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婚約式 1
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ランブランさんと私の婚約式はヒベルニカ邸の広間を使った小さなパーティーだった。
本来貴族なのだから同じ領内の貴族を呼んだりするそうだけど、領主様に私を表に出すなと言われた事を逆手に取って貴族は呼ばず、領主の名代参加も断った。
ランブランさんの家族、騎士団からは各班長と部下数名ずつ。
結婚している騎士は夫婦で参加してもらっているが参加女性は2人だけだった。
他に2人いるが、妊娠中と産後間もなくということで欠席ということだった。
お客様とは違うが、今日のドレスを作ってくれたミランダさんとベリゼは壁際に立ってこちらを見守ってくれている。
最後に会場に入った私たちに、野太い声が響く。
「副団長おめでとうございます!」
「おめでとうございます!」
「良かったですね~おめでとうございます!」
参加者の温かい拍手に迎えられた。
「今日は私たちの婚約式に来てくれてありがとう。紹介しよう。私の妻となるココアだ。ココアはまだこの国に来てから日が短い。それでも私との結婚を受け入れてくれた。私はココアを愛し、支えるつもりだが皆にも何かあれば助けてもらえるようお願いしたい。」
私は緊張でこわばった笑顔で軽く頭を下げた。
今、この中ではランブランさん家族の次に身分の高い私が深いお辞儀をしてはいけないらしい。
ランブランさんの隣でエスコートされ会釈だけしてればよいと言われた。
「婚約者殿は美しいなあ、本当に。以前、入院中でしたがお会いした時より何倍も美しくなられた。」
「本当にお美しいです。兵舎に来られたら団員たちには目の毒です。」
騎士たちは私をさんざん褒めた後ランブランさんを連れて、一緒にお酒コーナー行ってしまった。
私は団員の奥様たちに捕まった。
「ココア様、本当におめでとうございます。きっと近いうちにこうなると思っていましたわ。」
「ありがとうございます。モリアさん。貴女のおかげで結婚を決心できた気がします。」
「ココア様、お初にお目にかかります。私は第1班班長のラマルクの妻でスザレと申します。夫の部下がココア様にとんでもないことをしたそうで…。私からも謝罪をさせてくださいませ。」
「いえ。もう怪我はすっかり治りましたし、お気になさらず。それに、森で迷子の私を始めに見つけて下さったのはラマルクさんですから。」
スザレさんは椅子においていた紙の箱を指し示すと申し訳なさそうに言った。
「実は、夫からココア様のお召し物を預かっておりました。ココア様が保護された時に着ておられたお洋服だと聞いております。人には見せられないから私にお洋服の洗濯と綻んでいれば繕うようにと。」
「え…ありがとうございます!本当にどこに行ったのかわからなくて。洗濯までしていただいてたなんて!」
「ココア様、それが…大変申し訳ございません!!」
涙をうっすらと浮かべるスザレさん。
嫌な予感がしたのでベリゼに言って私室にお茶の用意を頼んだ。
私とスザレさんが移動するとモリアさんも着いてきた。
会場を少し抜けるとエドリに伝え移動する。
私室に入るとスザレさんは涙を流しつつ箱の蓋を開けた。
懐かしいスーツは縒れて前身ごろに縦皺があったし、パンツの膝には穴が開いていたのか裏から布があてがわれていたが材質が違いすぎて穴が余計に目立っていた。
ブラウスは皺が目立ち上から3つも釦がなかった。
ベルトは綺麗だったがパンプスはヒールの踵の皮が捲れていた。
ブラジャーはホックは無事なのに前の中心部分が完全に切られていて、そのジグザクな切れ目を何とか繋ぎましたという仕上がりで…脱がせやすかったのかショーツだけは無事だった。
「出来るだけ丁寧に洗濯したつもりなのですが…石鹸が合わなかったのか布に皺が…。それにこんな細かい織物生地は何処の店に行っても見つからず、こんな目立つ継ぎ当てに…。何処かの洋服店に出したかったのですが夫が人目に付くと駄目だから他所に頼むなと言うもので。このような…申し訳ありません。」
「ああ~。気にしないで下さい。そうですね、石鹸が合わなかったんだと思いますし確かに…この生地は見つからないでしょう…。」
「あの、ココア様この白いレースの物は何ですか?それにこの小さな三角の物は?」
モリアさんが不思議そうに指さした。
「それは…私の国の下着ですね。こちらがブラジャーと言って胸につけるものです。コルセットの胸に当たる部分だけ、と思って下さい。で、こちらはショーツと言ってドロワーズの代わりに履くものです。」
2人の目が釘付けになった。
「こんな小さな物を…それでは隠せないのではないですか?」
突然、後ろから手が伸びてきてベリゼが掴み上げまじまじと見ている。
「それにしてもとても不思議な生地ですね。光沢があって美しいし素晴らしいレースです。それにこのシャツや上着、ベルト、靴。どれを見ても素晴らしい!こんなに細かい縫い目は何処の店のミシンでもありえません!いったい何処の国の物ですか?何としても叔母にミシンを買いに行かせます!」
