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彼からの告白
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なんの前触れもなく、私の幼なじみ兼彼氏がこう言った。
「俺、占い師になるわ。」
「…ふはぁ?」
25歳にもなって、口から昼食のサンドイッチがこぼれ落ちる。
夏の暑さで出た汗とはまた違うの汗が額から流れるのが分かった。
(まさか昨日言ってた大事な話ってー)
昨日の夜、ソファでテレビを見ていると携帯から着信音の『カノン』が流れ始めた。
画面を見ると『石田拓也』の文字が映し出されている。
(あいつから電話なんて、珍しい。)
スワイプをし、もしもしと言うと、相手ももしもし?と返してきた。
心做しかいつもより声のトーンが低い。
「珍しいじゃん、あんたからかけてくるの。」
暑さで溶け落ちるアイスを口でキャッチする。
「実はさ、遥に大事な話があるんだ。」
「大事な話?」
「ああ。もしかしたら俺とお前、2人の人生に関わるかもしれないこと。」
「何それ?」
アイスを舐めるのを辞める。
「悪いけど、今は言えないんだ。明日会えないかな?」
久しぶりに聞いた彼の真剣な声に、急に不安になった。
「うん、大丈夫だよ。その、どこ集合にする?」
「場所はー
ネズミーランド。」
「…え?あ、うん。」
何故ネズミーランドなんだ。そう聞きたかったが
どうしても拓也の真剣な雰囲気に気圧されて、何も言えなかった。
「じゃあ、また明日。」
その日は謎の緊張により、あまり眠れなかった。
そして現在ー
純粋な目で拓也は真剣に何故なりたいのか、今後のプランなどを説明してくる。
話が予算に差し掛かったところで私は両手で彼を静止した。
「待って待って。あんたの占い師になりたい熱意は分かったけど、昨日言ってた私にも関係あるって言うのはどういうこと?」
「ん、あぁ。実は、遥には占い師の助手をやってもらいたいんだ。」
「はぁっ!?」
私の大声に、周りの人達が不思議そうにこちらを見た。
慌てて手で口を抑えたあと、軽く拓也を睨みつける。
「あんた、あんまり巫山戯るんじゃないわよ。突然何かと思えば、占い師になりたいだの、私に助手になれだの。こっちは昨日、拓也が意味深なことを言うせいで寝れなかったのよ!」
「別に巫山戯てないよ。本当に占い師になって、人助けをしたいんだ。」
「人助けにしても、もうちょい別の方法があったでしょう…..。」
頭を抱える。
「ていうか、占い師って言うけど、具体的にどんな方法で占うのよ。」
タロット、水晶玉、手相…様々な占い方があるのは知っているが、どれをやるつもりなのか。
あまりの馬鹿らしい話に、1周回って興味を持ち始める。
「確かに実践しないと、分かってくれないだろうな。よし、じゃあ遥のことを占うわ。」
「いいわよ、もしその占いが正確だったら助手にでもなんでもなってやろうじゃない。」
手を出して、と言う彼氏にパン粉を払ってから右手を差し出す。
(手相占いなんだ。)
路上で『手相』と書かれた看板を持って座る彼氏の未来を想像し、身震いをする。
(やっぱり、今から殴ってでも止めようか…)
そう考えていると、私の手相をまじまじと見ていた彼氏が「なるほど…」と呟いた。
「何が見えたのよ。」
聞くと、拓也は手から目を離し私を見る。
「まぁ遥の生涯の出来事。」
「へぇ、言ってみ?」
私の手のひらのシワをなぞりながら、拓也は説明を始める。
「まず君は1996年に千葉の長柄町で産まれた。」
「そうね。」
「3つ下の弟が1人いるけど、今でもあんまり仲が良くない。」
「うん、この前も喧嘩した。」
「勉強が苦手で、高校では『赤点の女王』と呼ばれていただろう。」
「顔は青ざめてるから『氷結の女王』っていう2つ名もあったわ。」
「で、大学になってから彼氏が出来た。」
「あんたのことね。って!幼なじみの拓也なら全部知ってることじゃん!どこが占いなのよ!」
思わず立ち上がる私を宥めて座らせてから、拓也は慌てたように言う。
「ごめんごめん。分かった。未来のことも見るから。」
「未来ねぇ。もし、また変なこと言ったら帰るからね。」
未来を占うなど、それこそ普通じゃ出来ないことだが、一応最後まで拓也の戯言に付き合うことにした。
「ここ見て。」
指されたシワのところを見る。確かに少し不思議な線がある。
「なにこれ?」
「これは、結婚線。」
「結婚線…。何年後の話?」
「今」
「…え?」
拓也を見るといつの間に用意されていたのか、彼の両手に小さな箱に入った銀色のリングが輝いて乗っていた。
「僕と結婚してくれませんか。」
思考が停止した。
拓也の目を見てあぁ冗談じゃないんだ、と分かった。
ヒュー!という周りのお客さんたちの声、セミたちの祝福を聞きながら、
「確かに占い通りね。」
と言って、指輪を受け取った。
ーーーー
「にしても、プロポーズのためとは言え随分と雑な嘘をつくじゃない。」
「え?何が?」
