アイアンゴーレム

鵜海 喨

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始まり

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 この世界は、マットサイエンティストに支配されていた。日々の爆発報道は茶飯事になり、まさに世紀末といった言葉に相応しい世界に成り果てている。

 俺は、そんな危険と言わざる日常の道路を歩いていた。コンビニ帰りだ。少し重たいビニール袋を持ち歩いていた。
 サカサカという袋、青くも霞んだ空と、少し離れた工場地帯からのガチャガチャとした音。住宅街だというのに少し騒がしい。
 そんな相変わらずの事を思っていると、横の平屋の一軒家が光った。窓ガラスから抜け出る閃光。そんな比喩ではない言葉通りに輝く。同時に「危険じゃぁぁぁぁぁぁああああ」と騒ぐオッサンの声。

 いつもの事だと頭を振り、歩き続ける。ふと足が浮いていると感じた。踏みしめているはずの地面がまるで空を切るようなそんな。自分から俺がズレていく感覚。どんどん自分から抜けて、魂が飛び出したと言わんばかりに、自分を見下ろし天に昇っていく。地上の自分は何事もなかったように歩き続けている。
 声も出ないただ、天を仰げばある天門のような有ることに気づき、それは徐々に近づいていくる。そして門を潜れば真っ暗な宇宙のような場所だった。

 何も見えない。いやこれは目を瞑っているだけだ。そう気づいた時には既に地に足が着いていた。
 目を開ければそこは森だった。現代から忘れ去られた自然の数々に心を奪われるのと同時に自分の体が何かやら硬い物質で出来るている事に気づいた。

 ボール関節。そこにメカ的な仕組みはなくただボールが関節にハマっているだけのそんな構造だった。体は素直に動く、足もある。
「なんじゃこれぇぇぇぇぇえええ」
 そう叫んでしまった。
 金属製っぽい腕と足そして胴。まさにゲームに出てくるアイアンゴーレムのような身体だった。

「ここで何してるの? ゴーレムさん」
 そんな幼気のある声が聞こえた。まさに鈴を転がしたようなかわいらしい声。
 その声の持ち主を見るべく振り返ると、真っ白いワンピースを着た女の子が立っていた。耳がツンと立ち、俗に言うエルフの類だろうと見当がつく。
「気づいたらここに居て」
 女の子は「ふーん」といい私の身体をくまなく見て回った。

「ゴーレムさん役目は?」
 見ている最中、疑問のあるような目つきでそう言った。

「分からない」

 そんな事を言うと女の子は目を丸くした後に輝かせ、「じゃぁ私のゴーレムになって!」とはしゃいだ。

「あ、あぁ」

 わからない世界だ、この世界に馴染む為には一緒にいるのも悪くないだろう。

 てか待て、俺って異世界転生してるって事なのか? ゴーレムに転生って。なんだよ。生き物ですらないのか。

「やったぁ」

 私の心情を鏡で返したような笑顔を女の子は浮かべている。

 これから俺はどうなるのだろうか。
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