マトリックズ:ルピシエ市警察署 特殊魔薬取締班のクズ達

衣更月 浅葱

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1話 吾班は猫である

3

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部下は苦虫を噛み潰したような顔で言う。

「服用者は逮捕しています。ですが、
 俺達は死を覚悟しながら戦っていた相手だったのに、魔薬取締班の連中は到着するなりあっさり捕まえていったので…その」
「ふふ、そんな事を競ったって仕方がないじゃないか。彼らは"特別"だからねえ」
「魔薬を使っただけじゃないですか。
そんなの、特別でもなんでも」
「そうかな。僕には理解が及ばないけれど、人と違う存在になるのは相当の覚悟がいると思うんだ。彼らは彼らなりに苦労があるのさ」
「なら最初から気の合う悪魔同士でやってくれれば…」

とぶつくさ愚痴る部下は咳払いをして言葉を飲み込んだ。キースの表情を見て失言だったと。口が滑った事を察したようだ。
改めて彼が言うには、

「…彼らには、後できちんとお礼をしなくては」と。

「そうだね。それがいいと思うよ。君が相手をどう思おうと、礼儀を無視する理由にはならないからね」
「はい」バツが悪そうに部下は頷いた。

そうしてっと…、とキースは呟きながら辺りを見渡す。現場に到着するなり功績を挙げたという魔薬取締班(マトリ)の姿は、この規制線の中には見当たらない。聞くと、部下は口ごもった。

「勿論君から聞いても構わないんだけれど、彼らは魔薬に関しては専門だろう?直接話を聞かせてもらおうと思ったんだけれど」

怪訝に思い首を傾げると、彼は視線をさ迷わせながら、「俺は、課長が来るまで待ってるよう伝えたんですけど……」と前置きされる。

「けれど、なんだい?」
「魔薬取締班の2人は、その、昼食が途中だったと言って帰ってしまって……」

昼食だって?

ふっ!とキースは吹き出した。
怒られるとでも思っていたのか、不安そうな部下が窺うような視線を投げてくるが、キースは堪えられずにクスクスと笑った。
話を聞いただけなのに光景まで浮かぶのは何故だろう。

彼らのことだ。きっと、ランチを邪魔されたナターシャは任務の間ずっと膨れっ面だったに違いない。そして、煤けた顔の刑事の目を盗んで公共馬車(タクシー)を手配したのは彼女の忠実な部下のアレンだろう。

彼ららしいったらありゃしない。

「本当に、猫のような気まぐれさだねえ」
「本物の猫はもっと可愛げがあります」

不服そうな部下にまた、キースは笑った。
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