「何って、占い師になる話。」
「いや、それはなるつもりだけど???」
「本気なのかいっ!!」
「俺、占い師になるわ。」
「…ふはぁ?」
25歳にもなって、口から昼食のサンドイッチがこぼれ落ちる。
夏の暑さで出た汗とはまた違うの汗が額から流れるのが分かった。
(まさか昨日言ってた大事な話ってー)
昨日の夜、ソファでテレビを見ていると携帯から着信音の『カノン』が流れ始めた。
画面を見ると『石田拓也』の文字が映し出されている。
(あいつから電話なんて、珍しい。)
スワイプをし、もしもしと言うと、相手ももしもし?と返してきた。
心做しかいつもより声のトーンが低い。
「珍しいじゃん、あんたからかけてくるの。」
暑さで溶け落ちるアイスを口でキャッチする。
「実はさ、遥に大事な話があるんだ。」
「大事な話?」
「ああ。もしかしたら俺とお前、2人の人生に関わるかもしれないこと。」
「何それ?」
アイスを舐めるのを辞める。
「悪いけど、今は言えないんだ。明日会えないかな?」
久しぶりに聞いた彼の真剣な声に、急に不安になった。
「うん、大丈夫だよ。その、どこ集合にする?」
「場所はー
ネズミーランド。」
「…え?あ、うん。」
何故ネズミーランドなんだ。そう聞きたかったが
どうしても拓也の真剣な雰囲気に気圧されて、何も言えなかった。
「じゃあ、また明日。」
その日は謎の緊張により、あまり眠れなかった。
そして現在ー
純粋な目で拓也は真剣に何故なりたいのか、今後のプランなどを説明してくる。
話が予算に差し掛かったところで私は両手で彼を静止した。
「待って待って。あんたの占い師になりたい熱意は分かったけど、昨日言ってた私にも関係あるって言うのはどういうこと?」
「ん、あぁ。実は、遥には占い師の助手をやってもらいたいんだ。」
「はぁっ!?」
私の大声に、周りの人達が不思議そうにこちらを見た。
慌てて手で口を抑えたあと、軽く拓也を睨みつける。
「あんた、あんまり巫山戯るんじゃないわよ。突然何かと思えば、占い師になりたいだの、私に助手になれだの。こっちは昨日、拓也が意味深なことを言うせいで寝れなかったのよ!」
「別に巫山戯てないよ。本当に占い師になって、人助けをしたいんだ。」
「人助けにしても、もうちょい別の方法があったでしょう…..。」
頭を抱える。
「ていうか、占い師って言うけど、具体的にどんな方法で占うのよ。」
タロット、水晶玉、手相…様々な占い方があるのは知っているが、どれをやるつもりなのか。
あまりの馬鹿らしい話に、1周回って興味を持ち始める。
「確かに実践しないと、分かってくれないだろうな。よし、じゃあ遥のことを占うわ。」
「いいわよ、もしその占いが正確だったら助手にでもなんでもなってやろうじゃない。」
手を出して、と言う彼氏にパン粉を払ってから右手を差し出す。
(手相占いなんだ。)
路上で『手相』と書かれた看板を持って座る彼氏の未来を想像し、身震いをする。
(やっぱり、今から殴ってでも止めようか…)
そう考えていると、私の手相をまじまじと見ていた彼氏が「なるほど…」と呟いた。
「何が見えたのよ。」
聞くと、拓也は手から目を離し私を見る。
「まぁ遥の生涯の出来事。」
「へぇ、言ってみ?」
私の手のひらのシワをなぞりながら、拓也は説明を始める。
「まず君は1996年に千葉の長柄町で産まれた。」
「そうね。」
「3つ下の弟が1人いるけど、今でもあんまり仲が良くない。」
「うん、この前も喧嘩した。」
「勉強が苦手で、高校では『赤点の女王』と呼ばれていただろう。」
「顔は青ざめてるから『氷結の女王』っていう2つ名もあったわ。」
「で、大学になってから彼氏が出来た。」
「あんたのことね。って!幼なじみの拓也なら全部知ってることじゃん!どこが占いなのよ!」
思わず立ち上がる私を宥めて座らせてから、拓也は慌てたように言う。
「ごめんごめん。分かった。未来のことも見るから。」
「未来ねぇ。もし、また変なこと言ったら帰るからね。」
未来を占うなど、それこそ普通じゃ出来ないことだが、一応最後まで拓也の戯言に付き合うことにした。
「ここ見て。」
指されたシワのところを見る。確かに少し不思議な線がある。
「なにこれ?」
「これは、結婚線。」
「結婚線…。何年後の話?」
「今」
「…え?」
拓也を見るといつの間に用意されていたのか、彼の両手に小さな箱に入った銀色のリングが輝いて乗っていた。
「僕と結婚してくれませんか。」
思考が停止した。
拓也の目を見てあぁ冗談じゃないんだ、と分かった。
ヒュー!という周りのお客さんたちの声、セミたちの祝福を聞きながら、
「確かに占い通りね。」
と言って、指輪を受け取った。
ーーーー
「にしても、プロポーズのためとは言え随分と雑な嘘をつくじゃない。」
「え?何が?」
「何って、占い師になる話。」
「いや、それはなるつもりだけど???」
「本気なのかいっ!!」
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