それは先生に理解できない

南方まいこ

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08.ソコも男前

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 がっついてくる感じに若さを感じる。 

 ――かわいいな……。

 今日、再確認のために兎野に好きかどうか聞いたが、好きじゃないと言われ、先程は少し腹が立ったが、そんな事どうでもよくなった。
 頬を軽く染めた兎野が何度も唇を重ねて来る。交わる舌の動きがねっとりと情熱的で、気を持っていかれそうだった。

「ちょっ、兎野、待って欲しい、あのさ、俺は準備が」
「俺がしたいダメ?」
「嫌だ、さすがに、恥ずかしい」
「さっき、ちょっと勉強したから任せて欲しい」

 自分のシャツに兎野の手が伸び、ボタンが外された。
 その間も唇は何度も重なり、ズボンのベルトに手が伸びると、カチャリと音が鳴った。その音が興奮材料に変わる。

「先生、勃ってる」
「ん、しょうがないだろ」
「よかった、ちゃんと反応してる」

 兎野が安心した様子を見せながら、自身も服に手をかけ潔く全裸になる。否応なしに目に飛び込んで来る兎野の性器を目にし、思わずソコも男前なのか……、と突っ込みたくなった。
 しっかりと男を感じさせる形と大きさに、思わず喉を鳴らした。
 兎野の形の良いソレは既に天を向いており、葵も何故かほっとする。何だかんだ言って、男の体に反応するかどうか心配だったこともあり、もし勃たなかったら、どうしよう? と、それなりに不安に思っていた。
 それにしても、発育の良い見事な体だと見惚れる。

「兎野、ホントに一緒に入るのか……?」
「入るよ」

 嬉しそうに微笑む兎野が、てきぱきと葵の服を脱がしていくと、ほ…っと色っぽい顔を浮かべ、ポスっと葵の肩に頭が乗っかる。

「嬉しい死にそう…」
「……」

 ――な、なんだ、この甘い雰囲気…俺が死ねる!

 葵の体を見ても、萎えること無く勃ちあがったままの性器が腹にあたり、熱い吐息が首筋にかかる。まだシャワーに入る前だと言うのに、下半身の熱にうなされ倒れそうになる。
 二人で風呂に入ると、兎野が葵の身体を洗い始めた。ゆっくりと足先から徐々に、上へと這い上がって来る手に、出したくも無い喘ぎが出る。

「センセ、かわいいね、声、まだ身体洗ってるだけなのに……」
「だって、なんか、触り方が……」
「うん?」
「……っぅ……」

 本当にはじめてなんだろうな?と疑いたくなるが、きっと兎野は葵に嘘は付かないと思った。
 忙しくなく動く手と、真剣な眼差しに犯され、時折、悪戯に触れられる性器への刺激で苦しいくらいだった。
 泡だらけになった身体を湯で流すと、兎野は先程買って来た潤滑剤を手に取った。自分で広げようと色々用意した道具もあるが、兎野に任せてしまって良さそうか? と考えていると…。

「センセ、ここ座って…」
「ん…」
「腕首に回して……」

 言われるまま兎野に跨り首に手を回すと、彼の視線が葵の下半身へ移動した。

「俺、ずっと先生のペニスを想像してた……、毛なんか生えてないって思ってたけど、少しある」

 ツっと性器の周りにある淡い茂みに触れながら、嬉しそうな顔を見せると可愛いと褒める。
 じっと見つめながらペニスの周りをさわさわ触り出す。確かに体毛は少ない方だが、そんなところを褒められると、どう対応していいか分からない。

「そんな、とこ、褒めるな…」
「だって、つるつる…」

 そう言って先端部分を指でなぞられる。

「毛無くても違和感なさそう」
「俺が違和感ある……、も、恥ずかしいから、進めて……」

 手の平に取り出された潤滑剤が粘り気のある音を出し、兎野の手が後孔へと手が伸びると、ぞわぞわと背筋に寒気に似た物が走り出す。

「ひっぅ……」
「痛い?」
「痛くはないけど」
「うん、ちょっと待っててね、この辺りに…前立腺があるって書いてあったから探す…」

 くちゅっと水音がすると、出入りする指がクニクニと器用に弄りはじめる。違和感はあるが痛みはない、従わせたいなんて告白をされて、ずっと不安だったが、思いのほか優しい手つきと声にクラクラしてくる。
 
「あ、…ぁ…、…変」
「ここ?」

 頭を縦に振り呼吸を止めた。
 ピリっと走る電気のような快感が足先まで伝達する。胸元の飾りを口に含みながら、執拗に指が敏感な部分をじりじりと擦り上げる。

「ね、きもちいい? 俺を見てイって欲しい……」
「…ん、…んっ…」

 そんな恥ずかしいこと出来るわけない。頭を横に振りギュっと目を瞑るが、胸の尖った飾りをきゅっとかじられ、その刺激で思わず目を見開いた。

「ちゃんと見て」

 甘えるように言われ、上目使いで強請られ、身体を弄られる音が響き渡り、恥ずかしさが倍増していく。
 一体どういう仕組みになっているのかと不思議に思うほど気持ちがいい。自分ばかりなのは申し訳ないのに、与えられる快楽が強烈で、それを必死で堪えるしか術がなかった。
 熱っぽい兎野の目がずっと剥がれない、目を逸らせば胸の飾りを甘噛みされ、引き戻される。

