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#12
しおりを挟む目が覚めると夕刻だった。一体どこから何処までが夢だったのだろう。そう、おかしな夢を見た。
――あんな事……。
アダムは思い出すと恥ずかしさと恐怖が蘇る。
部屋を見渡しながら、起き上がると一糸まとわぬ姿の自分に、現実を叩きつけられた。
呆然と自分の身体を見つめていると、扉を叩く音が聞え、咄嗟に掛け布へ体を埋めた。
ビビアンが「アダム様」と言いながら静かに近付いて来るのを聞き、顔を上げた。
「どうなさいましたか?」
彼女の姿を確認すると何故か涙が溢れて来た。
「ううん…、ビビアンを見て安心しただけ……」
「そうですか…、シ……、シド様から言付けがあります」
「うん……」
「明日はちゃんと祭壇に来るように、と」
それを聞き、会いたくないと思ってしまう。
アダムはダメと言ったのに、言う事を聞いてくれないシドに不信感を抱ていた。
心配そうに顔を覗き込むビビアンに頷き、身を固くしたまま「少し横になってもいい?」と尋ねれば。
「はい、それは構いません。では、お食事は簡単な物を、こちらにお持ちしましょう」
「うん、ありがとう」
ビビアンが部屋から出て行くのを見届け「はあ……」と大きく溜息を吐き、体を起こし衣類を手に取った。
アダムは手早く衣類を身に纏い、気怠い体を横にして瞼を閉じたが、その途端シドの顔が浮かぶ、どうして彼の顔が浮かんでくるのか分からない、けれど思わず「嫌い…」と言葉を溢した。
恥ずかしい出来事を、忘れたいと思えば思うほど、鮮明に蘇って来て、胸を触られて唇が触れただけで、あんなに高揚するとは思わなかった。
自分で触っても何とも思わないのに不思議で、スっと衣類を開けて自分の胸を見た。
その瞬間、自分に跨っていたシドの姿が蘇って来る。
アダムの性器を食べようとするなんて……、とアダムは全身がカっと熱くなり羞恥に襲われ、また涙が零れた。
「やだ、嫌いだ」
嫌いの言葉を吐き出す度に、何故かツキっと胸が痛み、息苦しくなる。自分の真意が分からなくて、そのままポスっと枕に顔を埋めた――――。
夜になっても、アダムは一向に眠れずにいた。
目を閉じると、シドにされた行為が浮かんでくるし、強烈な印象が脳裏に焼き付き、どうしようもなく体が疼いて来る。こんな事ビビアンに相談も出来ないし、する気もなかった。
アダムはスっと起き上がるとバルコニーへ向い、火照った身体を夜風に晒せば、薔薇の香りと冷たい空気に少しだけ癒される。そもそもシドは何故あんなことをしたのだろう? と思う。
アダムの少ない知識で、どれだけ考えても答えは導き出されることは無く、自分は男なのに、どれだけ発情しても女性とは違うのだから、あんなことをされる理由が分からない。
けれど、獣人なら当たり前の行為なのかも知れない……、そう考えれば少しだけ気分が落ち着いて来た。
「どうした?」
「ひっ…!」
急に耳元に聞えた声に身震いする。甘い声の主が自分を背後から抱きしめると、首筋に唇が触れる。
「こんな場所に出て、匂いを撒き散らすとは……、襲ってくれと言っているようなものだ」
「や、だ、違う! 匂いなんかしない!」
アダムは芳香は出ていないと、頭を振り否定した。
「まったく、あんなことくらいで気を失うとはな……」
「あ、ぁ、僕は嫌って言ったのに……!」
「何が嫌なんだ? 身体はちゃんと喜んでいたと思うが?」
さっきまで、あんなに嫌いだと思っていた相手に、鼓動は激しくドキドキと動き出す。
耳にかかる彼の息と声にクラクラしてしまう。嫌いなはずなのに……、と自分の真意が分からないでいると、不意に無重力に襲われて思わずシドに縋りついた。
先程まで自分が座っていた椅子へ彼が腰かけ、ストンと向かい合うように抱き抱えられた。
「なんだ? 言いたいことがあるなら言ったらどうだ?」
「僕は男です」
「それで?」
「だから……」
言いたい事ならたくさんある。
