酒気帯び詩集

瀧山 歩ら歩ら

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詩人の人生(コラム)

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この世に詩人と呼ばれている人は何人いるだろうか。
まあ、何人なんて正直何人でもいい。このインターネットが普及して、外では携帯とにらめっこをしてなきゃどこを見ていいか分からん人間がうろついてる世の中で、詩人と呼ばれる人間がいるのかどうか。まあおそらく、詩人なんてみんな自称だ。ナルシスト。もし詩人と呼ばれている人間がいても俺にとっては違う場合がある。
そこで俺が思うに、人間は幸せな時に詩なんて書かないだろう。人間がわざわざ詩を書くときは、不幸な時あるいはどちらでも無いときだと俺は思う。それはあくまで俺の経験上の話。わざわざ詩を書くことによってこんがらがった自分の頭をヒモほどいて整理している。整理した気になる。俺の場合、それを読み返す事はほとんどない。書くことによって今ある悲劇は言葉によって喜劇になる。一度書いたものを読み返すと、せっかく喜劇になった悲劇が台無しになってしまう。生きている限り、また次の、また次の悲劇がやってくる。もちろんこれは物書きの立場として言っている。日常では悲劇ばかりではない。些細な幸せは必ず定期的にみんな平等にやってくる。素晴らしい音楽を聴いた時。酒を飲んだとき。眠りについた時。うまい飯にありつけた時。セックスができた時。素晴らしい景色を見た時。人に優しくされた時。日常に人それぞれ平等な幸せがやってくる。しかしそんな時に詩なんて書こうと思うだろうか。ここで一つ言っておきたいのはSNSで吐き出された言葉は詩でもなんでもないということ。あれが詩であるならもう物書きという職業はなくなり、美しいメロディが奏でられるやつしかうまい飯を食えないだろう。まあ、詩人という言葉が死語であるということもまた事実。だから今生きていて詩人という言葉が聞こえてこないんだろう。もしかしたら詩人という意味の違う言葉があって、それがそこら中で、日常会話の端っこで使われているのかもしれないが少なくとも俺にはまだ聞こえてきていない。さっきのSNSの話に戻ると(まあ俺はあんまりこの話は好きではないけど、、、)自分の日常を異常なまでに頻繁につぶやく自称アーティストがいる。何を食べたか、何時に寝たか、今日何があったか、どんなタバコに銘柄を変えたか。中には自分の恋人の事について簡潔に、頻繁につぶやく自称アーティストがいる。とても悲しい事と俺は思った。あまりに呟きすぎる事でその人の作品がどれほど薄く浅いものになってしまっているか。要するにもうそれで満足してしまう。その人の作品を見たり聞いたりしても、もうあんたのことは充分だよ。ってなってしまう。「秘すれば花」ということわざがあるが全くその通りで、その作品を初めて見た時にどれだけその作者に心を動かされるかが重要だと俺は思う。俺の好きな詩人(俺が彼を勝手に詩人と言っているが彼はバンドマンのシンガーソングライターだ。かなり最高なロックンロールバンドだけど経済的成功はしていない。)はどれだけ調べてもネット上には生きていなかった。唯一彼の事を知れるのはライブに行ってステージ終わりのバーカウンターで話すときか、CDで彼の曲を聴いてる時だけだった。俺の心はしだいに彼の虜になっていた。こんなに良い関係があるだろうか。それを知っていて無駄に自分の価値観を吐き捨てるやつはいない。もしもボブディランがツイッター依存だったら俺は彼の曲については考えないだろう。
とにかく、詩人はおとなしく不幸を噛み締めてはその事に深く考えもせず書き続けるのが幸せだろう。
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