彼氏いない暦22年の私、出会って2ヶ月、異世界で結婚する 

ボンボンP

文字の大きさ
30 / 60

婚約式 1

しおりを挟む
ランブランさんと私の婚約式はヒベルニカ邸の広間を使った小さなパーティーだった。

本来貴族なのだから同じ領内の貴族を呼んだりするそうだけど、領主様に私を表に出すなと言われた事を逆手に取って貴族は呼ばず、領主の名代参加も断った。

ランブランさんの家族、騎士団からは各班長と部下数名ずつ。
結婚している騎士は夫婦で参加してもらっているが参加女性は2人だけだった。
他に2人いるが、妊娠中と産後間もなくということで欠席ということだった。

お客様とは違うが、今日のドレスを作ってくれたミランダさんとベリゼは壁際に立ってこちらを見守ってくれている。

最後に会場に入った私たちに、野太い声が響く。
「副団長おめでとうございます!」
「おめでとうございます!」
「良かったですね~おめでとうございます!」

参加者の温かい拍手に迎えられた。


「今日は私たちの婚約式に来てくれてありがとう。紹介しよう。私の妻となるココアだ。ココアはまだこの国に来てから日が短い。それでも私との結婚を受け入れてくれた。私はココアを愛し、支えるつもりだが皆にも何かあれば助けてもらえるようお願いしたい。」

私は緊張でこわばった笑顔で軽く頭を下げた。
今、この中ではランブランさん家族の次に身分の高い私が深いお辞儀をしてはいけないらしい。
ランブランさんの隣でエスコートされ会釈だけしてればよいと言われた。

「婚約者殿は美しいなあ、本当に。以前、入院中でしたがお会いした時より何倍も美しくなられた。」
「本当にお美しいです。兵舎に来られたら団員たちには目の毒です。」


騎士たちは私をさんざん褒めた後ランブランさんを連れて、一緒にお酒コーナー行ってしまった。
私は団員の奥様たちに捕まった。

「ココア様、本当におめでとうございます。きっと近いうちにこうなると思っていましたわ。」
「ありがとうございます。モリアさん。貴女のおかげで結婚を決心できた気がします。」

「ココア様、お初にお目にかかります。私は第1班班長のラマルクの妻でスザレと申します。夫の部下がココア様にとんでもないことをしたそうで…。私からも謝罪をさせてくださいませ。」
「いえ。もう怪我はすっかり治りましたし、お気になさらず。それに、森で迷子の私を始めに見つけて下さったのはラマルクさんですから。」

スザレさんは椅子においていた紙の箱を指し示すと申し訳なさそうに言った。

「実は、夫からココア様のお召し物を預かっておりました。ココア様が保護された時に着ておられたお洋服だと聞いております。人には見せられないから私にお洋服の洗濯と綻んでいれば繕うようにと。」

「え…ありがとうございます!本当にどこに行ったのかわからなくて。洗濯までしていただいてたなんて!」
「ココア様、それが…大変申し訳ございません!!」
涙をうっすらと浮かべるスザレさん。

嫌な予感がしたのでベリゼに言って私室にお茶の用意を頼んだ。
私とスザレさんが移動するとモリアさんも着いてきた。
会場を少し抜けるとエドリに伝え移動する。



私室に入るとスザレさんは涙を流しつつ箱の蓋を開けた。

懐かしいスーツは縒れて前身ごろに縦皺があったし、パンツの膝には穴が開いていたのか裏から布があてがわれていたが材質が違いすぎて穴が余計に目立っていた。

ブラウスは皺が目立ち上から3つも釦がなかった。
ベルトは綺麗だったがパンプスはヒールの踵の皮が捲れていた。

ブラジャーはホックは無事なのに前の中心部分が完全に切られていて、そのジグザクな切れ目を何とか繋ぎましたという仕上がりで…脱がせやすかったのかショーツだけは無事だった。

「出来るだけ丁寧に洗濯したつもりなのですが…石鹸が合わなかったのか布に皺が…。それにこんな細かい織物生地は何処の店に行っても見つからず、こんな目立つ継ぎ当てに…。何処かの洋服店に出したかったのですが夫が人目に付くと駄目だから他所に頼むなと言うもので。このような…申し訳ありません。」

「ああ~。気にしないで下さい。そうですね、石鹸が合わなかったんだと思いますし確かに…この生地は見つからないでしょう…。」

「あの、ココア様この白いレースの物は何ですか?それにこの小さな三角の物は?」
モリアさんが不思議そうに指さした。

「それは…私の国の下着ですね。こちらがブラジャーと言って胸につけるものです。コルセットの胸に当たる部分だけ、と思って下さい。で、こちらはショーツと言ってドロワーズの代わりに履くものです。」

