる聖騎士たちにも聞こえるように拡声魔法を使って話し始めた。その声は、かなりの広範囲に向けられている。恐らく国中に響いているだろう。
「覚えておきなさい! アタシ達は『パンデモニウム』! あなた達凡人みたいなつまらない存在とは一線を画す逸脱種《フリンジ》の集団よ! これから世界中で遊んであげる、覚悟しなさい! アハハハッ!」
カーミラと次元竜が次元の狭間に消えた。それと同時にカーミラと次元竜の魔力がぱったりと途切れた。次元竜の魔力が突然現れたのはこのようなカラクリがあったのだ。
脅威が去った大聖堂には、気味が悪いぐらいの静寂が訪れた。もはや大聖堂は戦争でも起きたのかと思うほどの荒れようである。
クロエが立ち上がった。そして駆け足でエリーの下へ急ぐ。エリーは元からボロボロの状態であったが、カーミラからの最後の仕打ちで更にボロボロになってしまっていた。再生力が自慢だったはずなのに、いまや本当にゆっくりとしか再生できずにいる。
「エリー! 大丈夫? 返事して!」
クロエの呼びかけに、エリーはゆっくりとした動作で瞼を開いた。そして力ない声で返事を返す。
「……何よ、別に死にやしないわ。流石にダメージ受けすぎたし、少し、休ませて……」
「そんな、何か出来ること……回復薬《ポーション》はもうないし、うぅ……」
クロエは辺りを見回した。しかしどれだけ見ても役に立ちそうなものなどはなく、あるのは瓦礫などばかりだった。
そんなクロエを見かねたのか、エリーがクロエに声をかけた。
「……そうね、じゃあちょっとで良いから、クロエ。アンタの血を、吸わせてくれる?」
「ボクの、血?」
クロエが頭の上に疑問符を掲げた。突然の事に理解が出来なかったらしい。それを悟ったのか、エリーが少し辛そうな顔をしながらもクロエに説明をした。
「忘れたの? アタシは吸血族《ヴァンパイア》、よ。血さえ吸えば、体力は回復する。それがアンタみたいな、魔力の多い血だったらすぐに回復するわ。」
「そうなんだ。うん、じゃあ早く吸って! えっと、こうかな?」
クロエはぼんやりとした記憶を思い起こした。前世の本で見たとある挿絵、吸血鬼が美女の首筋に噛みついて吸血をする絵だ。それを思い出したクロエは髪をかき上げ、自身の首筋をエリーの口元に差し出した。エリーが顔を赤らめる。
「バ、バカ! アンタ、一体何やってんのよ!?」
「何って、ボクの血を吸うんでしょ? ほら、早く!」
「そ、その事を言ってるんじゃなくて……あぁ、もう! いただきます!」
エリーが口を開き、その鋭い牙を柔らかなクロエの肌に突き立てた。ツプリと牙が沈み込む感触。クロエは小さく鋭い痛みに一瞬顔をしかめる。
しかしすぐにその痛みは消えた。不思議な位に一瞬で。そしてすぐにその傷口から血が吸われていった。クロエの身体に、得も言われぬ快感が巡る。
「んっ……! あ……っ! ふっ、うぅん……!」
唇を噛んで、口から漏れ出そうになる嬌声を何とか堪えた。それでも少し漏れ出てしまっている。それほどまでに吸血族《ヴァンパイア》の吸血は、吸われるものに快感を与えるものだった。背後のサラはそんなクロエの痴態に顔を背けている。
「ん、ごちそうさま……。」
「んぁ……? お、終っひゃ……? ひっ!」
エリーがクロエの首筋から口を離した。そして傷口をぺろぺろと舐める。すると首筋の傷がきれいに塞がってしまった。
「クロエ、ちょっと離れてて。」
クロエを少し遠ざけるエリー。クロエはのっそりとした動作でエリーから距離を取った。エリーは軽快な動作で立ち上がると、両腕に力を込めるような体勢を取った。すると次の瞬間、左右の斬り落とされた腕の断面が爆発するかのように真っ赤な飛沫が破裂した。両腕の断面から血しぶきがほとばしる。その血しぶきはエリーの両腕位の長さまでで停止すると、まるで映像の逆再生のように腕になっていった。
「よっし、問題ないわね。ありがと、クロエ。助かったわ。」
「そ、そう? 助けになってよかったよ……。」
クロエも意識がはっきりしたようで、先ほどの自分の状態を思い返して顔を赤くさせていた。それを見たエリーもまた頬を紅潮させる。