ただ、彼を見ると言葉が出てこないだけで、聞きたいことも、訴えたいこともあるのに、呼吸を整えるので精一杯だった。
何度か見た事のあるクスクス笑う顔が、何時にも増して意地悪な顔に見えた。
「どうして匂いを出している?」
「そんなの……、出てないです!」
右手を取られ茜色に染まった甲を見ながら、ジっとこちらの様子を伺う。今すぐ逃げ出したいほど恥ずかしかった。
アダムはシドに昼間されたことを思い出して芳香が出ているなんて、口が裂けても言いたくないし、悟られたくなかった。
彼が切なそうにこちらを見ると、大きな手をアダムの頬にあて、スリスリと頬を撫でる手がピタリと止まる。
「この国が嫌いか?」
「わかりません……、僕が体験したのは牢屋と、処刑台と、この薔薇の宮殿だけです」
「それもそうだな、本来なら、お前は生涯ここで暮らすことになるが……」
その先の言葉は彼は言わなかった。
悲しそう、そんな表情にアダムには見え、ふと、ジークが言っていたことを思い出した。
「僕は、処刑されてしまうのでしょう?」
「誰がそんなことを?」
「ジークさんが言ってました。王様は何も出来ないからって……」
「……そうか、王様は随分と甘く見られてるようだ」
「その前にここから出たいです……」
そう、早くここから出ないといけない、それは神父様が心配しているからとか、処刑されるからとかでは無く、ここに居ると自分の心が囚われて行く気がした。
シドはアダムの訴えを聞くと。
「ん……」
深く官能的な口づけは、アダムの冷めかかった熱を、着火させるのに十分な効力を持っていた。
分厚い舌が口腔に入り込み、喉奥へと到達すれば、甘い痺れは息苦しくなる。こくり、こくりと彼の唾液を飲みながら、つい、アダムはもじもじと腰が動いてしまう。
それを悟った彼が強く抱き寄せ、夜だと言うのに、シドは眩しそうに目を細めると。
「処刑などさせないから安心しろ」
「本当ですか?」
彼は優しく頷いた。
「約束通り家まで送り届けてやる」
「はい」
「俺はもう帰る……、早く休むといい」
「はい、分かりました……」
アダムが頷くと額に彼の唇が触れ、部屋へ入るよう促される、最後に「おやすみなさい」と声をかけようと振り返ったが、既にシドの姿は無かった。
王族は皆、羽が生えているのだろうか、音もなく現れ、消えて行ったシドの残像が残るバルコニーをアダムは暫く眺めた――――。
翌日、行きたくない気持ちを堪えながら祭壇へと向う、アプローチを抜けて祭壇の建物が見えてくると何かが横切った。
「何用ですか!?」
ビビアンが強い口調で横切った人物に口を開くと、真っ黒な髪に人顔を持つ獣人が、人懐っこい笑顔を見せ挨拶をした。
「おお、貴方が聖天様~、はじめまして」
「……? はじめまして」
「我が主より、貴方様へ贈り物です」
ポンと小さな箱と豪華な封筒をアダムの前に差し出した。
アダムがチラリと黒髪の少年に目をやると、品定めするような視線を受ける、どうしてそんな目で見ているのか不思議だが、人間が珍しいのかも知れないと勝手に解釈した。
ビビアンが溜息を吐きながら、コソっと耳打ちをしジークの召し使いだと説明する。
「あれ~、聖天様、お手付き済みで? ソレはうちの主が痕つけたのですか?」
「ルイ! 言葉を選びなさい」
「はいはい」
「用が済んだのなら早く出て行きなさい。薔薇の宮殿は王族以外立ち入り禁止です」
ルイと呼ばれた少年は、ぴょこっと耳を動かし、ビビアンに笑顔を作りながら「それでは失礼します」と揶揄うような口調で挨拶を済ませると、何処かへ消えて行った。
「主が主なら、使いの者も使いですね、まったく…」
「ねえ、ビビアン。お手付きって何?」
その質問にビビアンの顔が赤くなるのを見て、不思議に思い顔を傾けた。
「えっと…、それは私の口からは申し上げられません」
「……? そう」
更に頬を染めるビビアンを見て、それは恥ずかしいことなのだと理解した。
ただ、これ以上説明を求めてもビビアンが困ると思い、アダムは口を閉じ、歩き出そうとしたが、少年から貰った品をどうすべきか悩んだ。
――何が入ってるんだろう?
