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第3章 エスペルト王国の動乱
8 飛空船の改造と模擬戦
大規模な軍事衝突から数日、睨み合いは続いているものの戦闘の発生はなかった。
グランバルド帝国側は、前線部隊の敗走と最新鋭飛空船を1隻鹵獲されたことにより、軍の再編成を余儀なくされていた。
また、エスペルト王国側も砦を破棄したことによって、部隊を国境都市セプテンリオを中心に防衛線を築いて国境付近に偵察隊の簡易拠点を置くに留めている。
飛空船と共に拘束された兵士については、捕虜として都市の牢に捕まえている。今後の人質交渉と情報提供のために、近くに捕らえておく必要があるからだ。
そんな中私は、鹵獲した飛空船の調査と改修を仕切っていた。
「この船はこのまま戦いに使っていいんですよね?」
「ええ。城に報告は入れたわ。渋っている人も多かったけど、援軍の見込みはない以上表立った反対も出来ないでしょう。…それに船を研究用に回すべきだって言う貴族も多かったけど、この軍の責任者はわたくしですもの。無理を通すことくらいできるわ。」
一緒に付き従っているシクスタス司令官と共に調査と今後の運用について話をしていた。ちなみにアドリアスは、父親でもあるドミニク元帥に相談のために、一度王都にある実家に戻っていた。なんでも家にある魔剣を借りてくるとのことだ。
「しかし…改造を施すと言うのは、随分と思い切りましたね。」
「いくつか構想があるのよ。それにわたくしが斬った壁も、修理しないといけないしちょうど良いでしょう?」
私は、この船に新しい装備を積みたいと考えていて、いくつか工房に理論を伝えて開発依頼を出している。
まず、物理攻撃用に大口径のコイルガンを開発してもらっていた。
この船の攻撃手段は魔力砲のみのため、対魔力用の結界や装備といったものに対して弱くなる。火薬や魔力による爆発で弾丸を撃ち出すには、砲門の耐久性に難があるためコイルガンが最適と考えた。必要な電力は雷系の術式で補えるし、レールガンほど必要としない。仕組み自体は砲門とコイルさえあれば事足りる。弾丸もHE弾とAP弾の構想は伝えてある。
なお、この世界にも銃は存在していてマスケットなどがある。ただ、銃弾程度であれば実力者には効かない上に魔物にも効かないため、平民の警備隊くらいしか使わない。
もう一つは観測機器の強化だ。元々ある望遠レンズのほかに、魔力波の照射によるレーダーと光系統魔術による熱源感知の開発を依頼している。
魔力波は通信魔術具でも使っていることもあり、比較的簡単に作れるとのことだった。熱源感知については、光を捉えたりするもの自体は、映像の録画や投影の魔術具があるため理論上は改良すれば問題ないらしいが、紫外線を捉えることに苦労しているようだった。
ただ、興味を持ったらしく工房一丸となって実験や試験をしているようで、いずれは出来るだろうと思う。
どちらも私の前世の知識の中から探したものだが、大幅に文明を変えるもの以外は徐々に広げていこうと思っていた。
今後の方針と確認が終わった後は、シクスタス司令官と模擬戦をする予定だ。今後の戦いに備えてお互いの実力を把握しておくとこが目的だ。
「では模擬戦を始めましょうか。」
「ええ。いつでもどうぞ。」
シクスタス司令官が魔弓を構えて魔力矢を連射する。
それに対して私は銀月で弾きながら前に進む。
「やはりこの程度では牽制にもなりませんね。でもこれなら!」
矢を放ちながら距離を取り、連射ではなく一矢ごとの威力を高めて放ってくる。刀で弾くには威力が強いため、私も回避を前提に立ち回る。常に走り続けて狙いを付けにくくして、さらに空気中の障壁を足場にすることで、上下左右のあらゆる方向を飛び回って撹乱していく。
そして矢と矢の一瞬の隙間をついて接近し、銀月を薙ぎ払い…魔弓と激突した。その状態でシクスタス司令官は魔力矢を放ち、私も後退して避ける。
シクスタス司令官も下がりつつ矢をもって牽制してきた。私もこの機会に新しいことを試して見る。
(前から考えてた対多人数もしくは、遠距離からの手数が多い相手との戦闘方法…まず、大地を大雑把に砕く!)