「え、えぇと、そっちの問題は解決したのよね!?」
エリーが恥ずかしさをごまかすかのように声を上げた。頬が赤い。それは先ほどのクロエの痴態もあるだろうが、どうやらそれだけではないようだ。
「司祭の問題については解決しました。咎落した司祭はクロエさんの攻撃で消滅です。」
ミーナの返答にエリーが何かを思い出したような表情になる。
「さっき、アイツも言ってたあの魔力砲よね。クロエ、あれアンタが撃ったって本当なの?」
「え? あぁ、うん。そうだよ。」
「クロエさん、先ほどは聞きそびれてしまいましたが、先ほどの姿は一体……?」
サラが尋ねた。クロエはその問いに答えようと口を開く。しかし、その時不意に意識が揺らいだ。そしてその座った体勢から崩れ落ち、そのまま気絶してしまった。
「え、ク、クロエさん!?」
サラが駆け寄りクロエを抱き起した。気絶しているだけのようで呼吸も脈もある。その事実にサラは安堵の息を吐いた。
「たぶん、もともと限界だったところにアタシが血を吸ったことで気を失ったのね。死にはしないだろうけど……」
エリーも心配そうにクロエの顔を覗き込んだ。生えたての腕でクロエの髪を撫でる。
「では、私は今回の事件の証拠を見つけに行きます。エリー様、ご協力願えますか?」
ミーナが立ち上がり言った。その言葉にエリーも立ち上がるが、首をかしげて問いかける。
「良いけど、何か当てはあるの? いまからここを全部探してる暇なんてないわよ。早く脱出しなくちゃ。」
「司祭が今回の黒幕だった以上、何かしらの証拠が司祭の部屋などにあるはずです。それに準じる物でもあれば、それで十分です。エリー様には分身していただいて、探すのを手伝ってもらいたいのです。お願いできますでしょうか?」
「ん、分かったわ。サラ、クロエを頼んだわよ。」
サラが頷いた。それを見たミーナとエリーが動き出す。ミーナはそのまま走り出し、大講堂から出て二階へ走って行った。ミーナはその場でコウモリに変身し、各所に散らばる。
数分の後、二階の部屋を探索していたミーナの下に一匹のコウモリが飛んできた。コウモリはミーナの頭にしがみ付くと、口を開いて話し始める。
『聞こえる? 三階の部屋で司祭の部屋を見つけたわ。案内するから付いて来て。』
「分かりました、お願いします。」
ミーナがコウモリの案内に従って大聖堂を進んだ。そして問題の部屋へたどり着く。司祭の部屋は周囲と変わりのない、普通の扉だった。一目見て司祭と言う立場の者が使う部屋とは思えにくい。
ドアノブをひねり中へ入る。中にはすでにエリーの姿があった。ミーナの頭のコウモリがミーナから離れエリーに吸収される。
「お待たせいたしました。」
「無理するんじゃないわよ? アタシは回復したけど、アンタ達はボロボロじゃない。」
「回復薬《ポーション》は使い切ってしまいましたからね。お気遣い痛み入ります。」
「ま、アンタが大丈夫って言うならそれ以上言わないわよ。で、多分これなんか証拠になるんじゃない?」
エリーが机の上にある本の中から一冊を取り出した。そしてそれをミーナに手渡す。表紙に何も書かれていない、とてもシンプルな一冊の本だった。しかし鍵が付いている。
ミーナは【パンドラ】を展開すると、中から不思議な形状の刃物のような物を取り出した。細長い形状である。ミーナはそれをおもむろに本の鍵穴に突っ込むと、ガチャガチャと回し始めた。すぐにカチャリと言う音が鳴り、鍵は外れる。
「何よその道具……」
「メイドには、時に必要になる道具です。さて、中身は……」
ミーナが表紙をめくった。中表紙が二人の目に入る。そこにはシンプルな文字でただ一言、「日記」と書かれていた。
ミーナがパラパラとページを流し始めた。エリーは初めから読む気がないようで、ページを送るミーナを眺めていた。一分ほどでミーナはページを送り終えた。満足そうに頷いて本を【パンドラ】にしまう。
「え、もう読み終わったの?」
「はい、速読はメイドの基本ですから。この程度なら簡単なものですよ。」
「あ、そう。で、証拠は見つかった?」
「はい、この日記にしっかりと記されておりました。今回の事の経緯、そしてその過程。正直、これを読んでしまうと司祭に同情を禁じえません。長く生きていても、死別と言う物は慣れない物です。」
