生きるため「静かな夜」

鵜海 喨

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一章「事の始まり」

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「ブーブー」
 スマホのバイブレーションで目が覚める。私は勉強机の上に伏せて寝ていた。机の上を見るとそこには提出用のプリントがある。そのプリントの上には寝ている間に垂れたと思われる涎が滲んでいた。どうやら、勉強している間に寝てしまったのだろう。私はそれを服の袖で拭きながら、今も鳴っているスマホに手を伸ばす。
 スマホの画面を見ると未来(みく)からの電話だった。私は迷わず画面をスライドし、その電話にでる。
「うぅ、佐奈!」
 まず飛び込んできたのは彼女の泣き声だった。
「怖いよ。怖すぎるよ! それに、それに、うぅぅ」
 未来は落ちつきを失い、ヒステリックに叫んだ。
 その言葉で大体の状況を察する事ができた。
「いつものか」と心の声が漏れる。
 彼女は日常的に父から暴力を受けている。彼女の父は一度会った事がるが、穏やかそうな落ち着いた人だった。しかし、とんでもなく酒癖が悪く、正気を失い家族を殴っては、その怯える姿をケラケラ笑っていたらしい。
 そんな状態に晒された彼女は、その父が帰ってくる時間になると反射的に情緒が不安定になるようになってしまった。
「大丈夫、未来? 落ち着ける?」
「母さんがぁぁぁぁぁぁ!」
「ちょっと一回深呼吸しよ? で、それからなにか有ったか話してくれる?」
 電話越しに、深呼吸をする音がする。そのおかげで少し落ち着いたらしく、落ち着いて話し始めた。
「今日、学校から帰ったら、母さんが泣きながら何かを叫んでから家を飛び出して行ってそれから帰って来ないんだよぉ‼それに机の上に置き手紙があって「あの男とはも離婚した。もう嫌だ。自由に生きて」って書いてあるし、私はどうすればぁぁぁ。佐奈ぁ助けてぇ今夜は一緒にいてぇ」   
「私がそっちに行けって事?」
「うん…できるなら一緒に寝てほしい」
 明日は学校もある。だが、彼女と同じ学校に通っている事を考えればどうにかなるかもしれない。
「わかった。今から用意するから待っててね」
 と言って、電話を切った。そして、服などの泊まるための物を最低限集め、リュックに入れる。
 自室を出て階段を降り、玄関に向かう。
 母には「未来ちゃんの家に泊まってくる」と告げ、ドアを開ける。
 外の空気が肌を撫で、鳥肌を立たせた。それに口で呼吸すると喉が痛くなる。が、そんなことは気にせず、未来の家まで小走りで向かった。
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