2人の目が釘付けになった。

「こんな小さな物を…それでは隠せないのではないですか?」
突然、後ろから手が伸びてきてベリゼが掴み上げまじまじと見ている。

「それにしてもとても不思議な生地ですね。光沢があって美しいし素晴らしいレースです。それにこのシャツや上着、ベルト、靴。どれを見ても素晴らしい!こんなに細かい縫い目は何処の店のミシンでもありえません!いったい何処の国の物ですか?何としても叔母にミシンを買いに行かせます!」

見たことも無いほどベリゼが興奮していた。









しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

『有能すぎる王太子秘書官、馬鹿がいいと言われ婚約破棄されましたが、国を賢者にして去ります』

しおしお
恋愛
王太子の秘書官として、陰で国政を支えてきたアヴェンタドール。 どれほど杜撰な政策案でも整え、形にし、成果へ導いてきたのは彼女だった。 しかし王太子エリシオンは、その功績に気づくことなく、 「女は馬鹿なくらいがいい」 という傲慢な理由で婚約破棄を言い渡す。 出しゃばりすぎる女は、妃に相応しくない―― そう断じられ、王宮から追い出された彼女を待っていたのは、 さらに危険な第二王子の婚約話と、国家を揺るがす陰謀だった。 王太子は無能さを露呈し、 第二王子は野心のために手段を選ばない。 そして隣国と帝国の影が、静かに国を包囲していく。 ならば―― 関わらないために、関わるしかない。 アヴェンタドールは王国を救うため、 政治の最前線に立つことを選ぶ。 だがそれは、権力を欲したからではない。 国を“賢く”して、 自分がいなくても回るようにするため。 有能すぎたがゆえに切り捨てられた一人の女性が、 ざまぁの先で選んだのは、復讐でも栄光でもない、 静かな勝利だった。 ---

『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』

鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、 仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。 厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議―― 最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。 だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、 結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。 そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、 次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。 同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。 数々の試練が二人を襲うが―― 蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、 結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。 そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、 秘書と社長の関係を静かに越えていく。 「これからの人生も、そばで支えてほしい。」 それは、彼が初めて見せた弱さであり、 結衣だけに向けた真剣な想いだった。 秘書として。 一人の女性として。 結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。 仕事も恋も全力で駆け抜ける、 “冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。

【12月末日公開終了】有能女官の赴任先は辺境伯領

たぬきち25番
恋愛
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26) ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。 そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。 そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。   だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。 仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!? そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく…… ※お待たせしました。 ※他サイト様にも掲載中

【12月末日公開終了】これは裏切りですか?

たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。 だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。 そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?

【完結】番である私の旦那様

桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族! 黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。 バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。 オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。 気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。 でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!) 大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです! 神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。 前半は転移する前の私生活から始まります。

私の手からこぼれ落ちるもの

アズやっこ
恋愛
5歳の時、お父様が亡くなった。 優しくて私やお母様を愛してくれたお父様。私達は仲の良い家族だった。 でもそれは偽りだった。 お父様の書斎にあった手記を見た時、お父様の優しさも愛も、それはただの罪滅ぼしだった。 お父様が亡くなり侯爵家は叔父様に奪われた。侯爵家を追い出されたお母様は心を病んだ。 心を病んだお母様を助けたのは私ではなかった。 私の手からこぼれていくもの、そして最後は私もこぼれていく。 こぼれた私を救ってくれる人はいるのかしら… ❈ 作者独自の世界観です。 ❈ 作者独自の設定です。 ❈ ざまぁはありません。

【完結】中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら聖女ですらなくなりました。

氷雨そら
恋愛
聖女召喚されたのに、100年後まで魔人襲来はないらしい。 聖女として異世界に召喚された私は、中継ぎ聖女としてぞんざいに扱われていた。そんな私をいつも守ってくれる、守護騎士様。 でも、なぜか予言が大幅にずれて、私たちの目の前に、魔人が現れる。私を庇った守護騎士様が、魔神から受けた呪いを解いたら、私は聖女ですらなくなってしまって……。 「婚約してほしい」 「いえ、責任を取らせるわけには」 守護騎士様の誘いを断り、誰にも迷惑をかけないよう、王都から逃げ出した私は、辺境に引きこもる。けれど、私を探し当てた、聖女様と呼んで、私と一定の距離を置いていたはずの守護騎士様の様子は、どこか以前と違っているのだった。 元守護騎士と元聖女の溺愛のち少しヤンデレ物語。 小説家になろう様にも、投稿しています。

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

処理中です...