ミーナの言葉にエリーが自身の頭を掻いた。そして扉をあけて外に出ると、振り返らないままでミーナに言葉をかける。
「アタシも吸血族《ヴァンパイア》だからね、少しはその気持ちも分かるわよ。でも、いちいち同情してたらキリがない。でしょ?」
「仰る通りです……。参りましょうか、早く脱出しましょう。」
ミーナはエリーの後を追って部屋を出た。不意に振り向いて部屋の中を見る。何かの気配を感じ取ったらしい。動きを止めたミーナを不審に思い、エリーが声をかけた。
「……? 何してるのよ、早く行きましょ。」
「はい、そうですね……。」
ミーナはエリーにそう言葉を返した。部屋の中を少しだけ見つめると、部屋の角へ向けて深々と頭を下げる。そして、声に出さず口の身を動かして言葉を送った。「どうか、やすらかに。」と。
部屋の隅で、少女ぐらいの影が動いたような気がした。
―続く―
「覚えておきなさい! アタシ達は『パンデモニウム』! あなた達凡人みたいなつまらない存在とは一線を画す逸脱種《フリンジ》の集団よ! これから世界中で遊んであげる、覚悟しなさい! アハハハッ!」
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「エリー! 大丈夫? 返事して!」
クロエの呼びかけに、エリーはゆっくりとした動作で瞼を開いた。そして力ない声で返事を返す。
「……何よ、別に死にやしないわ。流石にダメージ受けすぎたし、少し、休ませて……」
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しかしすぐにその痛みは消えた。不思議な位に一瞬で。そしてすぐにその傷口から血が吸われていった。クロエの身体に、得も言われぬ快感が巡る。
「んっ……! あ……っ! ふっ、うぅん……!」
唇を噛んで、口から漏れ出そうになる嬌声を何とか堪えた。それでも少し漏れ出てしまっている。それほどまでに吸血族《ヴァンパイア》の吸血は、吸われるものに快感を与えるものだった。背後のサラはそんなクロエの痴態に顔を背けている。
「ん、ごちそうさま……。」
「んぁ……? お、終っひゃ……? ひっ!」
エリーがクロエの首筋から口を離した。そして傷口をぺろぺろと舐める。すると首筋の傷がきれいに塞がってしまった。
「クロエ、ちょっと離れてて。」
クロエを少し遠ざけるエリー。クロエはのっそりとした動作でエリーから距離を取った。エリーは軽快な動作で立ち上がると、両腕に力を込めるような体勢を取った。すると次の瞬間、左右の斬り落とされた腕の断面が爆発するかのように真っ赤な飛沫が破裂した。両腕の断面から血しぶきがほとばしる。その血しぶきはエリーの両腕位の長さまでで停止すると、まるで映像の逆再生のように腕になっていった。
「よっし、問題ないわね。ありがと、クロエ。助かったわ。」
「そ、そう? 助けになってよかったよ……。」
クロエも意識がはっきりしたようで、先ほどの自分の状態を思い返して顔を赤くさせていた。それを見たエリーもまた頬を紅潮させる。
「え、えぇと、そっちの問題は解決したのよね!?」
エリーが恥ずかしさをごまかすかのように声を上げた。頬が赤い。それは先ほどのクロエの痴態もあるだろうが、どうやらそれだけではないようだ。
「司祭の問題については解決しました。咎落した司祭はクロエさんの攻撃で消滅です。」
ミーナの返答にエリーが何かを思い出したような表情になる。
「さっき、アイツも言ってたあの魔力砲よね。クロエ、あれアンタが撃ったって本当なの?」
「え? あぁ、うん。そうだよ。」
「クロエさん、先ほどは聞きそびれてしまいましたが、先ほどの姿は一体……?」
サラが尋ねた。クロエはその問いに答えようと口を開く。しかし、その時不意に意識が揺らいだ。そしてその座った体勢から崩れ落ち、そのまま気絶してしまった。
「え、ク、クロエさん!?」
サラが駆け寄りクロエを抱き起した。気絶しているだけのようで呼吸も脈もある。その事実にサラは安堵の息を吐いた。
