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第13章 2度目の学園生活
40 落ち着く相手
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「ん……」
「すみません。起こしてしまいましたか?」
静かな揺れに暗闇に沈んでいた意識が徐々に浮上していく。ゆっくりと瞼を開けると私を抱えるカトレアとテントの天蓋が視界に入った。
「えっと……」
状況が飲み込めずに目をパチパチと瞬きながら周りを見渡す。
「野営用のテントを設置したのでベッドに降ろそうとした所です」
「ありがとう……ございます。あれから、どれくらい経ちましたか?」
動けなかった私はカトレアに背負ってもらっていた。
普段であれば人に背負ってもらっている状況で眠ることはないが、消耗が激しかったことと信頼している彼女の背中ということで安心してしまったらしい。
「もうそろそろで日が変わる頃です。それよりも身体のほうは大丈夫ですか?」
「大丈夫です。大分よくなりました」
移動中もカトレアが治癒魔術をかけてくれたこともあり、今までの戦闘で負った怪我や無茶をした反動は完治しているようだった。
「……よかったです。わたくしの魔術では怪我を治すくらいしかできませんでしたから」
「カトレア先生のおかげですよ」
私は常に感知系や防御系の魔術をいくつか常駐させている。簡単にいえば気配だけでなく魔力も察知するようにしていて寝ているときに害されても反応したり最低限の致命傷を防ぐ目的のものだ。
それに加えて毒に冒されてからは身体を動かすためだけに魔力糸や身体強化などの魔術を行使し続けていたわけだ。
だが、カトレアやコルネリアスたちが来てくれたことで私が戦う必要がなくなった。無理して歩き続ける必要もなくなったために私が持てる全ての魔力の制御力を回復へとまわせたわけだ。さらには少しの時間とはいえ深い眠りにつくことができたことも大きく影響いているだろう。
「そういえば、アスカルテや他の皆はどうしてます?」
「夜営のテントは2人1組で分けていますので、それぞれがゆっくりと休んでいます。全員無事ですしアスカルテさんも体調は大分回復してきたみたいです」
「そうですか……本当によかった」
「……本当に貴女は人のことばかりですわね」
この数日間はアスカルテに相当無理をさせてしまっただろうなと考えているとカトレアが大きなため息を吐いた。
その表情には、どこか呆れた色が滲んでいて思わず首を傾げると、彼女は苦笑した様子だった。
「他者のことだけでなくて、もう少し自分自身のことを大切にしてほしいのだけれど……」
「あくまで私のためですよ。ただ大切な誰かを失いたくないだけですから。今も昔も……」
私の戦う理由はラティアーナの頃から、前世の記憶を思い出したあの頃から変わらない。1度死んで生まれ変わっても同じなのだから、もう一生変わることはないだろう。
「本当にラティアーナらしいわね」
「それが私だからね……いつから気付いていたの?」
言葉の端々から私の正体がバレているとは思っていた。いつ私がラティアーナだという考えに至ったのか分からないが、断言したと言うことは確信していたのだろう。
全力で隠そうといているわけではないが、自ら伝えようともしていない。どうして私がラティアーナの生まれ変わりだと気付いたのかとても不思議だった。
「これでもラティアーナとは10年以上の付き合いよ?王立学園の中ではAクラス担任としてティアのことをずっと見ていたもの。ティアの中にラティアーナらしさがあることは初めの頃から気づいていたわ」
「でも確信はなかった……そうでしょう?」
「そうね。ティアのことを見ていると、どこか懐かしい気持ちが浮かんでくるだけだった。でも、貴方が魔術を使ったり剣で戦ったりする姿は、まるでラティアーナのようだった。それに、あのローザリンデ様が気にしていたもの」
「確かにローザリンデには知られているけど……あのってどう言う意味?」
私の記憶の中ではローザリンデは王族として誇りを持ちながら堅実にことを進めるタイプだ。彼女は人を見る目があって信頼できると判断した相手には身分に関係なく接していた。
「ローザリンデ様は相手をよく見る人だけれど、頼りにする相手は相当限られるのよ。昔から知っているコルネリアス様は当然としても、出会って少ししか経っていない貴方を頼りにするなんてよっぽどのことでしょう?」
ローザリンデは今回の演習に対して非常事態が起きた場合は教師のカトレアだけでなく生徒のコルネリアスとアスカルテ、イザーク、レジーナ、カイラス、ティアを中心に対応に当たるように指示を出していたらしい。
理由としては1学年の生徒とはいえAクラスの第6席までは特に優秀だからというものだったそうだ。
「なるほどね。確かにローザリンデならいくら優秀な相手だとしても、貴族でない生徒には言わない気がするかな」
「それでも貴方がラティアーナの生まれ変わりだとは思えなかったけれど……貴方が持っていた2本の刀を見て確信したわ」
ラティアーナの頃も普段の授業では辰月や夜月を使わなかったが、演習以外の実戦では何度か使っていた。
当然、カトレアの目の前でも刀を使っているし、国王になってからは普段から腰にぶら下げていることも多くなった。
王立学園卒業後も会う機会が減ったとはいえ、カトレアが王城を訪れた時には一緒にお茶を飲む仲だった。辰月や夜月を見る機会は多かっただろう。
「そっか……」
「ま、細かい話は今度にしましょう。わたくしも話したいことはたくさんあるし、時間はいくらでもあるのだから。今はゆっくり休んで欲しいわ」
「うん。ありがとうね……おやすみ」
