生きるため「静かな夜」

一章「事の始まり」

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　その道中は息を切らせながら走った。この道には等間隔に街頭が設置してあり、華やかさがない真っ直ぐな道を申し訳ない程度に彩っている。
　そんな道を私は未来の過去を追憶しながら淡々と走る。
　これは、いつか聞いた話になるのだが、彼女の父は転職がきっかけで、酒に溺れるようになったらしい。
　飲み屋で飲んでから帰って来るようになり、より事態が悪化したと彼女から聞いたことがある。しかも、その影響で彼女の母は精神が参ってしまったらしく、現在、失踪している。誰がどう言ったとしても、この家庭は崩壊している。
　絶望的な家庭状況だと改めて認識する。こんな複雑な状態に私が首を突っ込んでいいかどうかは分からないが、彼女が私を求めているなら仕方ない。嫌でも行かなくてはならない。そもそも嫌なんて思った事は一度もないのだが。なんて事を考えながら足を動かす。
　未来の家は私の家から近いと言えば近いし遠いと言えば遠い微妙な距離。自転車で行こうと思うと距離が短くて何か物足りないし、逆に歩きで行こうと思うと逆に疲れてしまう。 でも、散歩にはいいのでは？　と思ったが、今の時期には寒すぎる。不向きだ。そのお陰で私以外に誰もいない。
　私はそんな事を考えながら未来の家に向かった。