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第7章 女王の戴冠
21 国外実践演習からの帰還
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西方連合国家群を発つ予定の日。私はカイトの元を訪れていた。
拘束している宿の一室を訪れると睨み付けているカイトと目が合った。
「カイト、あなたの目的を聞きにきたわよ」
「随分と長い間放置されていたと思いましたが…私が口を開くとでもお思いですかな?」
カイトは馬鹿にしたような視線を投げかけてくるが、私は嘲笑を浮かべた。
「あなたは犯罪者だから体に聞いてあげてもいいのだけど…拷問というのはわたくしの趣味じゃないわ。かといって精神干渉する手もあるけど、あなたには効果が薄い気がするのよね」
闇属性魔術による精神干渉は、精神力つまりは気合で耐えることも可能だ。ある意味常人よりも狂人のほうが、耐える可能性が高い。
しかし私の目的は、カイトからいくつかの事を聞きだすだけなのだから、やりようはいくらでもある。要は質問の答えを吐かせればいいだけなのだから。
(カイトはなにかに妄信していて自身が正しいと信じている。だからこそ精神的な耐性が高いと思うけど、壊れてはいないから本人の中で論理的に動こうとするのよ。つまりカイトは目的のために会話する内容を常に考えている。であれば…)
「あなたに問う内容だけど、別に仲間のことは聞かないわよ?あなたの共犯者は察しが着いているし、わたくしが戻り次第一掃するだけだもの」
「それが本当であれば私に問うことなどなにもないのではないかな?」
「あなたたちの目的を知りたいのよ。邪気の研究、魔物の研究…意図的なスタンピードの発生。どれも混乱を起こすには十分だけど決め手にかけるわ」
魔物を邪気を与えると基本的な性能は強化されるだろう。しかし邪気に比例して思考が鈍くなるため動きは単調になる。
駆け出しの冒険者や騎士見習いであれば死活問題だが、熟練した人であれば問題ないだろう。
スタンピードにしても自然に発生する事象のため街であれば破られることはまずない。
連中が多大な犠牲を払ってまで行う理由が分からなかった。
「目的など決まっていますよ…あなたたち全員の死です」
「そこがわからないのよ。確かにスタンピードも邪気を纏った魔物も厄介だけど言ってしまえばそれだけ。ここには王と全公爵家の令息、他にも高位の貴族令息はいるけど、裏を返してしまえばそれだけ実力者揃いでもあるわよね?あなたたちが指示されて動いているのは知っているけど随分と杜撰な作戦ね」
私の言葉にカイトは怒りを覚えたようで口元が引き攣った。しかし、反論は無いようで口は閉じたままだ。
「沈黙は是ととるわよ?あなたは実験と言ったけど直近10年くらいの王都で…いえエスペルト王国内でスタンピードが起きたのは数年前の1度のみ。そして、その時の結果は重症者は居たものの死者は0。成功とは言えない結果ね。あとは邪気の研究だけど、邪教信徒たちも失敗だったのではなくて?」
「っ…!なぜその名を知っている!?邪教信徒など表舞台に出てきていな…」
カイトは思わず声を荒げるが慌てて口を閉じた。
私が以前戦った孤児院長を筆頭とする邪教信徒たち。関連していると思ってカマをかけたが、大当たりだったようだ。
「それを潰したのにわたくしも絡んでいるからね…直接戦ったし話もしているの。あなたたちの研究って失敗だらけよね?邪気の研究も邪魔されて失敗、オーガの強化種も全滅して失敗。この全てにわたくしが絡んでいるなんて運命かしら?」
「オーガの報告は王国に上がっていないはずだ!なぜお前が知っている!?」
「この姿に見覚えがあればわかると思うけど?」
私はそう言いながら変装用の魔術具を取り出すと、変装用の魔術具に魔力を流して起動させた。髪色が金から茶に、目の色が碧眼から黒眼に変化する。
「お前はあの時の冒険者だと!?まさか俺たちに気づいて冒険者になりすまして調査に…」
「それは間違いね。わたくしは冒険者でもあるもの…」
私の言葉に怪訝な表情を浮かべたカイトは、プラチナ製のプレートを見ると口元が「Sランク…」と動いた。
「まぁいいわ。目的はあなたたちを全滅させた後にでも問います。次に話すときはエスペルト王国の王都に帰った後かしらね」
カイトへの尋問が終わると、私は皆の元へ戻りエスペルト王国に帰るための準備をする。
そもそもエスペルト王国へ帰るために、叡智の国アークソフィアを発つ今日の忙しい時に尋問を行ったのには理由があった。
通信を使ってニコラウスやドミニク、シリウスから調査状況は報告を受けていたが、昨日になって通じていた人の特定に成功したからになる。王城と学園でそれぞれ違う情報を違う人に聞かせて、相手の動きを追っていたところ怪しい人物を見つけることが出来た。
この段階では疑い止まりだったが、王国の影でもあるノーティア公爵家に調査を依頼して、証拠を掴んだところだ。
そんなわけで移動する前にカイトにも尋問をして、情報を得てみたといった感じだった。
さて、帰りの道は魔物と戦いになるものの、これと言った事件が起こることなく順調に進んでいく。