この日は久しぶりに夢を見た。
それはラティアーナだった頃の王立学園の夢だった。
「すみません。起こしてしまいましたか?」
静かな揺れに暗闇に沈んでいた意識が徐々に浮上していく。ゆっくりと瞼を開けると私を抱えるカトレアとテントの天蓋が視界に入った。
「えっと……」
状況が飲み込めずに目をパチパチと瞬きながら周りを見渡す。
「野営用のテントを設置したのでベッドに降ろそうとした所です」
「ありがとう……ございます。あれから、どれくらい経ちましたか?」
動けなかった私はカトレアに背負ってもらっていた。
普段であれば人に背負ってもらっている状況で眠ることはないが、消耗が激しかったことと信頼している彼女の背中ということで安心してしまったらしい。
「もうそろそろで日が変わる頃です。それよりも身体のほうは大丈夫ですか?」
「大丈夫です。大分よくなりました」
移動中もカトレアが治癒魔術をかけてくれたこともあり、今までの戦闘で負った怪我や無茶をした反動は完治しているようだった。
「……よかったです。わたくしの魔術では怪我を治すくらいしかできませんでしたから」
「カトレア先生のおかげですよ」
私は常に感知系や防御系の魔術をいくつか常駐させている。簡単にいえば気配だけでなく魔力も察知するようにしていて寝ているときに害されても反応したり最低限の致命傷を防ぐ目的のものだ。
それに加えて毒に冒されてからは身体を動かすためだけに魔力糸や身体強化などの魔術を行使し続けていたわけだ。
だが、カトレアやコルネリアスたちが来てくれたことで私が戦う必要がなくなった。無理して歩き続ける必要もなくなったために私が持てる全ての魔力の制御力を回復へとまわせたわけだ。さらには少しの時間とはいえ深い眠りにつくことができたことも大きく影響いているだろう。
「そういえば、アスカルテや他の皆はどうしてます?」
「夜営のテントは2人1組で分けていますので、それぞれがゆっくりと休んでいます。全員無事ですしアスカルテさんも体調は大分回復してきたみたいです」
「そうですか……本当によかった」
「……本当に貴女は人のことばかりですわね」
この数日間はアスカルテに相当無理をさせてしまっただろうなと考えているとカトレアが大きなため息を吐いた。
その表情には、どこか呆れた色が滲んでいて思わず首を傾げると、彼女は苦笑した様子だった。
「他者のことだけでなくて、もう少し自分自身のことを大切にしてほしいのだけれど……」
「あくまで私のためですよ。ただ大切な誰かを失いたくないだけですから。今も昔も……」
私の戦う理由はラティアーナの頃から、前世の記憶を思い出したあの頃から変わらない。1度死んで生まれ変わっても同じなのだから、もう一生変わることはないだろう。
「本当にラティアーナらしいわね」
「それが私だからね……いつから気付いていたの?」
言葉の端々から私の正体がバレているとは思っていた。いつ私がラティアーナだという考えに至ったのか分からないが、断言したと言うことは確信していたのだろう。
全力で隠そうといているわけではないが、自ら伝えようともしていない。どうして私がラティアーナの生まれ変わりだと気付いたのかとても不思議だった。
「これでもラティアーナとは10年以上の付き合いよ?王立学園の中ではAクラス担任としてティアのことをずっと見ていたもの。ティアの中にラティアーナらしさがあることは初めの頃から気づいていたわ」
「でも確信はなかった……そうでしょう?」
「そうね。ティアのことを見ていると、どこか懐かしい気持ちが浮かんでくるだけだった。でも、貴方が魔術を使ったり剣で戦ったりする姿は、まるでラティアーナのようだった。それに、あのローザリンデ様が気にしていたもの」
「確かにローザリンデには知られているけど……あのってどう言う意味?」
私の記憶の中ではローザリンデは王族として誇りを持ちながら堅実にことを進めるタイプだ。彼女は人を見る目があって信頼できると判断した相手には身分に関係なく接していた。
「ローザリンデ様は相手をよく見る人だけれど、頼りにする相手は相当限られるのよ。昔から知っているコルネリアス様は当然としても、出会って少ししか経っていない貴方を頼りにするなんてよっぽどのことでしょう?」
ローザリンデは今回の演習に対して非常事態が起きた場合は教師のカトレアだけでなく生徒のコルネリアスとアスカルテ、イザーク、レジーナ、カイラス、ティアを中心に対応に当たるように指示を出していたらしい。
理由としては1学年の生徒とはいえAクラスの第6席までは特に優秀だからというものだったそうだ。
「なるほどね。確かにローザリンデならいくら優秀な相手だとしても、貴族でない生徒には言わない気がするかな」
「それでも貴方がラティアーナの生まれ変わりだとは思えなかったけれど……貴方が持っていた2本の刀を見て確信したわ」
ラティアーナの頃も普段の授業では辰月や夜月を使わなかったが、演習以外の実戦では何度か使っていた。
当然、カトレアの目の前でも刀を使っているし、国王になってからは普段から腰にぶら下げていることも多くなった。
王立学園卒業後も会う機会が減ったとはいえ、カトレアが王城を訪れた時には一緒にお茶を飲む仲だった。辰月や夜月を見る機会は多かっただろう。
「そっか……」
「ま、細かい話は今度にしましょう。わたくしも話したいことはたくさんあるし、時間はいくらでもあるのだから。今はゆっくり休んで欲しいわ」
「うん。ありがとうね……おやすみ」
この日は久しぶりに夢を見た。
それはラティアーナだった頃の王立学園の夢だった。
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