1 / 7
プロローグ1
しおりを挟むあの時私の意識は深い海の底に沈んでいった。
蝉の声がアスファルトに反射し、辺り一面響き渡る。そんな真夏の木漏れ日が差し込む道路を私は汗を垂らしながらもくもくと歩いていた。
「だいちゃん⋯絶対許さないんだから⋯」
寺戸大輔ことだいちゃんは私の幼なじみ兼恋人である。去年の夏、玉砕覚悟でかました告白から1年見事にお互い仲良く続いている。
たが、私は今怒っている。かなり怒っている。
私とだいちゃんは同じ地元の高校に一緒に自転車で通っている。今は夏休みだが、野球部に所属している私たちはいつも通り学校のグランドに向かっている。
私たちは高校2年生で、私のマネージャー仕事も板についてきた。だいちゃんは2年生ながら持ち前の足の速さとバッティング能力の高さを監督に認められレギュラーに抜擢されている。
そんな私たちは次の試合に向けて練習を行う為に学校に向かっているわけではあるが…
私が怒ってるのはだいちゃんが私を置いて行ってしまったからだ。
今日も普段通り自転車を使うつもりだったのだが、私の自転車が昨日パンクしてくれたためだいちゃんの自転車の後ろに乗せてもらうはずだった。
「昨日スマホで連絡した時乗せてってくれるって言ったのに!」
溢れる怒りをそのまま素直に口に出していく。
しかしその声は虚しくも蝉たちによってかき消されたいるのだが…
ため息をつきながら歩くとやがて学校まで一直線の道にでた。その道は片側が海に面しており、気持ちのいい海風が私の頬をなでる。
風に私の中の怒りも少しは飛ばされたのか少し心に余裕ができた。
「まぁ、集合時間にはギリギリ間に合うし、いっか。どうせだいちゃんの事だから朝寝ぼけていつも通り学校行っちゃったんだろうな…」
飽きれた思いを持ちつつ、後でアイスでも奢らせようと心に決め残りの学校までの道のりを一気に駆けていった。
私の横目では海が太陽の光を反射しいつも以上にきらめいてみえた。
そんな毎日のようにみていた海によって私の運命が変わるのはもうすぐの事だった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
2
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる