「夢」ショートショート集

鵜海 喨

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 今、僕はボーッとしている。なんとなく思いついた事すらも霧のように消えてしまう。
 僕の視界には一人の少女が映っていた。楽しそうに笑い、空を見上げている彼女の後ろ姿は、光に照らされ輪郭がぼやけて見える。翼が生えれば、天使にも、女神にもなれる。
 彼女は、窓越しに見える雲を写真に収めては、それを見てまた微笑んだ。
 彼女は心優しく、僕のような変わり者にも優しく接した。
 少年よ大志を抱け。そう誰かが言った。
 僕は彼女と付き合う、大志を抱いた。
 こんな僕とは釣り合わない、そんな思想も置き去りにして、僕は走った。しかし、大事な事だった。
「空の次で良いので僕と付き合ってください」
 勢いだった。
 すると彼女は、見たことのない顔をした。満面の笑みだ。
「もちろん。一番でも良いよ!」
 そんな返事が聞こえてくる。
 その日の帰り道。二人は手を繋いだ。
 噂はすぐに広がる。
 翌日から僕の所持品は次々に姿を消した。周りの視線が槍になって自分に刺さると錯覚するほどに冷たい目を向けられた。
 彼女はクラスの人気者。男女問わず、その美貌を独占したく彼女に集った。
 そんな、彼女と付き合ってしまった。
 亀のように遅れた思想が立ち止まった僕に追いついてきた。だが「釣り合わない」そう言って走り去って行った。
 皆、彼女の前では良い顔をする。しかし僕への態度はその対に当たる。
 日に日に僕は学校に行けなくなった。
 毎日、虐めの恐怖で体調を崩した。
 毎日、学校終わりに彼女が家に遊びにきた。
 徐々に彼女と接するのが怖くなった。また、物がなくなる。暴言を吐かれる。殴られる。蹴られる。無視される。そんな妄想が頭の中を埋めた。
 優しく接してくれる彼女は大好きだ。だがそれ以上に周りの目が怖い
「私、学校行きたくない」
 彼女が震えた声で言った。
 彼女もまた虐めの対象になっていた。別れろと言う一点縛りで彼女を追い込み、ついには実力行使にまで、発展していた。 
「残念だけど別れれば良いじゃん」
 僕はモノクロに見える彼女の姿に言い捨てた。彼女は泣き始めた。そして叫んだ。
「バカ! 私の事が好きなんでしょ? それなら、虐めなんて苦しくもない。貴方がこうやって元気がない方が、私は苦しい。それだけが心配なの。ずっと一緒にいたい、だから学校に行きたくない。貴方は元気でいてほしい。だって貴方のことを愛してるから!」
 彼女の気持ちは違った。僕なんかより、うんと強かった。
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