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29話
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時は少し遡る。
講義棟の陰にある植え込みの前。夕陽が沈みかけ、キャンパスの裏門は人通りがほとんど絶えていた。
女子三人の笑い声が、あたりの静けさに不気味なほど浮かび上がる。
「ねぇ、今日飲みに行こうよ」
軽い声で言ったのはヘアピンの女性だ。
「それなら——せっかくだし、あの渡辺を誘おうよ」
緋褪色の髪の女性が唇を吊り上げるように笑う。
「いいね、それ」
ボブカットの女性が、目を細めた。
そういう“計画”のもと、彼女らは裏門へ向かった。
⸻
少し経った後
人気のない裏門近くの通路を、渡辺は鞄を肩に掛けて帰路についていた。
「ねえねえ、渡辺くん……だっけ?」
緋褪色の女性が、道を塞ぐように歩み寄ってきた。
「えっ……なんで、俺の名前を?」
「何言ってるのよ。ここじゃ有名よ、あなたのこと。」
その言葉に、渡辺は心の奥がざわめくのを感じた。
——有名? 自分が? 理由がまったく思いつかない。
驚く渡辺の前で、緋褪色の女性が一歩踏み込む。
「だからさ。よかったら、一緒に**飲みに行きたいな~**って」
声は甘く、しかしその目の奥はどこか冷たかった。
「い、いや……そう言われても……」
渡辺は後ずさる。
距離を詰められると、空気が厚くなる。逃げ道がふさがれていく。
「えぇ~? こんな可愛い女の子三人からのお誘いなんて、なかなか無いよ?」
ヘアピンの女性が、からかうように言った。
だが渡辺は、苦い顔のまま首を振った。
「悪いけど……そういうの、興味ないんだ。ほんとにごめん」
三人の笑顔が、わずかに歪んだ。
“断られた”という色が、はっきりと浮かぶ。
次の瞬間。
「……ふぅん、そうなんだ?」
緋褪色の女性の手が、急に渡辺の腕を強くつかんだ。
「え、なっ——!?」
「でも私、こういうのも できちゃうんだよ?」
緋褪色の女性は渡辺の腕を掴み、
そのまま――自分の胸へ 押し当てた。
「!???」
渡辺の顔が真っ赤になり、声が裏返る。
「ちょ、ちょっ……!? な、なん――」
「ねぇ、どう? 私……こんなに立派なの」
緋褪色の女性は自分の胸に渡辺を押しつけながら、くすっと笑った。
「こんなことだって、好きに出来るのよ?」
「ま、待って、やめっ……!」
渡辺の額に汗が滲む。
「ほら、わかる?」
緋褪色の女性の声が、首元でくぐもって聞こえた。
そのとき——
カシャッ。
乾いたシャッター音が空気を裂いた。
「……え?」
振り向こうとすると、ボブカットの女性がスマホを掲げていた。
その顔には、あからさまな嘲笑が浮かんでいる。
「ねぇ……これ、どう見ても渡辺くんが胸触ってるように見えるよね?」
彼女は画面を向けてきた。
「ちょ、ちがっ……! 俺は触ってなんか——!」
「でも、写真ってさぁ」
ボブカットの女性は肩をすくめてみせる。
「言い訳より“見える形の証拠”が優先されちゃうんだよね。」
「そーだよ?」
ヘアピンの女性がにじり寄る。
「もしこの写真、警察に見せたらどうなるんだろうねぇ? “女子の胸を触った男”って」
「なっ……! 俺は、俺はそんなこと——!」
「でもね?」
緋褪色の女性が耳元でささやく。
「この状況を見て、あなたの言い分を信じてくれる人……いると思う?」
渡辺の喉が乾く。
足がすくむ。
三人に囲まれ、逃げ場はどこにも無い。
——完全に“追い詰められている”。
シャッター音が耳の奥で何度も反響する。
渡辺の鼓動は早まり、呼吸が浅くなる。
状況を把握しようとするほど、足元の地面が揺らいでいく錯覚に襲われた。
「……返して、その写真……消してくれ……」
渡辺は震える声で言う。
ボブカットの女性は眉一つ動かさず、口角だけをゆっくり吊り上げた。
「ん~? どうしよっかなあ。ねえ、二人はどう思う?」
「消さなくていいんじゃない?」
ヘアピンの女性が嘲るように言う。
「こういうの、大事にしたほうがいい思い出になるし?」
「ていうかさ」