開けてみようかな? と箱を見つめたが、ビビアンが祈りが終わるまで預かると手を差し出したので、アダムはそれに頷き、小さな箱と手紙を渡した。
「私に権限があれば、その辺に捨てるのですが……」
残念だと言わんばかりに、顔を顰める彼女を見ながら、本当にジークの事が嫌いなのだと伝わってくる。
その表情にアダムは思わず吹き出した。
「どうかされましたか?」
「ううん、どうしてジークさんのこと、そんなに嫌いなのかなって思っただけ」
「生理的に受け付けないのです」
ふぅ、とビビアンが小さな溜息を溢し、祭壇の扉近くまで来ると、いつものように腰を折りビビアンは一歩下がる。
「それでは行ってらっしゃいませ」
アダムはコクと頷くと、少し緊張しながら建物内へと足を入れた。
シンと静まり返っており人の気配はしない。
いつもシドは何処から来るのだろう? 本当に裏口でもあるのだろうか? 少しだけ建物内を見て周るが、表の扉以外に扉らしき物は見当たらなかった。
アダムは諦めて祭壇前に跪き祈りを始めると、カタっと聞える音で、シドが来たのだと気が付く。
そして祈り終え振り返ると、いつもと変わらない彼がアダムを見つめていた。
「こちらに」
吸い寄せられるように彼の元へ向かう。
昨日の今日なので、やっぱり気恥ずかしいし、側に居ると動悸も激しくなるので、本当は嫌だったが、シドが隣の席を空けポンポンと叩くのを見て、そこに座れと言う合図だと思い隣に座った。
頭を撫でられ、つむじに唇が押し当てられる。
些細な彼の行動にドキドキしてしまい、このままでは、また芳香が出てしまうと思い、急いで話かけた。
「いつも、何処から来るのでしょうか?」
「知りたいか?」
「はい」
当然の疑問だった、正面の扉から来るならアダムでも分かる。いつも小さな物音がするだけで、何処から現れているのか謎に包まれていた。
「そんなことより、さきほどジークの使いが来ていただろう?」
「……どうして知ってるのですか?」
「仕事場から、ここはよく見える」
つまり、アダムがここに来る時は、シドに見られていることが判明した。
だからいつもタイミング良く現れるのだと知る、そう言えば以前、この国の政治に関する仕事だと彼は言ってたが、仕事内容に関しては聞いても、理解不能だと思い、それ以上の質問は控えた。
「それで、ジークの使いは何しに来たんだ?」
「箱と手紙を頂きました」
「中身は確認してないのか?」
「はい、宮殿に戻ってから確認します」
シドは長椅子から大きく背を逸らせると。
「……どうせ、ろくな物ではないな」
「あの、シドさんとジークさんは仲が悪いのでしょうか?」
「いや、悪いと言うほどでもない」
少しだけ難しい顔を見せながら、シドは立ち上がり、ポンとアダムの頭に手を置く。
「確認してみるか」
「え?」
「ジークからの贈り物を見てみるとしよう」
スタスタと建物から出て行くシドの後を付いて行くと、外で待機していたビビアンがギョッとした顔を見せる、彼女はサっと頭を深く下げ、何かを言いかけたが、それをシドが制した。
「挨拶はいい」
「はぃ、……」
「先ほどジークの使いが持ってきた物をこちらに」
ビビアンが震える手で、箱と手紙をアダムに渡した。
シドに「開けてみろ」と言われ箱を開けてみれば、中には大きな黄金色の宝石が入っていた。
どう見ても髪飾りに見える、それを見たシドから舌打ちが聞えた。
「手紙は、何と書いてある?」
「招待状……? でしょうか?」
アダムは自分では読めない為、招待状をシドへ手渡した。
ジークが開く催し物の招待状で、本日夕刻から行われると記載されてあり、宝石を身に着けて欲しいと書いた小さなメモも入っていたようだ。
「行く必要はない」
「でも、ジークさんは王様の弟なんですよね? 行かないと罰せられるのでは……?」
「俺から断りを入れておく、だいたい宮殿から聖天を出す許可は俺しか出せない」
シドが厳しい目でアダムを見下ろした。
反論出来るような眼差しでは無く、初めて彼の態度を威圧的だと感じる、その証拠にビビアンが、ずっと頭を下げたまま震えていた。
冷えた声でシドが彼女に向けて口を開くと。
「ジークには、昨日宮殿への出入りを禁止したはずだが?」
ビビアンは頭を下げたまま「申し訳ありません」と謝罪をするが、震える彼女が可哀想に見え、思わずアダムは口を出してしまった。
「ビビアンは悪くないと思います」
「誰の味方をしている? ジークか?」
「違います、そうじゃなくて、あの少年は突然現れたので……っ」
アダムはシドに腕を掴まれ睨まれる。
少し間が空き何かを決断した彼が、ビビアンへと目を向け口を開いた。
「今日は俺の部屋へ連れて行く」
「はい、畏まりました」
「もしジークの使いが来たら、そう伝えておけ」
ずっと頭を下げたままのビビアンを見て変だと感じた。
ジークに対して嫌ってはいるが、彼女はそれなりに敬意を表示している、だけど、それとは桁違いの敬意の態度をシドに見せる彼女に違和感を感じた。
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