唐突だが、俺の彼女は死んだ。

鵜海 喨

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第一章

2話

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 夜が明けていた。
 東側カーテンの隙間から光が漏れ、ぼんやりと部屋を照らした。
 いつも二人で居たこの場所。部屋の中央、座卓の丸テーブルは、何もなかったと言うように、いつもの通りにお菓子が散らかっている。
 無機質な白い壁。温かみを感じないその布団。思い出のいっぱい入った本棚。描けない思いを背に、俺は余韻に触れる。

 窓の横、本棚は笑うように淡く光る。
 窓を見つめる壁の横、ベットは悲しむように掛け布団がクチャクチャに丸くなった。

「俺が何をしたって言うんだよ」

 俺は立ち上がりカーテン開けた。今日はこれ以上の無い快晴だ。しかし、俺なんかがこの空の下で脈打つなど、無礼にも程がある。

 立ち上がり欠伸と背伸びをした。

 部屋を出ようと、ドアノブに手を添える。
 ひんやり冷たいこれドアノブみたいな今日が始まる。

  俺は、家を出て公園に向かう。思い出深い自室では、気がおかしくなりそうになって。

 見た事のある道を俯き歩き、逃避したい気持ちを隠す。

 公園はそこまで遠くない。距離として三百メートル程。公園兼神社のそこにベンチがあった。

 相変わらずの晴天の下、ジャングルジムやブランコ、鉄棒、登り棒で遊ぶ子供が数人。その声はホール残響音みたいに頭に響く。

 なにか良い事はあるだろうか? 又はこれから、好きな人を作る事が出来るだろうか?

「ちょいと。お主も遊ばんか。体がなまるぞ」
 そんな声が、ボケっとした意識に聴こえた。

 知らない声だ。それに遊ぶだなんて、こんな気分では出来ない。

「恋人は、抗って必死に地に触れようとしておるのに、それでも彼氏、お主は何もせんのか?」
「俺だって、連れ戻せるならば、連れ戻したい」

 何故状況を知っているか分からない、人物にそう告げる。

「名は碧奈と言ったか。かわいい容姿だな。大切にされた髪に、一寸も汚れとらん瞳。健康的な体付き。惜しいな。吾としても」
「そうですよ。てか貴方は誰ですか?」

 声の持ち主に目をやる。
「吾か? 吾はこの、りょくえん神社の神主だが?」

 そう言うのは、巫女服を着ているが男か女か分からない人。

「そうですか。神主さん。俺は惜しい存在を無くした生きる気力の無い存在ですよ」
「そう、自分を下げるでない。彼女さんはまだ、この世から消えた訳じゃないのだぞ」

 そう言ったって。
「むぅ。信じておらぬな」
「俺、オカルト嫌いなんだよ。"死んだ"は"死んだ"でいいじゃん」
 俺は諦めるように空を見る。やはりそこに雲はない。

「一つ儀式を教えてやるのだ。これは彼女さんを悪霊化防止するのにも効果が有る。そしてまた会えるかもしれん」
「嘘だって。そんな事がある訳ない」

「アホを言うな、だってりょくえん様が言ってるのだ」

「神様何だが知らんが、死んだのは死んだんだ!! 変わりゃしない!!」
 自分の感情に物を言わせるのは、いつぶりだろうか? 視界が歪んで、涙が溢れる。

「誰も生き返すとは言っておらぬ。魂を具現化させるだけなのだ」
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