私は銀月を地面に刺して、魔力を撃ち込む。すると、私を中心に地面が砕けて瓦礫に変わっていく。
(私の魔力で砕いてできた瓦礫には、元々あった魔力と私の魔力が混じっているはず。これに干渉して、あくまで位置の操作に留めておけばっ!)
私を囲むように瓦礫が漂う。飛んでくる魔力矢の軌道を塞ぐように瓦礫を移動させて盾にしつつ、相手に近づくように移動する。瓦礫は一撃受ける幅に砕けて落ちていくが、即席の盾としては十分だった。近づいて再度銀月を振るうと、シクスタス司令官が後退する。同時に、残りの瓦礫を全て撃ち出した。瓦礫と魔力矢が衝突して衝撃波を散らすが、その一瞬で裏に回り込み裏から斬りかかる。
シクスタス司令官も咄嗟に弓で刀を受けると、跳んで距離をとった。
「ここまで…ですな。今のである程度は把握できましたし、これ以上となると模擬戦では、済まなくなりそうです。」
「そうですね。わたくしも模擬戦で夜月の力を使う気はないですし貴方もそうでしょう?」
お互いに実力を把握したところで模擬戦は終了となった。シクスタス司令官も、弓を主武装にしていて遠距離に特化していると思われがちだが、単独での戦闘もこなせるため、弓を絡めた近接戦闘もそれなりにできるとのことだった。
また、両方に言えることだが武器の能力を解放した場合、お互いに無事で住む保証もなかった。
「それにしても…それだけの実力を示せば周りの評価を変わるでしょうに。」
呆れた顔のシクスタス司令官に肩をすくめる。
私にとって大事なことは、周りから受ける評価じゃなくて自分自身がどうしたいかだ。それに…
「周りの噂だけで判断する人の評価は要らないわ。実際、アドリアスやイリーナ、貴方のようにちゃんと見てくれる人もいる。それで十分よ。」
これにて、実力把握のための模擬戦は終わった。
グランバルド帝国側は、前線部隊の敗走と最新鋭飛空船を1隻鹵獲されたことにより、軍の再編成を余儀なくされていた。
また、エスペルト王国側も砦を破棄したことによって、部隊を国境都市セプテンリオを中心に防衛線を築いて国境付近に偵察隊の簡易拠点を置くに留めている。
飛空船と共に拘束された兵士については、捕虜として都市の牢に捕まえている。今後の人質交渉と情報提供のために、近くに捕らえておく必要があるからだ。
そんな中私は、鹵獲した飛空船の調査と改修を仕切っていた。
「この船はこのまま戦いに使っていいんですよね?」
「ええ。城に報告は入れたわ。渋っている人も多かったけど、援軍の見込みはない以上表立った反対も出来ないでしょう。…それに船を研究用に回すべきだって言う貴族も多かったけど、この軍の責任者はわたくしですもの。無理を通すことくらいできるわ。」
一緒に付き従っているシクスタス司令官と共に調査と今後の運用について話をしていた。ちなみにアドリアスは、父親でもあるドミニク元帥に相談のために、一度王都にある実家に戻っていた。なんでも家にある魔剣を借りてくるとのことだ。
「しかし…改造を施すと言うのは、随分と思い切りましたね。」
「いくつか構想があるのよ。それにわたくしが斬った壁も、修理しないといけないしちょうど良いでしょう?」
私は、この船に新しい装備を積みたいと考えていて、いくつか工房に理論を伝えて開発依頼を出している。
まず、物理攻撃用に大口径のコイルガンを開発してもらっていた。
この船の攻撃手段は魔力砲のみのため、対魔力用の結界や装備といったものに対して弱くなる。火薬や魔力による爆発で弾丸を撃ち出すには、砲門の耐久性に難があるためコイルガンが最適と考えた。必要な電力は雷系の術式で補えるし、レールガンほど必要としない。仕組み自体は砲門とコイルさえあれば事足りる。弾丸もHE弾とAP弾の構想は伝えてある。
