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しおりを挟む────さて。
とりあえず聞きたいことも、準備することも沢山あるが、まずはうちひしがれているお嬢様の機嫌を上げてやらねばと心の腕まくりをしたサーシャだった。
それからの彼女の動きは早かった。
ミシェルに新しいお湯を替えに行かせ、アリアンナの着替えを手伝う。
お昼に食べ損ねたサンドウィッチを中心にアリアンナの好きなお茶受けを用意していくと、ミシェルが帰って来たのでアリアンナのお気に入りのお茶を淹れる。
まずは自分が座り、戸惑うミシェルを座らせ、そうして全部の用意が終わった時点で、長椅子に寝そべり背を向けたままのアリアンナに声を掛ける。
返事はないが聞こえてはいるだろう。
だったら、先に始めてしまえばこちらに来るだろうと見越して、普段なら絶対にしないお茶を飲み始める。
ミシェルはどうしていいか分からずに、おろおろとサーシャとアリアンナを交互に見ている。
「……もう!もう少し呼んでくれてもいいのに」
「お返事がなかったのでいらないのかと」
「……」
クッションを抱えたまま拗ねモードで近づいてくると着座する。
それを見計らい、ミシェルが新しくアリアンナの為にお茶を淹れる。
「で?ただのご挨拶ではなかったようですけど?」
「……」
答えたくないのか、お茶にも手を付けずにそこはかとなくやさぐれた態度で、アリアンナはティーカップを見つめている。
しかしサーシャはアリアンナを見ることなく、お茶を飲みながら先を促す。
「とにかく。話して頂けないことには何も出来ませんが?」
しれっと言い放つ。
「……ただの見習いではなかったの」
「はい?」
聞こえてはいたが、敢えて聞き返してみた。
「だから!ただの行儀見習いではなくてデルヴォーク殿下の花嫁見習いだったのよ!」
「きゃ──────っ!」
(……あ~ぁ。私が我慢して飲み込んだ悲鳴を、叫んじゃったわ……)
サーシャは突然の悲鳴に目が点になるアリアンナはさておき、さっき聞いたばかりの事実を改めて教えられ気を引き締める。
「ミ……ミシェル?」
「おめでとうございます!おめでとうございます!!!アリアンナ様付きになって、初日なのに驚くことばかりで正直、続けられるか心配になったんですけど!」
((えっ?!そんなこと思ってたの??))
立場は違えど、ミシェルと接した時間は同じアリアンナとサーシャは同時に同じことを思う。
「本当ですよ~、深窓の薔薇様のお噂は聞けど、実際に会われた方って誰もいらっしゃらなくて!要するに謎!謎のご令嬢だったんですよ、アリアンナ様。なのに、アリアンナ様って実際にお会いしてからも型破りもいいとこじゃないですか?!」
((…………こらこら))
「それなのに、デルヴォーク殿下のお妃様の座をゲットなさるなんて!尊敬します!大好きです!アリアンナ様に一生付いていきます!!」
「ちょっ、ちょーっと待って!お妃様の座は得てません!」
「へっ?」
「そうよ。ミシェル、ちょっと落ち着いて」
きらきらの輝く瞳に興奮状態のミシェルを二人で止める。
「どういうことですか~?」
「そんな一気に残念な顔をされても困るわ。お妃決定ではなくあくまで、花嫁候補。だいたい、私以外にもお二人いらっしゃるし。決定されるまで、半年も掛かるのよ!その間、私が選ばれるようなヘマをすると思って?」
「「?!」」
サーシャの耳に聞き捨てならない事が聞こえたような気がした。
「そうよ!私はここは魔術の為に来たのに!……そうだわ!自分を失い掛けてましたわ!今まで見てきた他の方々の数々の失敗を優雅に取り入れて、名に恥じぬよう立派に花嫁候補を落選してみせるわ!」
「えぇ~~?本気ですか?」
(……魔女会議サバト……)
ミシェルではないが、今アリアンナが決意したことには賛同しかねる。
しかねるどころか、反対…では生温い。
なおも目の前で繰り広げられてる光景は何かしら?
やっと、うちの大事なお嬢様が日の目を見るって時に!誰がこんな風にお育てしたのか!!
(…この私だ!!)
雷に打たれたような衝撃で猛省すれば、サーシャは今一度育て直すまでと、怒らず、焦らず、かつ迅速にと心に誓う。
サーシャは最大級の笑顔をアリアンナとミシェルに向けながら優しい声音で
「アンナ様。とにかく謁見の間の扉を開けたところから、一度全てお話頂きたく思います」
と、こめかみの青筋を隠さず言った。
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