見たことも無いほどベリゼが興奮していた。
本来貴族なのだから同じ領内の貴族を呼んだりするそうだけど、領主様に私を表に出すなと言われた事を逆手に取って貴族は呼ばず、領主の名代参加も断った。
ランブランさんの家族、騎士団からは各班長と部下数名ずつ。
結婚している騎士は夫婦で参加してもらっているが参加女性は2人だけだった。
他に2人いるが、妊娠中と産後間もなくということで欠席ということだった。
お客様とは違うが、今日のドレスを作ってくれたミランダさんとベリゼは壁際に立ってこちらを見守ってくれている。
最後に会場に入った私たちに、野太い声が響く。
「副団長おめでとうございます!」
「おめでとうございます!」
「良かったですね~おめでとうございます!」
参加者の温かい拍手に迎えられた。
「今日は私たちの婚約式に来てくれてありがとう。紹介しよう。私の妻となるココアだ。ココアはまだこの国に来てから日が短い。それでも私との結婚を受け入れてくれた。私はココアを愛し、支えるつもりだが皆にも何かあれば助けてもらえるようお願いしたい。」
私は緊張でこわばった笑顔で軽く頭を下げた。
今、この中ではランブランさん家族の次に身分の高い私が深いお辞儀をしてはいけないらしい。
ランブランさんの隣でエスコートされ会釈だけしてればよいと言われた。
「婚約者殿は美しいなあ、本当に。以前、入院中でしたがお会いした時より何倍も美しくなられた。」
「本当にお美しいです。兵舎に来られたら団員たちには目の毒です。」
騎士たちは私をさんざん褒めた後ランブランさんを連れて、一緒にお酒コーナー行ってしまった。
私は団員の奥様たちに捕まった。
「ココア様、本当におめでとうございます。きっと近いうちにこうなると思っていましたわ。」
「ありがとうございます。モリアさん。貴女のおかげで結婚を決心できた気がします。」
「ココア様、お初にお目にかかります。私は第1班班長のラマルクの妻でスザレと申します。夫の部下がココア様にとんでもないことをしたそうで…。私からも謝罪をさせてくださいませ。」
「いえ。もう怪我はすっかり治りましたし、お気になさらず。それに、森で迷子の私を始めに見つけて下さったのはラマルクさんですから。」
スザレさんは椅子においていた紙の箱を指し示すと申し訳なさそうに言った。
「実は、夫からココア様のお召し物を預かっておりました。ココア様が保護された時に着ておられたお洋服だと聞いております。人には見せられないから私にお洋服の洗濯と綻んでいれば繕うようにと。」
「え…ありがとうございます!本当にどこに行ったのかわからなくて。洗濯までしていただいてたなんて!」
「ココア様、それが…大変申し訳ございません!!」
涙をうっすらと浮かべるスザレさん。
嫌な予感がしたのでベリゼに言って私室にお茶の用意を頼んだ。
私とスザレさんが移動するとモリアさんも着いてきた。
会場を少し抜けるとエドリに伝え移動する。
私室に入るとスザレさんは涙を流しつつ箱の蓋を開けた。
懐かしいスーツは縒れて前身ごろに縦皺があったし、パンツの膝には穴が開いていたのか裏から布があてがわれていたが材質が違いすぎて穴が余計に目立っていた。
ブラウスは皺が目立ち上から3つも釦がなかった。
ベルトは綺麗だったがパンプスはヒールの踵の皮が捲れていた。
ブラジャーはホックは無事なのに前の中心部分が完全に切られていて、そのジグザクな切れ目を何とか繋ぎましたという仕上がりで…脱がせやすかったのかショーツだけは無事だった。
「出来るだけ丁寧に洗濯したつもりなのですが…石鹸が合わなかったのか布に皺が…。それにこんな細かい織物生地は何処の店に行っても見つからず、こんな目立つ継ぎ当てに…。何処かの洋服店に出したかったのですが夫が人目に付くと駄目だから他所に頼むなと言うもので。このような…申し訳ありません。」
「ああ~。気にしないで下さい。そうですね、石鹸が合わなかったんだと思いますし確かに…この生地は見つからないでしょう…。」
「あの、ココア様この白いレースの物は何ですか?それにこの小さな三角の物は?」
モリアさんが不思議そうに指さした。
「それは…私の国の下着ですね。こちらがブラジャーと言って胸につけるものです。コルセットの胸に当たる部分だけ、と思って下さい。で、こちらはショーツと言ってドロワーズの代わりに履くものです。」
2人の目が釘付けになった。
「こんな小さな物を…それでは隠せないのではないですか?」
突然、後ろから手が伸びてきてベリゼが掴み上げまじまじと見ている。
「それにしてもとても不思議な生地ですね。光沢があって美しいし素晴らしいレースです。それにこのシャツや上着、ベルト、靴。どれを見ても素晴らしい!こんなに細かい縫い目は何処の店のミシンでもありえません!いったい何処の国の物ですか?何としても叔母にミシンを買いに行かせます!」
見たことも無いほどベリゼが興奮していた。
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