エスペルト王国の学園都市に戻ったのは、予定通り王立学園を出発した1月半後だった。
拘束している宿の一室を訪れると睨み付けているカイトと目が合った。
「カイト、あなたの目的を聞きにきたわよ」
「随分と長い間放置されていたと思いましたが…私が口を開くとでもお思いですかな?」
カイトは馬鹿にしたような視線を投げかけてくるが、私は嘲笑を浮かべた。
「あなたは犯罪者だから体に聞いてあげてもいいのだけど…拷問というのはわたくしの趣味じゃないわ。かといって精神干渉する手もあるけど、あなたには効果が薄い気がするのよね」
闇属性魔術による精神干渉は、精神力つまりは気合で耐えることも可能だ。ある意味常人よりも狂人のほうが、耐える可能性が高い。
しかし私の目的は、カイトからいくつかの事を聞きだすだけなのだから、やりようはいくらでもある。要は質問の答えを吐かせればいいだけなのだから。
(カイトはなにかに妄信していて自身が正しいと信じている。だからこそ精神的な耐性が高いと思うけど、壊れてはいないから本人の中で論理的に動こうとするのよ。つまりカイトは目的のために会話する内容を常に考えている。であれば…)
「あなたに問う内容だけど、別に仲間のことは聞かないわよ?あなたの共犯者は察しが着いているし、わたくしが戻り次第一掃するだけだもの」
「それが本当であれば私に問うことなどなにもないのではないかな?」
「あなたたちの目的を知りたいのよ。邪気の研究、魔物の研究…意図的なスタンピードの発生。どれも混乱を起こすには十分だけど決め手にかけるわ」
魔物を邪気を与えると基本的な性能は強化されるだろう。しかし邪気に比例して思考が鈍くなるため動きは単調になる。
駆け出しの冒険者や騎士見習いであれば死活問題だが、熟練した人であれば問題ないだろう。
スタンピードにしても自然に発生する事象のため街であれば破られることはまずない。
連中が多大な犠牲を払ってまで行う理由が分からなかった。
「目的など決まっていますよ…あなたたち全員の死です」
「そこがわからないのよ。確かにスタンピードも邪気を纏った魔物も厄介だけど言ってしまえばそれだけ。ここには王と全公爵家の令息、他にも高位の貴族令息はいるけど、裏を返してしまえばそれだけ実力者揃いでもあるわよね?あなたたちが指示されて動いているのは知っているけど随分と杜撰な作戦ね」
私の言葉にカイトは怒りを覚えたようで口元が引き攣った。しかし、反論は無いようで口は閉じたままだ。
「沈黙は是ととるわよ?あなたは実験と言ったけど直近10年くらいの王都で…いえエスペルト王国内でスタンピードが起きたのは数年前の1度のみ。そして、その時の結果は重症者は居たものの死者は0。成功とは言えない結果ね。あとは邪気の研究だけど、邪教信徒たちも失敗だったのではなくて?」
「っ…!なぜその名を知っている!?邪教信徒など表舞台に出てきていな…」
カイトは思わず声を荒げるが慌てて口を閉じた。
私が以前戦った孤児院長を筆頭とする邪教信徒たち。関連していると思ってカマをかけたが、大当たりだったようだ。
「それを潰したのにわたくしも絡んでいるからね…直接戦ったし話もしているの。あなたたちの研究って失敗だらけよね?邪気の研究も邪魔されて失敗、オーガの強化種も全滅して失敗。この全てにわたくしが絡んでいるなんて運命かしら?」
「オーガの報告は王国に上がっていないはずだ!なぜお前が知っている!?」
「この姿に見覚えがあればわかると思うけど?」
私はそう言いながら変装用の魔術具を取り出すと、変装用の魔術具に魔力を流して起動させた。髪色が金から茶に、目の色が碧眼から黒眼に変化する。
「お前はあの時の冒険者だと!?まさか俺たちに気づいて冒険者になりすまして調査に…」
「それは間違いね。わたくしは冒険者でもあるもの…」
私の言葉に怪訝な表情を浮かべたカイトは、プラチナ製のプレートを見ると口元が「Sランク…」と動いた。
「まぁいいわ。目的はあなたたちを全滅させた後にでも問います。次に話すときはエスペルト王国の王都に帰った後かしらね」
カイトへの尋問が終わると、私は皆の元へ戻りエスペルト王国に帰るための準備をする。
そもそもエスペルト王国へ帰るために、叡智の国アークソフィアを発つ今日の忙しい時に尋問を行ったのには理由があった。
通信を使ってニコラウスやドミニク、シリウスから調査状況は報告を受けていたが、昨日になって通じていた人の特定に成功したからになる。王城と学園でそれぞれ違う情報を違う人に聞かせて、相手の動きを追っていたところ怪しい人物を見つけることが出来た。
この段階では疑い止まりだったが、王国の影でもあるノーティア公爵家に調査を依頼して、証拠を掴んだところだ。
そんなわけで移動する前にカイトにも尋問をして、情報を得てみたといった感じだった。
さて、帰りの道は魔物と戦いになるものの、これと言った事件が起こることなく順調に進んでいく。
エスペルト王国の学園都市に戻ったのは、予定通り王立学園を出発した1月半後だった。
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