僕の戦記

鵜海 喨

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09

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「もう何もないんだよ」
 そう幼い少女は、笑ってみせた。
 
 荒野の戦場、そんな場所に砂嵐を纏った輸送車と名乗ったトラックが走っている。僕らは全く守られていない荷台に乗っていた。
 時として正午。その作戦は実行された。敵のキャンプ地を落とす。ただそれだけの作戦。

 少女はP7M13を握り、荒野に産み落とされた。しかし受け止めるのは、タオルでも何でもない返血や砂埃で汚れた迷彩服。
 産声かと思わせ、響く銃声。人は彼女の事を「鼬」と呼ぶ。その由来の軌跡をなぞるように、役目を全うする。遊ぶように素早い動きと、獲物を狩る眼光。それが彼女の牙だった。

 敵のキャンプ地は、多少の木々が生い茂る群生地だった。無論、戦車や火器は迷彩の布で覆われ擬態している。居住空間も蟻のように地下に掘られ見つける事は出来ない。
 僕と彼女の小隊での殲滅作戦。
 彼女はその小さい体を活かし、巣穴に入り込む。

89
 後に続いた僕に対し、そうハンドサインを発した。このシグナルは弾薬庫が近くにあるという事。つまり火器は使えない。

 彼女は当たり前かのように変哲のない部屋へ入っていく。
 その数瞬後に聞こえる男の断末魔と液体の落ちる音。油の臭い、鉄の臭い。
 血は油のように、手に纏わりつき滑りと粘度で手元を狂わせる。そしてナイフを握り直す度に光り方を変えた。
29二人居る
「死んでも煩わしい」

 同時にそんな小声も聴こえ、また二つ断末魔歓迎歌が響いた。

09終わり

 彼女が無線に対し口を開いた。
「Pass」

 輸送車でまた揺られる日々、面白くもない。ただ慣れたはずの銃の反動と人間を刺す感覚が、ループ再生されるだけ。
「家族が死んだ」
 そうエンジンの音に紛れ彼女が言った。

「なら何故、殺す? 煩わしい。もう私の敵ではない。存在なんてどうでも良い。ただ目障りなだけ。私に目的を与え、そして奪う敵は大嫌い。私は何故。戦うの? 私は...」

 彼女の身体が大きく跳ねた。
 同時に蜜が頭部から溢れ出す。

「敵襲」
 
 倒れ込む彼女に寄り添うように僕も伏せる。

 彼女の顔は笑っていた。絶望と開放を意味する。そんな顔。しかし蜜もまた、例に漏れず光を反射していた。

 彼女が生きていれば、一緒に帰りたかった。
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