「たぶん、もともと限界だったところにアタシが血を吸ったことで気を失ったのね。死にはしないだろうけど……」
エリーも心配そうにクロエの顔を覗き込んだ。生えたての腕でクロエの髪を撫でる。
「では、私は今回の事件の証拠を見つけに行きます。エリー様、ご協力願えますか?」
ミーナが立ち上がり言った。その言葉にエリーも立ち上がるが、首をかしげて問いかける。
「良いけど、何か当てはあるの? いまからここを全部探してる暇なんてないわよ。早く脱出しなくちゃ。」
「司祭が今回の黒幕だった以上、何かしらの証拠が司祭の部屋などにあるはずです。それに準じる物でもあれば、それで十分です。エリー様には分身していただいて、探すのを手伝ってもらいたいのです。お願いできますでしょうか?」
「ん、分かったわ。サラ、クロエを頼んだわよ。」
サラが頷いた。それを見たミーナとエリーが動き出す。ミーナはそのまま走り出し、大講堂から出て二階へ走って行った。ミーナはその場でコウモリに変身し、各所に散らばる。
数分の後、二階の部屋を探索していたミーナの下に一匹のコウモリが飛んできた。コウモリはミーナの頭にしがみ付くと、口を開いて話し始める。
『聞こえる? 三階の部屋で司祭の部屋を見つけたわ。案内するから付いて来て。』
「分かりました、お願いします。」
ミーナがコウモリの案内に従って大聖堂を進んだ。そして問題の部屋へたどり着く。司祭の部屋は周囲と変わりのない、普通の扉だった。一目見て司祭と言う立場の者が使う部屋とは思えにくい。
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「お待たせいたしました。」
「無理するんじゃないわよ? アタシは回復したけど、アンタ達はボロボロじゃない。」
「回復薬《ポーション》は使い切ってしまいましたからね。お気遣い痛み入ります。」
「ま、アンタが大丈夫って言うならそれ以上言わないわよ。で、多分これなんか証拠になるんじゃない?」
エリーが机の上にある本の中から一冊を取り出した。そしてそれをミーナに手渡す。表紙に何も書かれていない、とてもシンプルな一冊の本だった。しかし鍵が付いている。
ミーナは【パンドラ】を展開すると、中から不思議な形状の刃物のような物を取り出した。細長い形状である。ミーナはそれをおもむろに本の鍵穴に突っ込むと、ガチャガチャと回し始めた。すぐにカチャリと言う音が鳴り、鍵は外れる。
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ミーナがパラパラとページを流し始めた。エリーは初めから読む気がないようで、ページを送るミーナを眺めていた。一分ほどでミーナはページを送り終えた。満足そうに頷いて本を【パンドラ】にしまう。
「え、もう読み終わったの?」
「はい、速読はメイドの基本ですから。この程度なら簡単なものですよ。」
「あ、そう。で、証拠は見つかった?」
「はい、この日記にしっかりと記されておりました。今回の事の経緯、そしてその過程。正直、これを読んでしまうと司祭に同情を禁じえません。長く生きていても、死別と言う物は慣れない物です。」
ミーナの言葉にエリーが自身の頭を掻いた。そして扉をあけて外に出ると、振り返らないままでミーナに言葉をかける。
「アタシも吸血族《ヴァンパイア》だからね、少しはその気持ちも分かるわよ。でも、いちいち同情してたらキリがない。でしょ?」
「仰る通りです……。参りましょうか、早く脱出しましょう。」
ミーナはエリーの後を追って部屋を出た。不意に振り向いて部屋の中を見る。何かの気配を感じ取ったらしい。動きを止めたミーナを不審に思い、エリーが声をかけた。
「……? 何してるのよ、早く行きましょ。」
「はい、そうですね……。」
ミーナはエリーにそう言葉を返した。部屋の中を少しだけ見つめると、部屋の角へ向けて深々と頭を下げる。そして、声に出さず口の身を動かして言葉を送った。「どうか、やすらかに。」と。
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