王女の夢見た世界への旅路

ライ

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第4章 無慈悲な大陸と絶望の世界

6 魔族との邂逅

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 光が止み浮遊感が収まると真っ暗な空間にいた。念のため気配を殺して様子見をするが、周囲に人影は見当たらない。片目に暗視の魔術を行使して見渡すが、岩場に囲まれた地下空間のようだった。なお、暗視を片目だけに行使する理由は、突如明るくなった場合に両目がくらんでしまうのを防ぐためである。

「周りには誰もいなそうね。光源をお願いできる?」

 私が小声で言うとアルキオネが光源の魔術を使用してくれた。明かりを確保したことで、より周囲を観察する。

「地下…あるいは洞窟でしょうか?」

 アルキオネが周りを見ながら話す。

「…ここは外に繋がってますね。風通しが今までと全く違います。」

 シリウスが目を瞑って、風の流れを把握して呟いた。

「とりあえず外を目指しましょう。だれかいた場合は一旦隠れてやり過ごすけどいいわよね?」

 2人が頷いたことを確認して、風を頼りに外を目指した。幸い、罠や敵に遭遇することもなく外に出る。
 外に出ると森が広がっていて、空を見上げると太陽の光が眩しかった。

「久しぶりの外ね。やっぱり太陽の光は大事だわ。」

「そうですね。開放感が全く違います。」

 アルキオネも同感のようで深く頷いている。

「さて…ここはどこなのだろうか?大まかでも場所を知りたいところだが…」

「目的の方角に進みましょうか。夜になれば多少位置もわかるかも知れないわ。」

 この世界の船は、水平線と天体の角度から位置を計算する天測航法が主流だ。同じ原理を使えば、地上でも目安程度になるかも知れない。
 途中、昼休憩を挟みながらも北西に向かって歩みを進める。地上に出て半日が経った頃、集落らしき場所を見つけた。

「あれは…人?」

 気配を殺しつつも集落の中を観察すると、人らしき姿が見える。

「いえ…あれは魔族ですね。魔力の桁が違います。」

 シリウスに言われて感覚を研ぎ澄ませると、私達の魔力に比べて感じる量が桁違いに多い。人だと魔力を意図的に放出しない限り、感じることができないのに対して、魔族はそのままの状態で魔力を感じることができた。

「俺も魔族についてはあまり詳しくありませんが、魔力が桁違いに多いのと個々の特殊能力を持っているらしいです。」

「ここの魔族が敵対的か友好的か…難しいところですね。」

 魔族については、ユニダリア大陸で遭遇しないためエスペルト王国でも、あまり詳しく学ぶことがなかった。そのため、3人してどうするべきか判断がつかないでいる。しばらく様子を見てみると、飛龍に乗った魔族が数人降り立つ。そのうち1人の魔族は布に包まった大きめのものを担いでいる。担いでた物を地面に放り投げて布が捲られると、中にいたのは私と同じくらいの歳だと思われる少女だった。

「っ!?女の子が中に!?」

 私は声を抑えながらも瞠目した。

(助ける…べきかしら?あの子が捕まっているのが、単なる誘拐なら助けても問題ない。けれど魔族側に正当な理由があるとしたら…助ける行動が裏目に出ることもある。)

 例えるなら、この前のエスペルト王国とグランバルド帝国との戦争だろう。帝国が先に攻めてきて、結果的に帝国の将軍を人質に取った。もし人質に取った状況だけを見た人が助けようとした場合、エスペルト王国からしてみれば正当な理由があるのに邪魔されることになる。
 隣を見るとシリウスやアルキオネも驚きつつも難しい顔をしていた。

「…2人とも、もし私があの子を助けたいって言ったらどう思うかしら?」

 私は、逡巡しながらも聞いてみる。

「そうですね…こう言ってはなんですが、人と魔族の関係が掴めない以上、手を出さない方が無難だと思います。それに相手の力がわからない以上、あの子を護りながら戦うのは危険です。ですが…」

「姫様が助けたいのであれば、私達は全力を尽くします。あなたに忠誠を誓ったのは、王女だからだけではありません。その王族らしくない考え方も、困っている人がいた時につい手を差し伸べるところも含めて姫様の、ラティアーナ様のことが好きなのですから。」

 シリウスの言葉にアルキオネが繋げて言葉をくれる。私の好きにしていいと、背中を押してくれたことで私は…

「…ありがとう。まずは状況を把握したい。このまま3人で道に迷ったことにして魔族と話したいわ。人をどう思っているのか知りたい。私に力を貸してくれる?」

「「もちろんです。俺は(私は)あなただけの騎士ですから。」」

「本当にありがとう。」

 私達は、相手を警戒させないようにして集落に近づいていく。元々、今いる場所を知らないため迷子というのも、あながち嘘ではない。場所を聞きつつもここの魔族がどういった考えを持つのか、可能であれば連れられた少女がどういった経緯で捕まったのか知りたい。
 集落のほうへ向かうと魔族も気付いたらしく、2人ほど近付いてくる。

「すまない。ここはどこなのだろうか?北の大陸へ向かいたいのだが…」

 シリウスが代表して話しかける。魔族の言語のため多少拙くはあるが、意味は通じるはずだ。

「…人は支配するべき存在。排除する。」

 魔族たちは、呟くと同時に襲ってきた。
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