生きるため「静かな夜」

鵜海 喨

文字の大きさ
1 / 3
エピローグ

1

しおりを挟む
 私達は笑っている。しかし、ここがどこでなんのためにいるのかわからない。
 何に対して笑っているのかもわからない。この世に対してなのか、私達が置かれた状況なのか。
 しかし私達は笑っている。
 神に恵まれなかった日々に絶望していた私達とは大違い。今は幸せそうに笑っている。
 この世の中は残酷で、待ち受ける壁は死を意味する。しかしそんな事はとうの昔に分かっている。この世に戦い、この世に敗れた。
 皆同じ。
 いずれ死ぬ。それは今なのか明日なのか数年後なのか、それの違いだけ。
 死とはあやふやな物だ。机上空論に過ぎない。私はそう思っている。無論、世界は違う。
 それでも、生きていると死ぬには確かに大きな違いがある。それがもし矛盾していたとしても、この世はそれを認めるだろう。そんな世界で生きている。
 大きな矛盾を抱えて生きる人間。それがどれだけ愚かなのか、私には到底理解できない。私も人間だからだ。
 偽善。空論。
 皆、大好きだ。
 有言、無実行。
 だが私達は違う。地面を握りしめ必死に生きている。どれだけ絶望に染まり、毒されたとしても、私達は諦めない。片足を折ったとしてもなお、前に進む。
 だが人は幸せが大好きだ。周りの人間すらもなぎ倒し幸せに向かって進む。それが人間。だが、一度、絶望に浸かり失望すると、たちまち動けなくなる。足すらも折っていないのに、動けなくなる。
 私達も、生きる事が幸せと言われれば、それまでだ。
 所詮は私達も偽善と空論の塊だ。
 面白いほどに。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

月弥総合病院

僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

✿ 私は彼のことが好きなのに、彼は私なんかよりずっと若くてきれいでスタイルの良い女が好きらしい 

設楽理沙
ライト文芸
累計ポイント110万ポイント超えました。皆さま、ありがとうございます。❀ 結婚後、2か月足らずで夫の心変わりを知ることに。 結婚前から他の女性と付き合っていたんだって。 それならそうと、ちゃんと話してくれていれば、結婚なんて しなかった。 呆れた私はすぐに家を出て自立の道を探すことにした。 それなのに、私と別れたくないなんて信じられない 世迷言を言ってくる夫。 だめだめ、信用できないからね~。 さようなら。 *******.✿..✿.******* ◇|日比野滉星《ひびのこうせい》32才   会社員 ◇ 日比野ひまり 32才 ◇ 石田唯    29才          滉星の同僚 ◇新堂冬也    25才 ひまりの転職先の先輩(鉄道会社) 2025.4.11 完結 25649字 

医者兄と病院脱出の妹(フリー台本)

ライト文芸
生まれて初めて大病を患い入院中の妹 退院が決まり、試しの外出と称して病院を抜け出し友達と脱走 行きたかったカフェへ それが、主治医の兄に見つかり、その後体調急変

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

Zinnia‘s Miracle 〜25年目の奇跡

弘生
現代文学
なんだか優しいお話が書きたくなって、連載始めました。 保護猫「ジン」が、時間と空間を超えて見守り語り続けた「柊家」の人々。 「ジン」が天に昇ってから何度も季節は巡り、やがて25年目に奇跡が起こる。けれど、これは奇跡というよりも、「ジン」へのご褒美かもしれない。

処理中です...