唐突だが、俺の彼女は死んだ。

鵜海 喨

文字の大きさ
2 / 3
第一章

2話

しおりを挟む
 夜が明けていた。
 東側カーテンの隙間から光が漏れ、ぼんやりと部屋を照らした。
 いつも二人で居たこの場所。部屋の中央、座卓の丸テーブルは、何もなかったと言うように、いつもの通りにお菓子が散らかっている。
 無機質な白い壁。温かみを感じないその布団。思い出のいっぱい入った本棚。描けない思いを背に、俺は余韻に触れる。

 窓の横、本棚は笑うように淡く光る。
 窓を見つめる壁の横、ベットは悲しむように掛け布団がクチャクチャに丸くなった。

「俺が何をしたって言うんだよ」

 俺は立ち上がりカーテン開けた。今日はこれ以上の無い快晴だ。しかし、俺なんかがこの空の下で脈打つなど、無礼にも程がある。

 立ち上がり欠伸と背伸びをした。

 部屋を出ようと、ドアノブに手を添える。
 ひんやり冷たいこれドアノブみたいな今日が始まる。

  俺は、家を出て公園に向かう。思い出深い自室では、気がおかしくなりそうになって。

 見た事のある道を俯き歩き、逃避したい気持ちを隠す。

 公園はそこまで遠くない。距離として三百メートル程。公園兼神社のそこにベンチがあった。

 相変わらずの晴天の下、ジャングルジムやブランコ、鉄棒、登り棒で遊ぶ子供が数人。その声はホール残響音みたいに頭に響く。

 なにか良い事はあるだろうか? 又はこれから、好きな人を作る事が出来るだろうか?

「ちょいと。お主も遊ばんか。体がなまるぞ」
 そんな声が、ボケっとした意識に聴こえた。

 知らない声だ。それに遊ぶだなんて、こんな気分では出来ない。

「恋人は、抗って必死に地に触れようとしておるのに、それでも彼氏、お主は何もせんのか?」
「俺だって、連れ戻せるならば、連れ戻したい」

 何故状況を知っているか分からない、人物にそう告げる。

「名は碧奈と言ったか。かわいい容姿だな。大切にされた髪に、一寸も汚れとらん瞳。健康的な体付き。惜しいな。吾としても」
「そうですよ。てか貴方は誰ですか?」

 声の持ち主に目をやる。
「吾か? 吾はこの、りょくえん神社の神主だが?」

 そう言うのは、巫女服を着ているが男か女か分からない人。

「そうですか。神主さん。俺は惜しい存在を無くした生きる気力の無い存在ですよ」
「そう、自分を下げるでない。彼女さんはまだ、この世から消えた訳じゃないのだぞ」

 そう言ったって。
「むぅ。信じておらぬな」
「俺、オカルト嫌いなんだよ。"死んだ"は"死んだ"でいいじゃん」
 俺は諦めるように空を見る。やはりそこに雲はない。

「一つ儀式を教えてやるのだ。これは彼女さんを悪霊化防止するのにも効果が有る。そしてまた会えるかもしれん」
「嘘だって。そんな事がある訳ない」

「アホを言うな、だってりょくえん様が言ってるのだ」

「神様何だが知らんが、死んだのは死んだんだ!! 変わりゃしない!!」
 自分の感情に物を言わせるのは、いつぶりだろうか? 視界が歪んで、涙が溢れる。

「誰も生き返すとは言っておらぬ。魂を具現化させるだけなのだ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

(完結)あぁ、それは私の彼ではありません!

青空一夏
恋愛
腹違いの妹はなんでも欲しがる『くれくれダコス』。幼い頃はリボンにぬいぐるみ、少し成長してからは本やドレス。 そして今、ダコスが欲しがっているのは私の彼だ。 「お姉様の彼をください!」  これはなんでも欲しがる妹がどうなったかというコメディー。ありがちな設定のサラッと読める軽いざまぁ。全年齢向け。  

幼馴染の許嫁

山見月あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。 彼は、私の許嫁だ。 ___あの日までは その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった 連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった 連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった 女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース 誰が見ても、愛らしいと思う子だった。 それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡 どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服 どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう 「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」 可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる 「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」 例のってことは、前から私のことを話していたのか。 それだけでも、ショックだった。 その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした 「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」 頭を殴られた感覚だった。 いや、それ以上だったかもしれない。 「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」 受け入れたくない。 けど、これが連の本心なんだ。 受け入れるしかない 一つだけ、わかったことがある 私は、連に 「許嫁、やめますっ」 選ばれなかったんだ… 八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。

母が病気で亡くなり父と継母と義姉に虐げられる。幼馴染の王子に溺愛され結婚相手に選ばれたら家族の態度が変わった。

佐藤 美奈
恋愛
最愛の母モニカかが病気で生涯を終える。娘の公爵令嬢アイシャは母との約束を守り、あたたかい思いやりの心を持つ子に育った。 そんな中、父ジェラールが再婚する。継母のバーバラは美しい顔をしていますが性格は悪く、娘のルージュも見た目は可愛いですが性格はひどいものでした。 バーバラと義姉は意地のわるそうな薄笑いを浮かべて、アイシャを虐げるようになる。肉親の父も助けてくれなくて実子のアイシャに冷たい視線を向け始める。 逆に継母の連れ子には甘い顔を見せて溺愛ぶりは常軌を逸していた。

姉の引き立て役の私は

ぴぴみ
恋愛
 アリアには完璧な姉がいる。姉は美人で頭も良くてみんなに好かれてる。 「どうしたら、お姉様のようになれるの?」 「ならなくていいのよ。あなたは、そのままでいいの」  姉は優しい。でもあるとき気づいて─

すべて『反射』してしまうようです

夜桜
恋愛
 辺境伯令嬢エイラは、子供のころはどん底の不幸だった。  不運が続く中、お見合いで伯爵と婚約を交わす。しかし、それは望まぬ婚約だった。婚約を破棄するも更に不幸が続く。  他の令嬢から嫌がらせを受けるようになっていた。  苦悩の中、幼馴染のブルースと再会。彼がいると幸せになれた。ブルースが近くにいると不思議な力『反射』を受動的に発動できたのだ。  反射さえあれば、どんな嫌な相手からの罵詈雑言も、事故や災難さえも『反射』する。決して不幸が訪れなかった。  そんなブルースを傍に置きたくてエイラは奔走する。

平手打ちされたので、婚約破棄宣言に拳でお答えしました

Megumi
恋愛
婚約破棄を告げられ、婚約者に平手打ちされた——その瞬間。 伯爵令嬢イヴの拳が炸裂した。 理不尽に耐える淑女の時代は、もう終わり。 これは“我慢しない令嬢”が、これまでの常識を覆す話。

悪夢がやっと覚めた

下菊みこと
恋愛
毎晩見る悪夢に、精神を本気で病んでしまって逃げることを選んだお嬢様のお話。 最後はハッピーエンド、ご都合主義のSS。 主人公がいわゆるドアマット系ヒロイン。とても可哀想。 主人公の周りは婚約者以外総じてゴミクズ。 小説家になろう様でも投稿しています。

処理中です...