なお、この世界にも銃は存在していてマスケットなどがある。ただ、銃弾程度であれば実力者には効かない上に魔物にも効かないため、平民の警備隊くらいしか使わない。
もう一つは観測機器の強化だ。元々ある望遠レンズのほかに、魔力波の照射によるレーダーと光系統魔術による熱源感知の開発を依頼している。
魔力波は通信魔術具でも使っていることもあり、比較的簡単に作れるとのことだった。熱源感知については、光を捉えたりするもの自体は、映像の録画や投影の魔術具があるため理論上は改良すれば問題ないらしいが、紫外線を捉えることに苦労しているようだった。
ただ、興味を持ったらしく工房一丸となって実験や試験をしているようで、いずれは出来るだろうと思う。
どちらも私の前世の知識の中から探したものだが、大幅に文明を変えるもの以外は徐々に広げていこうと思っていた。
今後の方針と確認が終わった後は、シクスタス司令官と模擬戦をする予定だ。今後の戦いに備えてお互いの実力を把握しておくとこが目的だ。
「では模擬戦を始めましょうか。」
「ええ。いつでもどうぞ。」
シクスタス司令官が魔弓を構えて魔力矢を連射する。
それに対して私は銀月で弾きながら前に進む。
「やはりこの程度では牽制にもなりませんね。でもこれなら!」
矢を放ちながら距離を取り、連射ではなく一矢ごとの威力を高めて放ってくる。刀で弾くには威力が強いため、私も回避を前提に立ち回る。常に走り続けて狙いを付けにくくして、さらに空気中の障壁を足場にすることで、上下左右のあらゆる方向を飛び回って撹乱していく。
そして矢と矢の一瞬の隙間をついて接近し、銀月を薙ぎ払い…魔弓と激突した。その状態でシクスタス司令官は魔力矢を放ち、私も後退して避ける。
シクスタス司令官も下がりつつ矢をもって牽制してきた。私もこの機会に新しいことを試して見る。
(前から考えてた対多人数もしくは、遠距離からの手数が多い相手との戦闘方法…まず、大地を大雑把に砕く!)
私は銀月を地面に刺して、魔力を撃ち込む。すると、私を中心に地面が砕けて瓦礫に変わっていく。
(私の魔力で砕いてできた瓦礫には、元々あった魔力と私の魔力が混じっているはず。これに干渉して、あくまで位置の操作に留めておけばっ!)
私を囲むように瓦礫が漂う。飛んでくる魔力矢の軌道を塞ぐように瓦礫を移動させて盾にしつつ、相手に近づくように移動する。瓦礫は一撃受ける幅に砕けて落ちていくが、即席の盾としては十分だった。近づいて再度銀月を振るうと、シクスタス司令官が後退する。同時に、残りの瓦礫を全て撃ち出した。瓦礫と魔力矢が衝突して衝撃波を散らすが、その一瞬で裏に回り込み裏から斬りかかる。
シクスタス司令官も咄嗟に弓で刀を受けると、跳んで距離をとった。
「ここまで…ですな。今のである程度は把握できましたし、これ以上となると模擬戦では、済まなくなりそうです。」
「そうですね。わたくしも模擬戦で夜月の力を使う気はないですし貴方もそうでしょう?」
お互いに実力を把握したところで模擬戦は終了となった。シクスタス司令官も、弓を主武装にしていて遠距離に特化していると思われがちだが、単独での戦闘もこなせるため、弓を絡めた近接戦闘もそれなりにできるとのことだった。
また、両方に言えることだが武器の能力を解放した場合、お互いに無事で住む保証もなかった。
「それにしても…それだけの実力を示せば周りの評価を変わるでしょうに。」
呆れた顔のシクスタス司令官に肩をすくめる。
私にとって大事なことは、周りから受ける評価じゃなくて自分自身がどうしたいかだ。それに…
「周りの噂だけで判断する人の評価は要らないわ。実際、アドリアスやイリーナ、貴方のようにちゃんと見てくれる人もいる。それで十分よ。」
これにて、実力把握のための模擬戦は終わった。
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