王冠の乙女

ボンボンP

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帰路も平常運転で何のトラブルも無く進んだ。

フェリシテはユージェニーに話しかけられるたびに意識してしまい受け答えも言葉少なくなってしまったが、彼は約束通り至って普通に護衛として接してくれていた。

行きに比べて随分早く帰ってきてしまったと思う程に、ユージェニーともう少し一緒にいたいと思った。

ネージュ家に帰り着いた時に、馬車から降りるフェリシテの手を取ったユージェニーは小さな声で言った。
「お気持ちが決まりましたら手紙をください。手紙が届くのを心待ちにしております。次、またお会いする機会ができる事を願っていますので。」

そして…フェリシテの手にそっとキスをした。

ほんの一瞬のエスコート中の出来事だ。
フェリシテが頬を染めるのをユージェニーは嬉しそうに見つめた。



そして、そんな2人の様子を出迎えていたネージュ夫人は見逃さなかった。

夫人の頭の中ではすでにフェリーチェのウエディングドレスが何通りも頭を過っていた。

娘の結婚式、なんて素晴らしい響きなのかしら!
ウエディングドレスのフェリーチェはどんなに可愛らしいだろうか!

そう思うとドレスショップや持参品を揃えるのにどの店を使うのか、いやその前に一度モス伯爵領を自分の目で見に行かなくてはと気がはやるのだった。



フェリシテはその日ネージュ邸に泊まった。
家族、使用人にも土産を渡すと皆喜んでくれた。

夕食が終わり、部屋で明日サヴォア邸に帰る為の準備をしていると夫人がやって来た。

「フェリーチェ。貴女に言ってなかったのだけどユージェニー様は結婚の申込みにうちにいらした事があったのよ。貴女がサヴォア邸に移ってしばらくした頃だったかしら。私もお父様も貴女には幸せになって欲しいと思っているの。私たちから見て彼は誠実な人だと感じたわ。それに彼は王宮での貴女のことも知っているでしょう?それでも求婚をするのだから貴女のことが本当に好きなのだと思ったのよ。だから今回、彼にチャンスをあげたの。フェリーチェの気持ちをつかみなさいって。私もお父様もこの縁談は良いと思っているのですよ。貴女の気持ちが固まれば私たちは喜んで送り出すわ。でも、勿論、彼じゃなくてもいいのよ。」

「そうだったんですね。つい、ユージェニー様に私が平民の生まれだと言うことを話してしまいました。彼は気にしないと言っていましたが、お父様がもうしばらく養女のままでと仰ったのはユージェニー様との縁談があったからでしょうか?」

「そうよ。ユージェニー様はモス伯爵家の次男ですからね。この国に身分制度がある以上、彼と結婚するには貴族であったほうがいいわ。結婚する前から要らぬ苦労はする必要はないのよ。」
「…そうですね。」

「フェリーチェは貴族の暮らしが負担だと思っているようだけど…確かに貴族の暮らしもいいことだけではないわ。でもユージェニー様は貴女が一番負担に思っている社交はしなくてもいいおっしゃったでしょう?彼はどちらかと言うと着飾ってそこにいるだけの妻より、一緒に領地の事を考えてくれる妻をお望みだと感じたわ。難しく考えなくてもいいのよ。彼も領地に戻るとなると今迄の仕事の内容とは違うから苦労するはず。フェリーチェはそれを隣で応援してあげればいいのよ。貴女は一人で夫の帰りを待つだけよりも夫の仕事を手伝う方があっているでしょう、そう思うの。」

「そうですね…王子宮にいたときに本当にそうでした。毎日部屋で待っているだけの生活は私に合わないと思います。お母様のようにお父様と一緒に商談したりお店の経営にも携わっておられたり、私もそう言う風になりたいです。夫と一緒に働くのが理想です。」

「まあ、ありがとう。嬉しいわ。それともう一つ、今のモス伯爵当主は、つまりユージェニー様のお父様はね地方の男爵令嬢を見初めて結婚したのよ。親族からとても反対されたらしいけど押し切られたわ。そういう事もあるから貴女との結婚は反対はされないと思う。うちの遠縁の没落した家の娘ということでもね。だからフェリーチェ次第よ。よく考えてみてね。」





次の日、サヴォア邸に帰ったフェリシテは驚いた。

オンブレがすでに帰宅していたからだった。

「お帰りなさい、フェリ。驚いたわ、旅行に行ってるなんて。お土産買ってきたのよ。さあ、荷物を置いてきてお茶の用意をするから。」

「ただいま、早かったのね。もっとゆっくりしてくると思ってたわ。」
「まあ…そのつもりだったけどプロベルガーの村がちょっとね。で、先に帰ってきたんです。兄さんは…いつ帰ってくるかわかりません。」

オンブレは大きなため息をついた。





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