緋褪色の女性が渡辺の腕を離す代わりに、服の胸元をつまんで引き寄せる。
距離はほとんどゼロ。
渡辺の背中は自然と後ろへ反るが、彼女はさらに一歩詰める。
「“ちょっと優しくすれば落とせる男”かと思ったけど……違うんだね。」
吐息が生温く頬にかかる。
渡辺は、喉がひりつくほどに息を呑んだ。
「や、やめてくれ……。俺、無理やりなんてしてない……!」
「でも。写真にはそう写ってる」
ボブカットの女性がスマホをひらひらと振る。
画面には——顔を真っ赤にしながら女性の胸に押しつけられている渡辺が映っている。
角度のせいで、あたかも自分から抱きついているように見える。
「……や……だ……こんなの……」
渡辺の声は掠れていた。
「ほら見てよ、これこのままSNSに上げてもバズりそうじゃない?」
彼女はクスッと笑う。
「“清純系の渡辺くん、裏でとんでもないことしてました”ってね」
ヘアピンの女性は、さらに近づき渡辺の頬を軽くつついた。
渡辺は一歩後ずさるが——
背中が壁に当たった。
逃げ道は完全に塞がれたことを悟る。
「ねえ渡辺くん」
緋褪色の女性が、背後の壁に手を置いて渡辺を囲う。いわゆる“壁ドン”の体勢だ。
影が覆いかぶさり、光が遮られる。
「もうちょっと素直になったら? 私たち、あなたを困らせたいわけじゃないんだよ?」
その言い方が逆に、底冷えするような恐怖を生んだ。
「……困らせてるじゃないか……!」
渡辺はうつむき、拳を震わせた。
「困らせて“ないよ”?」
緋褪色の女性の瞳は笑っていない。
「だって、あなたがちょっと“協力”してくれれば、何の問題も起きないんだから」
「“協力”って……何を……」
「さあ?」
ボブカットの女性がニヤついた声で返す。
「まずは一緒に来てくれるだけでいいよ。ね?」
「裏門から出た先に、誰も来ない場所があるの。話すなら人目のないところがいいよね?」
ヘアピンの女性が腕を組みながら言う。
「ちょ……待ってくれ、本当にやめてくれ……!」
しかし三人は、まるで逃げる小動物を追い詰める捕食者のようにじりじりと距離を詰め続けた。
渡辺の脳裏に浮かぶのは、
——逃げ場がない。
——信じてもらえない。
——終わりだ。
そんな絶望の言葉ばかりだった。
その時
「……渡辺。
一体、何があったんだ?」
さっきまで裏門で聞こえていたざわめきが、嘘のように沈黙へと変わる。
その中心に立つ明石は、状況が飲み込めず眉を寄せた。
そして、今——。
緋褪色の髪を揺らした彼女が、一歩前に出た。
怯えたような震え声……だが、どこか芝居じみている。
「こ、怖かったよ……ほんとに……」
肩をすくめ、胸元を押さえ、明らかに“演技”とわかる仕草。
明石は短く息を吐いた。
そして、慎重に言葉を選びながら口を開く。
「その……彼がそんなことをするわけないだろ。
渡辺は小心者だ。女性に触れるような真似なんて、まずしない。
その写真だって……どうせ“それっぽく撮った”だけじゃないのか?」
瞬間、空気が弾ける。
「……はぁ? なんですって?」
緋褪色の女性の目が吊り上がり、抑えていた怒気が噴き出した。
隣でヘアピンの女性が腕を組み、冷ややかに言い放つ。
「じゃあ証拠を出しなさいよ。
言うからには、あるんでしょ?」
明石は一瞬だけ視線を泳がせたが、スマホを取り出そうとした——
その時。
「——何をしているんだ?」
鋭い声が、背後の別方向から飛び込んできた。
全員が振り返る。
そこには制服姿の女性警官、影野と盛岡が立っていた。
二人の視線は冷たく、状況を把握しようと周囲を見渡している。
緋褪色の女性は、待ってましたと言わんばかりの表情で警官の前へ出た。
「実は……その……あの男たちに、乱暴なことをされたんです……」
声も震え、涙まで浮かべている。
(こいつ……私を“追加”しやがったな)
明石は心の奥で舌打ちした。
緋褪色の女性の芝居がかった訴えを聞きながら、明石は内心で低く唸った。
渡辺だけでなく、自分まで加害者側に混ぜるような口ぶり。
その意図があまりに露骨で、胃の奥がずん、と重くなる。
だが次の瞬間——。
「動かないで。」
冷えた声が空気を切り裂いた。
