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煙草と憂鬱と少女
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肺いっぱいに鬱を吸い込んだ。慌てるな。目に映ってはいないのだ。僕は煙草を消して、震える右手を一度見た。えらく小さく見える。それから滑稽にも見える。そして人差し指と中指を僕の顔中央に近づけ、どれ、一つ嗅いでみた。やはり。憂鬱の匂いがする。僕は一度ふっと笑った。そしてひどく落ち込み、また軽い頭を下に垂らした。雨上がり。アスファルト溶けた恐ろしく醜い匂いが僕の穴という穴に入り込んできた。成すすべなど無い。僕は仕方なしにまた煙草を一本取り出し、シワを伸ばし、口に咥え、百円ライターの起爆スイッチを押し、咥えた煙草の先頭に近づけた。ジジ。ジジ。と哀れなハイライトの断末魔が小気味良く聞こえ、僕はまた重たい頭を上げた。目の前をぼうっと見つめていると、視界に、小さな生き物が物凄いスピードで通り過ぎていくのを感じた。気だるく振り返り見てみると、近所に住んでいるのだろう少女が小さな自転車に乗って風を切り、切り、必死にペダル蹴っていた。僕は虚ろな目でそれを追い、彼女が曲がり角を注意深く曲がり、姿を消していくのを待った。死にたいほどの自己嫌悪が少し消えたように思えた。そして、また煙草を一つ吸いこんだ。するとまた憂鬱という二つの文字が頭に浮かんできたのだ。僕は、ため息だけは吐かまいと堪えていたのだが、白濁とした大量の煙を吐くのと同時にため息が少しだけ、混じってしまった。何とも情けない。ここ数年、僕は被害妄想の虜になってしまっていたようだ。何とも、それは、皮肉であり、僕を苛立たせる思考であり、何よりも低脳な病である。今さっき通り過ぎていった女子。彼女が早足でペダルを蹴り飛ばしていたのは、道の端っこに座り込み、あぐらをかき、左の肘を腿に乗せ、掌で顔を支え、死んだ魚の目をした煙お化けの僕を恐れていたからであろう。いや、しかし、これはあながち被害妄想ではないのかもしれない。誰であろうとこんな醜態を人に見せる事は避けたいものである。女子よ。悪い事をした。清く生きてください。もう、煙草は、辞めます。
憂鬱も、辞めます。気分は、暖かいです。
憂鬱も、辞めます。気分は、暖かいです。
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