海はソラ

鵜海 喨

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ソラ

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 草原にジンベイザメが浮かぶ。長である大樹に寄りかかり、鼻歌を奏でる少女の肌は白い。季節は夏。海も空も青く輝く季節。風に吹かれれば形を変えるそれは儚く美しい。少女はそれを愛した。絵を描いては美しいと僕に見せた。
 少女は風のように舞う。場所は海と空が交わる遠い遠い場所。手の届かない場所。
「好きだ。付き合ってくれ」
 事の発端はこの言葉だ。
 僕が勇気を振り絞って発した告白。
 クラスの端っこで何時も海と空を見ていた少女の横顔が好きで、心を寄せていた。
 彼女は快くそれを受け入れた。両思いだったのだ。
 それから、海に遊びに行く日々が続いた。夏が終わる頃には二人とも肌を黒く焦がし笑い合っていた。
 冬は逆にどちらかの家に遊びに行った。その時の少女は僕の手を離そうとはしなかった。
 ボードゲームやトランプで遊び、黒かった肌の色は薄く白くなっていく。
 そしてまた、夏がやってきて肌を焼く、そんなサイクルが数回、繰り返した。
 今回はそうはいかなかった。
 もう八月も終わろうとしているのにも関わらず、少女の肌は白いままだった。
 そうだ。今年はまだ海で一緒に遊んでいない。
 冬と一緒で家の中でしか遊んでいない。彼女自身の都合で行けなくなったらしい。僕はそれが何なのか知れなかった。しかし長袖や長ズボンを履いていた事に興味を示す事は出来た。だが示さなかった僕は愚かだ。
 今、彼女はぷかぷか浮いている。手の届かない場所で、海で浮いていた。
 彼女は自身が愛した場所に包まれて散った。
 僕にできた事はいくらでもあったはずだ。相談に乗ることもできた。
 僕の恋は海と空によって奪われた。そんな青を僕は赤く塗りつぶした。
 自分がやっている事は理解している。しかし、悲しむのは彼女だけだ。
 そして僕はジンベイザメに化け彼女についていく。でなければ、青は赤い僕を拒絶し、追い出す。
 彼女の事が好きだった。その一心で彼女の後を追った。
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