影野警官が一歩前へ進み、ためらいもなく緋褪色の女性の腕を掴んだ。
そして
講義棟の陰にある植え込みの前。夕陽が沈みかけ、キャンパスの裏門は人通りがほとんど絶えていた。
女子三人の笑い声が、あたりの静けさに不気味なほど浮かび上がる。
「ねぇ、今日飲みに行こうよ」
軽い声で言ったのはヘアピンの女性だ。
「それなら——せっかくだし、あの渡辺を誘おうよ」
緋褪色の髪の女性が唇を吊り上げるように笑う。
「いいね、それ」
ボブカットの女性が、目を細めた。
そういう“計画”のもと、彼女らは裏門へ向かった。
⸻
少し経った後
人気のない裏門近くの通路を、渡辺は鞄を肩に掛けて帰路についていた。
「ねえねえ、渡辺くん……だっけ?」
緋褪色の女性が、道を塞ぐように歩み寄ってきた。
「えっ……なんで、俺の名前を?」
「何言ってるのよ。ここじゃ有名よ、あなたのこと。」
その言葉に、渡辺は心の奥がざわめくのを感じた。
——有名? 自分が? 理由がまったく思いつかない。
驚く渡辺の前で、緋褪色の女性が一歩踏み込む。
「だからさ。よかったら、一緒に**飲みに行きたいな~**って」
声は甘く、しかしその目の奥はどこか冷たかった。
「い、いや……そう言われても……」
渡辺は後ずさる。
距離を詰められると、空気が厚くなる。逃げ道がふさがれていく。
「えぇ~? こんな可愛い女の子三人からのお誘いなんて、なかなか無いよ?」
ヘアピンの女性が、からかうように言った。
だが渡辺は、苦い顔のまま首を振った。
「悪いけど……そういうの、興味ないんだ。ほんとにごめん」
三人の笑顔が、わずかに歪んだ。
“断られた”という色が、はっきりと浮かぶ。
次の瞬間。
「……ふぅん、そうなんだ?」
緋褪色の女性の手が、急に渡辺の腕を強くつかんだ。
「え、なっ——!?」
「でも私、こういうのも できちゃうんだよ?」
緋褪色の女性は渡辺の腕を掴み、
そのまま――自分の胸へ 押し当てた。
「!???」
渡辺の顔が真っ赤になり、声が裏返る。
「ちょ、ちょっ……!? な、なん――」
「ねぇ、どう? 私……こんなに立派なの」
緋褪色の女性は自分の胸に渡辺を押しつけながら、くすっと笑った。
「こんなことだって、好きに出来るのよ?」
「ま、待って、やめっ……!」
渡辺の額に汗が滲む。
「ほら、わかる?」
緋褪色の女性の声が、首元でくぐもって聞こえた。
そのとき——
カシャッ。
乾いたシャッター音が空気を裂いた。
「……え?」
振り向こうとすると、ボブカットの女性がスマホを掲げていた。
その顔には、あからさまな嘲笑が浮かんでいる。
「ねぇ……これ、どう見ても渡辺くんが胸触ってるように見えるよね?」
彼女は画面を向けてきた。
「ちょ、ちがっ……! 俺は触ってなんか——!」
「でも、写真ってさぁ」
ボブカットの女性は肩をすくめてみせる。
「言い訳より“見える形の証拠”が優先されちゃうんだよね。」
「そーだよ?」
ヘアピンの女性がにじり寄る。
「もしこの写真、警察に見せたらどうなるんだろうねぇ? “女子の胸を触った男”って」
「なっ……! 俺は、俺はそんなこと——!」
「でもね?」
緋褪色の女性が耳元でささやく。
「この状況を見て、あなたの言い分を信じてくれる人……いると思う?」
渡辺の喉が乾く。
足がすくむ。
三人に囲まれ、逃げ場はどこにも無い。
——完全に“追い詰められている”。
シャッター音が耳の奥で何度も反響する。
渡辺の鼓動は早まり、呼吸が浅くなる。
状況を把握しようとするほど、足元の地面が揺らいでいく錯覚に襲われた。
「……返して、その写真……消してくれ……」
渡辺は震える声で言う。
ボブカットの女性は眉一つ動かさず、口角だけをゆっくり吊り上げた。
「ん~? どうしよっかなあ。ねえ、二人はどう思う?」
「消さなくていいんじゃない?」
ヘアピンの女性が嘲るように言う。
「こういうの、大事にしたほうがいい思い出になるし?」
「ていうかさ」
緋褪色の女性が渡辺の腕を離す代わりに、服の胸元をつまんで引き寄せる。
距離はほとんどゼロ。
渡辺の背中は自然と後ろへ反るが、彼女はさらに一歩詰める。