「あ、っなん、か、……恥ずかしい」
「ん…」

 反響するバスルームに卑猥な粘着力音が響き、目の前の男は蕩けそうな顔で覗き込んで来る。そんな顔を見ていると、苦しくて切ない気持ちが込み上げ、泣き声のような喘ぎがほろほろと零れた。
 兎野が潤滑剤に手を伸ばし、さらに体内に液が追加されると圧迫感が倍増した。指の本数が増えたと感じる。ゆっくりと動かす指が、たまに凄く敏感な部分を掠めると、身体が跳ね上がっていく。

「ん、あ……っ!」
「痛くない?」
「…ん…」

 短く返事を返すのが精一杯で、言葉は出なかった。性器も肌にあたり擦れて気持ちがいい、柔らかな唇でちゅっと吸われる胸元。何度も譫言うわごとのように可愛いと、褒めて来る目の前の男に見つめられ、壊れそうなほど心臓も煩い。心も体もそこら中が快楽にどろどろに溺れて行く…。

「ごめ…、も……、く、るっ…」

 今まで感じたことない快楽が襲ってくる。

「ん、…、んっ……あぁ――……」

 せり上がる熱に堪え切れず、ぎゅっと兎野へ抱き付き、腰を擦り付けるように揺らすと兎野の胸の辺りに飛沫が飛んだ。荒く呼吸を繰り返し、はっと我に返った。

「あ、ごめん、俺ばっかり……」
「ん、なんか、先生の見てたら…俺もイった見たい」

 若さだろうか、触れること無く逝ったと言う彼の腹を見れば、確かに白濁した液が零れていた。
 くるくると目を丸くし見上げる顔が、愛しく思えて兎野の顎を取ると唇を重ねた。こんなに可愛い動物を前にして、無反応ではいられなかった。 

「えっと、兎野」
「そうた…、颯太だよ、弓弦さん」
「うん…」

 ――な、なんかハズカシイ!

 何だ、この雰囲気、快楽に酔っている時はまだマシだが、ふと冷静になると羞恥が一気に襲ってくる。
 セックスってこんなに恥ずかしい物なのか? 実際にはまだ前戯しかしてないが、ここから先こんなことを繰り返すのかと思うと、精神力が持つか不安になってくる。
 頬が熱いどころか全身がふわふわして、目の前が真っ白になっていく、そう思った次の瞬間、頭に激痛が走った――――。

「……? あれ……」
「大丈夫?」
「どうなった?」
「のぼせた見たいだよ」
「あー…そっか…」

 風呂であんなことをしたからだろう。そこまで考えて、とんでもなく恥ずかしい気持ちになった。あの光景を思い出しクラクラと脳が揺れる。

「今、何時だ?」
「23時だね、お水持って来る」

 体を起こすと、何故か頭が痛い。ズキズキする。おでこも後頭部も痛い。きっと何処かに頭をぶつけたのだろう。
 兎野が水を持ってくると、ペタとベッドに顔を埋め、目だけをこちらに向けた。

「悪かったな、そろそろ帰った方が良い」
「泊りたい、弓弦さん、続きしたい…」
「そ、…そうだな。…ちょっとお互い勉強不足のようだから、ちゃんと勉強してからにしようか」

 いったい自分は何を言ってるんだろうか、勉強してからしようと、生徒にセックスの約束をしている馬鹿な教師がここにいます。と訴えられないだろうか? と急に自分の立場を思い出す。
 
「勉強? 俺はしたから大丈夫、出来るだけ早くしたい」

 ――ぐいぐい来るな……。

「気が変わる前に食べさせて欲しい」
「あー…、うん、気は変わらないと思うが、やっぱり高校卒業してからにしようか」
「なぜ?」
「その方が俺の気が楽だから」

 今回は、ちょっと衝動的だったこともあり、やはり準備不足はお互いよくないと思った。
 
「卒業してからなんて駄目だ。弓弦さんの気が変わるかもしれない」
「変わらないって!」
「なんで言い切れるんだよ?」
「そりゃ、好きだか…っ」

 思わず口を押えた。
 平凡な日常が崩れ、目の前の変態な男に思考を惑わされ、こんな恥ずかしい思いをさせられて、まさか嫉妬に駆られて誘ったとか、本当にどうしたんだ。
 葵はベッドに俯せになり顔を伏せた。

「俺を好きになった?」
「……そうだよ」
「本当に?」
「何で、お前みたいな馬鹿な男を……」
「俺、学年トップなんだけど」
「知ってるよ!」

 本当にどうかしてる…――――。

  
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