アンインストール❀⡱─人間と大狼の娘

ラス❀⡱

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 序章

 回り始める運命の歯車❀⡱

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 嘘でしょう?教室につくと、麗々たちはその光景に愕然としていた。
『学校をアンインストール』
赤いチョークで黒板に書かれていると思った。でも違った。その赤色の何かは、チョークではなく人の血。麗々の鼻がそう告げている。でも、奈那と美羽はわかっていない。
「何これ・・・いたずら?」
奈那が黒板に触ろうとしたのを、麗々は慌てて止めた。もし、何らかの事件で奈那の指紋が黒板についていたら、疑われてしまう。
「むやみに触らないほうがいいよ。」
奈那はプクーと頬を膨らませる。どうやら、いつもの調子(天然なとこ)が戻ってきたようだ。
「ねえ、あれ・・・」
美羽が麗々の袖を引っ張った。奈那もつられて麗々の視線を辿った。
 美羽が興味を持ったのは、優の席だった。優の席には花束が置かれている。フェイクにしては行き過ぎているから、やっぱり狼に襲われたっていうのは本当なんだろうな。
「優・・・。本当だったんだ。」
奈那も半ば少し疑っていたようだ。また重たい空気が三人を取り巻く。にしても、いくら田舎でも狼なんて出ないでしょう?なんだか、嫌な予感がする。
「おはよう三人組さーん!」
麗々と美羽同様、クラスラインに入っていない浅井が来た。
「ん?なにその花。」
浅井は席にたたたーと走り近寄ると、つんつんと花束を突っついた。奈那が浅井に近ずいた。
「そっか、浅井も知らないんだね。優、死んだって。」
浅井はポカンとしたあと、ふっと吹き出した。
「バカじゃねーの、お前ら。優が死ぬわけないじゃん。ふざけにしては下手すぎ。」
麗々は浅井をじっと見つめた。本当に浅井は知らないのか。それとも、知っているけど信じたくないだけなのか。
「わたし、ふざけてない。」
奈那が睨んだ。さすがに浅井もふざけるのをやめて、大人しく胡座をかいて座った。
「俺、連絡網来てないけど。」
麗々たちとまったく同じ反応だ。
 てことは、単純にわたしと美羽が連絡に気づかなかったってわけじゃないんだ。
「クラスライン。」
奈那は短く言った。
「はあ?クラスライン?そんなの、お前らも持ってないじゃんか。」
浅井が麗々と美羽を交互に見る。
「奈那は嘘つかないもん。」
美羽は驚くほど静かな声で返答とした。
 美羽、きっとショックだったんだろうな。優とはあまり接点のないわたしでさえも、衝撃的だもん。美羽は小学校から同じだし、きっと胸が張り裂けそうになっているに決まってる。
「美羽・・・」
奈那はうつむいた。
「無意識に嘘をついちまうことだってあるんじゃねーのか?」
浅井は憎たらしそうに言った。浅井の顔面を蹴ってやりたい。奈那や美羽がどんな思いなのか知らないの?
「浅井。」
麗々は浅井と決着をつけようと思った。このまま好き勝手に自分の考えを突き通させない。奈那と美羽が深く傷ついてしまうかもしれないから。
 浅井は麗々の低い声に驚いたようだ。すると、また教室のドアが開いた。
「おはよう、みんな。」
奈那が微笑んだ。ほとんどのクラスメイトがドアの前にいる。みんな花束を抱えていた。
「おはよう。」
相川が口を開いた。メガネを少し上に上げると、はっきり美羽を見つめる。麗々は美羽をかばおうとして、前へ進み出た。
「ごめん、美羽。優を守れなくて。」
美羽はかあっと頬を赤らめた。麗々がグッと相川の襟を掴んだ。
「馬鹿な真似するな、相川。」
 あれ、わたしなんてことを言っているの?知らないうちに、相川に向かって変な口を聞いているのだが。他のクラスメイトも驚いて麗々を見ている。
「ば、馬鹿?」
相川は目を白黒させた。さすがにやりすぎたと思い、後へひこうとするが、体が言うことを聞いてくれない。
「・・・もう、余計なことを言わないで。」
 結局それだけ言って、麗々はなんとか襟を離した。相川は何度か麗々をチラチラみて、襟を正しくした。
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