そうだ神を殺そう。

鵜海 喨

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第一章「信徒」

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 神天地では、唯一神信者だろう肉片が転がり、その戦場が激化していることが伺える。一方で、不気味に笑う八咫烏はその大きな翼を広げ、絨毯爆撃を開始した。まるで、贈り物を楽しみにする子どものように。

 私は衛生兵。いや、植物学者だ。

「スキル「罌粟ケシ」三度使用」

 味方の居ない戦場にモルヒネをばらまく。敵などに無など惜しい。ただ、その苦楽と貪欲がふさわしい。敵に人徳何ぞ不要だ。奴らは、同じ顔をした別種。

「スキル「鳥兜トリカブト」を二度使用」

 
 でも、もうなんでもいいか。


 白豚が、何故泣いているのだろか。



 街に帰ればすぐ、稲荷や付喪が出迎える。相変わらず、そのモフモフした粉雪のような耳を立て小柄な体で私に駆け寄り、付喪は、恥ずかしながらニッコリと笑った。
「お帰りなさい! 待ってたよ。今回も沢山敵を倒したって、八咫烏さんから聞いた!」

 そう、獣の身体をぴょんぴょん跳ねさせ、胸に飛び込んでくる。
「お疲れ様です。」



 この功績すら、塵になる世界。私の目に何がうつろうとも、それは確かに、色褪せる赤色如く消え失せるだろう。結局は、アイコンなだけで、「何かを成し遂げた事柄」のアイコンやタイトルで、曲名を忘れた歌や、今使っている電子機器の発明者に似ている。たとえ有名なタイトルであろう「エジソン」ですら、白熱電球を発明したの「ジョゼフ・スワン」の顔を被った我々の思い違いだ。
 私の功績もいずれ忘れられる。繋がりが無くなるからだ。

 唯一神がいるならば、彼は私を完全なる裏切り者として、彼の信者に名を一生タイトルとして刻み続けることだろう。しかし、実際はそうはならない。ただのおとぎ話の悪役とした視点で記憶され、酷く嫌われる事もなく風化してしまう。
 神の間違いは、人間では間違いと認識できない。故に私は、そもそも唯一神等存在せず、神は人間と共に宿るものとして信じている。全知全能である神が作った世界は、きっと赤い色をした理想郷、共産主義が完璧に動作した世界だと私は考える。競争心など無に帰り、強い生存本能すら今の人間には必要ない。そんな世界が、功利主義な考えからしても、一番平和な世界であろうが、世界はそう回っていない。

 人間は明らかに、欠陥品だ。

 そんな欠陥品である人間様を気に入ってくれたとして信じ込んだユダヤも、完璧な神ならば、漏れなく全人類を愛し、そもそも愛すに値しない人間を作らないだろう。すでに存在する世界が神が一週間のみで制作した世界ならば、大嫌いだ。

 私はこの世界を、神一人で世界を作ったと信じる人間を殺し、これから世界を人間の手により神を宿し完璧な世界を築き上げる。世界の創造主など存在せず、ただ皆が生き迷惑を掛け合っていると考えたほうが、無論世界として美しい。

 完成品ではなく、世界は制作途中なのだ。

 だから、私は「そうだ、神を殺そう」と思ったのだ。
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