「“ちょっと優しくすれば落とせる男”かと思ったけど……違うんだね。」
吐息が生温く頬にかかる。
渡辺は、喉がひりつくほどに息を呑んだ。
「や、やめてくれ……。俺、無理やりなんてしてない……!」
「でも。写真にはそう写ってる」
ボブカットの女性がスマホをひらひらと振る。
画面には——顔を真っ赤にしながら女性の胸に押しつけられている渡辺が映っている。
角度のせいで、あたかも自分から抱きついているように見える。
「……や……だ……こんなの……」
渡辺の声は掠れていた。
「ほら見てよ、これこのままSNSに上げてもバズりそうじゃない?」
彼女はクスッと笑う。
「“清純系の渡辺くん、裏でとんでもないことしてました”ってね」
ヘアピンの女性は、さらに近づき渡辺の頬を軽くつついた。
渡辺は一歩後ずさるが——
背中が壁に当たった。
逃げ道は完全に塞がれたことを悟る。
「ねえ渡辺くん」
緋褪色の女性が、背後の壁に手を置いて渡辺を囲う。いわゆる“壁ドン”の体勢だ。
影が覆いかぶさり、光が遮られる。
「もうちょっと素直になったら? 私たち、あなたを困らせたいわけじゃないんだよ?」
その言い方が逆に、底冷えするような恐怖を生んだ。
「……困らせてるじゃないか……!」
渡辺はうつむき、拳を震わせた。
「困らせて“ないよ”?」
緋褪色の女性の瞳は笑っていない。
「だって、あなたがちょっと“協力”してくれれば、何の問題も起きないんだから」
「“協力”って……何を……」
「さあ?」
ボブカットの女性がニヤついた声で返す。
「まずは一緒に来てくれるだけでいいよ。ね?」
「裏門から出た先に、誰も来ない場所があるの。話すなら人目のないところがいいよね?」
ヘアピンの女性が腕を組みながら言う。
「ちょ……待ってくれ、本当にやめてくれ……!」
しかし三人は、まるで逃げる小動物を追い詰める捕食者のようにじりじりと距離を詰め続けた。
渡辺の脳裏に浮かぶのは、
——逃げ場がない。
——信じてもらえない。
——終わりだ。
そんな絶望の言葉ばかりだった。
その時
「……渡辺。
一体、何があったんだ?」
さっきまで裏門で聞こえていたざわめきが、嘘のように沈黙へと変わる。
その中心に立つ明石は、状況が飲み込めず眉を寄せた。
そして、今——。
緋褪色の髪を揺らした彼女が、一歩前に出た。
怯えたような震え声……だが、どこか芝居じみている。
「こ、怖かったよ……ほんとに……」
肩をすくめ、胸元を押さえ、明らかに“演技”とわかる仕草。
明石は短く息を吐いた。
そして、慎重に言葉を選びながら口を開く。
「その……彼がそんなことをするわけないだろ。
渡辺は小心者だ。女性に触れるような真似なんて、まずしない。
その写真だって……どうせ“それっぽく撮った”だけじゃないのか?」
瞬間、空気が弾ける。
「……はぁ? なんですって?」
緋褪色の女性の目が吊り上がり、抑えていた怒気が噴き出した。
隣でヘアピンの女性が腕を組み、冷ややかに言い放つ。
「じゃあ証拠を出しなさいよ。
言うからには、あるんでしょ?」
明石は一瞬だけ視線を泳がせたが、スマホを取り出そうとした——
その時。
「——何をしているんだ?」
鋭い声が、背後の別方向から飛び込んできた。
全員が振り返る。
そこには制服姿の女性警官、影野と盛岡が立っていた。
二人の視線は冷たく、状況を把握しようと周囲を見渡している。
緋褪色の女性は、待ってましたと言わんばかりの表情で警官の前へ出た。
「実は……その……あの男たちに、乱暴なことをされたんです……」
声も震え、涙まで浮かべている。
(こいつ……私を“追加”しやがったな)
明石は心の奥で舌打ちした。
緋褪色の女性の芝居がかった訴えを聞きながら、明石は内心で低く唸った。
渡辺だけでなく、自分まで加害者側に混ぜるような口ぶり。
その意図があまりに露骨で、胃の奥がずん、と重くなる。
だが次の瞬間——。
「動かないで。」
冷えた声が空気を切り裂いた。
影野警官が一歩前へ進み、ためらいもなく緋褪色の女性の腕を掴んだ。
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