自然魔力とアルモニーア

セツ

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壊れた日常

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 外から早く出てこいと催促してくる声を聞き、ニケがスズリナに詰め寄った。

「スーナがうさぎでグズるからデス!」

「まぁまぁ、お腹空いてたんだもん!そんな怒らないで。」

 スズリナは笑いながらニケをなだめると、すっと気持ちを切り替えた。

「ニケとりあえず肩に。」

 スズリナの雰囲気が変わった事を察するとニケは大人しくスズリナの肩に飛び乗った。ニケが肩に乗るのを確認すると、スズリナは堂々と玄関の扉を開け外に出た。

 外には1人の美青年が立っていた。スズリナは視線だけ動かし周りを見渡すがぱっと見えるところには人の姿はなかった。しかし、木々や草に隠れ家の周りを囲むようにして息を殺している多くの人の気配は感じる事が出来ていた。

 スズリナは改めて青年に視線を戻し青年の顔を確認する。何故かスズリナはその顔を見て気に食わない、そう感じていた。

「出てきて下さり、ありがとうございます。私の名はアドルフ・イェスタング。国王直下騎士団の団長を務めております。…スズリナ・スウェルさんですね?」

 ニコニコと話しかけてくるアドルフにスズリナは短くこたえる。

「人違いでは?」

 そんなスズリナの答えに笑顔を崩さないままアドルフは続けた。

「ご冗談を。先程の呼び掛けに答えて出てきてくれたではありませんか。」

「家の外であんな大きな声で叫んでいれば気になるに決まっているじゃないですか。」

 スズリナはすっとぼける事で少しでも相手の目的を探ろうとしていた。それを理解したニケも肩の上で静かにしていた。

「おとぼけを、スズリナ・スウェルさんで間違いないはずです。こちらで事前にきちんと調べさせてもらいましたので。」

 調べると言う言葉にスズリナは内心ではヒヤリとしていたが、表情には出さずアドルフの出方を見続けた。

 アドルフもスズリナからなんの反応も返ってこない様子にため息を1つつくとそれでも笑顔を崩さず話を続けた。

「この短時間で嫌われてしまいましたかね?、それでもまぁ、一緒に来てもらわなければ行けないんですけどね。」

 完璧な笑顔で言い切ったアドルフに、さらに完璧な笑顔でスズリナは返す。

「お断りします。突然やってきたことを怒ってる訳では無いんだけど、突然来てハイソーデスカってついて行くわけないでしょ。まぁ、突然じゃなかったとしてもついて行く気ないけど。」

 肩の上でニケがうさぎの恨み絶対入ってるデスとボソッと呟いてきたが、スズリナは聞こえていないフリをした。

「国王の命令です。あなたに拒否権はありま、、

「拒否します。」

 アドルフの問に被せるようにスズリナが素早く返す。 

 アドルフは思いため息を着くとやれやれと肩をすくめた。

「国王の命令ですからね、仕方がありません。貴方を、氷の革命者(レポリタン)を強引にでも連れていきます。」

 革命者(レポリタン)の言葉を聞いた瞬間スズリナは一瞬目を見開き、すぐにアドルフを睨みつけた。

「よけいに、行けなくなったわ。この力を知って求めてくる輩なんて絶対信用出来ない!」

 そういうや否やスズリナはアドルフに向かい走り出し腰につっていた双剣を抜いた。 アドルフも素早くレイピアを抜き腰を落としてスズリナが間合いに入るのを待った。

 それでもスズリナは構わずアドルフに向かい突っ込んで行った。

 スズリナがアドルフの間合いに入る次の瞬間、そのギリギリ手前でスズリナの体はアドルフの上を飛び越え近くの木の枝の上に立っていた。

「なっ!?」

 アドルフは驚愕に目を見開いた。近くと言っても10mも離れた木の上に飛んだのだ。その上スズリナの向かってくる姿勢は剣を振り下ろす体勢だったため、アドルフを飛び越えることは無理だったからだ。

 驚いていたのはスズリナも同じだった。アドルフを倒そうと剣を振り下ろそうとした時ニケのツルの1つがスズリナの胴体に巻きついた。その後新たにニケは2つのツルを素早く出すと、地面を叩き木の枝まで飛んでいたのだ。

「スズリナ、冷静になるデス。革命者(レポリタン)である事が知られている以上逃げるの選択のみデス!」

 そこで頭の血が一気に下がったスズリナは周りの様子を見渡し、木々の中に静かに姿を消した。




4話  fin
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